10:00 〜 12:00
[PG06] 向社会的行為者に対する評価の発達変化
キーワード:向社会的行動, 評価, 発達
問題と目的
向社会的行動の行為者に対する評価は発達によって変化する。先行研究では,「以前自分に向社会的に振る舞ってくれた人に対して向社会的に振る舞った」互恵的な向社会的行為者(以下,互恵行為者)と「以前自分に向社会的に振る舞ってくれなかった人に対して向社会的に振る舞った」一方向の向社会的行為者(以下,一方向行為者)に対する評価の発達変化を検討し,子どもは前者を,大人は後者をより高くすることが示されている (Baldwin & Baldwin, 1970; Suls et al., 1981)。しかし,このような変化が生じるメカニズムについては十分に解明されていない。そこで本研究では,向社会的行為者に対する評価の発達変化の様相を詳細に捉えることを目的とする。
方 法
研究参加者 幼稚園年長児35名,小学2年生23名,小学5年生24名,大学生28名が研究に参加した。
手続き 個別形式で行われた。A4版の図版を用い,互恵行為者と一方向行為者についての物語を提示した。各物語の内容を確認する質問をした上で,各行為者に対する特性評価を絶対評価と相対評価で求めた。両行為者の提示順序についてはカウンターバランスをとった。
質問項目 (1) 絶対評価:各行為者に対する絶対評価を,「やさしい子,いじわるな子,どちらともいえない」という選択枝で尋ね,「やさしい」または「いじわる」と回答した場合には,その程度を「ちょっと,中くらい,すごく」の3段階で尋ねた。(2) 相対評価:互恵行為者と一方向行為者のどちらの方がやさしいかを尋ねた。
結果と考察
互恵行為者と一方向行為者に対する絶対評価を7段階に得点化した。絶対評価得点について,学年 (4)×条件 (2: 互恵行為者・一方向行為者) の分散分析を行ったところ,学年の主効果 (F (3, 106) = 4.76, p < .01) と学年×条件の交互作用 (F (3, 106) = 11.27, p < .001) が有意であり,条件の主効果が有意傾向であった (F (1, 106) = 3.58, p = .06)。条件の各水準における学年の単純主効果を検討したところ,互恵行為者に対する評価では有意であり (F (3, 106) = 20.47, p < .001),一方向行為者に対する評価では有意傾向であった (F (3, 106) = 2.49, p = .06)。各学年における互恵行為者と一方向行為者に対する絶対評価得点の大小関係をTable 1に,相対評価の選択結果をTable 2に示した。
本研究の結果,幼稚園児と2年生に比べ,5年生と大学生では一方向行為者を高く評価する傾向が示された。この結果は先行研究と一致するものである。しかし2年生では絶対評価より相対評価において一方向行為者を高く評価する傾向がみられた。このことは,子どもが同時に複数の認知様式を保持していることを表すものであり,発達の多層性が示唆された。
向社会的行動の行為者に対する評価は発達によって変化する。先行研究では,「以前自分に向社会的に振る舞ってくれた人に対して向社会的に振る舞った」互恵的な向社会的行為者(以下,互恵行為者)と「以前自分に向社会的に振る舞ってくれなかった人に対して向社会的に振る舞った」一方向の向社会的行為者(以下,一方向行為者)に対する評価の発達変化を検討し,子どもは前者を,大人は後者をより高くすることが示されている (Baldwin & Baldwin, 1970; Suls et al., 1981)。しかし,このような変化が生じるメカニズムについては十分に解明されていない。そこで本研究では,向社会的行為者に対する評価の発達変化の様相を詳細に捉えることを目的とする。
方 法
研究参加者 幼稚園年長児35名,小学2年生23名,小学5年生24名,大学生28名が研究に参加した。
手続き 個別形式で行われた。A4版の図版を用い,互恵行為者と一方向行為者についての物語を提示した。各物語の内容を確認する質問をした上で,各行為者に対する特性評価を絶対評価と相対評価で求めた。両行為者の提示順序についてはカウンターバランスをとった。
質問項目 (1) 絶対評価:各行為者に対する絶対評価を,「やさしい子,いじわるな子,どちらともいえない」という選択枝で尋ね,「やさしい」または「いじわる」と回答した場合には,その程度を「ちょっと,中くらい,すごく」の3段階で尋ねた。(2) 相対評価:互恵行為者と一方向行為者のどちらの方がやさしいかを尋ねた。
結果と考察
互恵行為者と一方向行為者に対する絶対評価を7段階に得点化した。絶対評価得点について,学年 (4)×条件 (2: 互恵行為者・一方向行為者) の分散分析を行ったところ,学年の主効果 (F (3, 106) = 4.76, p < .01) と学年×条件の交互作用 (F (3, 106) = 11.27, p < .001) が有意であり,条件の主効果が有意傾向であった (F (1, 106) = 3.58, p = .06)。条件の各水準における学年の単純主効果を検討したところ,互恵行為者に対する評価では有意であり (F (3, 106) = 20.47, p < .001),一方向行為者に対する評価では有意傾向であった (F (3, 106) = 2.49, p = .06)。各学年における互恵行為者と一方向行為者に対する絶対評価得点の大小関係をTable 1に,相対評価の選択結果をTable 2に示した。
本研究の結果,幼稚園児と2年生に比べ,5年生と大学生では一方向行為者を高く評価する傾向が示された。この結果は先行研究と一致するものである。しかし2年生では絶対評価より相対評価において一方向行為者を高く評価する傾向がみられた。このことは,子どもが同時に複数の認知様式を保持していることを表すものであり,発達の多層性が示唆された。