10:00 〜 12:00
[PG20] 達成目標促進と授業実践型相互教授の効果(4)
グループ学習における思考促進への効果
キーワード:授業実践型相互教授, 達成目標, 思考促進
問題と目的
児童が学習場面においてどのような目標志向性をもつかは,課題の達成に重要な影響をもつ。町・橘・中谷(2016)は,授業実践型相互教授(Reciprocal Teaching in the Classroom; 以下RTC)により,算数グループ学習への学業達成度と発話内容への効果を示した。本研究では,RTCにおける達成目標促進が,グループ学習への肯定的認知と学習観に及ぼす効果について検討を行う。
方 法
対象と時期 都内公立小学校6年生A学級40名(男子23名,女子17名),B学級39名(男子21名,女子18名)の,計79名(男子44名,女子35名)の児童を対象に,2015年9月に実施した。A学級を熟達目標促進型RTCを行う熟達目標群,B学級を遂行目標促進型RTCを行う遂行目標群とした。
授業デザイン 6年生の算数「拡大図と縮図」(8時間扱い)の単元で,4回RTC介入を行う。グループ学習は,約15分間の集団検討場面で取り入れ,説明役と質問役の役割を交替することとした。
達成目標介入 熟達目標群では,誤答モデルを示し,「〇〇さんが次に間違えないようにするためのアドバイスを考えよう」とした。遂行目標群では,「早く正確に答を求めよう」とした。
グループ学習への肯定的認知尺度 「グループ学習への関与・理解(以下,関与・理解)因子」と「発話による理解・思考促進(以下,思考促進)因子」の2因子(各6項目)からなる尺度(町, 2015)を使用した。前者はグループ学習への関与や理解深化,後者は自分が友人の思考を促進させたことに対する,肯定的な認知を表す。5件法で,単元開始前・後・遅延の3回,調査を実施し,下位尺度の各項目の合計値を,それぞれ「関与・理解得点」,「思考促進得点」として採用した。
学習観尺度 児童が算数の問題を解く時に,「答えを求める過程」と「結果」のどちらを重視しているかを測定するために,過程重視・結果重視の2因子からなる学習観尺度を採用した。5件法で,単元開始前・後・遅延の3回調査を実施し,下位尺度の各3項目の合計値を,それぞれ「過程重視得点」,「結果重視得点」として採用した。
結果と考察
グループ学習への肯定的認知の関与・理解得点と思考促進得点のα係数は,それぞれ= .86, = .84であり,十分な内的整合性が得られた。学習観については,過程重視得点と結果重視得点のα係数は,それぞれ= .45, = .84であり,前者については,十分な内的整合性が得られないことから分析から除外した。関与・理解得点と思考促進得点,結果重視得点を従属変数に,群(熟達・遂行)×測定時期(単元開始前・単元終了後・遅延)の2要因分散分析を行った。
その結果,「熟達目標群では,単元終了後や遅延の熟達目標群の思考促進得点が,遂行目標群よりも高く,単元終了後の遂行目標群の結果重視得点が,熟達目標群よりも高かった(Table 1)。これらのことは,両群の異なる達成目標の促進が,グループ学習に対する肯定的認知や児童の学習観に影響を与えたことを示唆している。
児童が学習場面においてどのような目標志向性をもつかは,課題の達成に重要な影響をもつ。町・橘・中谷(2016)は,授業実践型相互教授(Reciprocal Teaching in the Classroom; 以下RTC)により,算数グループ学習への学業達成度と発話内容への効果を示した。本研究では,RTCにおける達成目標促進が,グループ学習への肯定的認知と学習観に及ぼす効果について検討を行う。
方 法
対象と時期 都内公立小学校6年生A学級40名(男子23名,女子17名),B学級39名(男子21名,女子18名)の,計79名(男子44名,女子35名)の児童を対象に,2015年9月に実施した。A学級を熟達目標促進型RTCを行う熟達目標群,B学級を遂行目標促進型RTCを行う遂行目標群とした。
授業デザイン 6年生の算数「拡大図と縮図」(8時間扱い)の単元で,4回RTC介入を行う。グループ学習は,約15分間の集団検討場面で取り入れ,説明役と質問役の役割を交替することとした。
達成目標介入 熟達目標群では,誤答モデルを示し,「〇〇さんが次に間違えないようにするためのアドバイスを考えよう」とした。遂行目標群では,「早く正確に答を求めよう」とした。
グループ学習への肯定的認知尺度 「グループ学習への関与・理解(以下,関与・理解)因子」と「発話による理解・思考促進(以下,思考促進)因子」の2因子(各6項目)からなる尺度(町, 2015)を使用した。前者はグループ学習への関与や理解深化,後者は自分が友人の思考を促進させたことに対する,肯定的な認知を表す。5件法で,単元開始前・後・遅延の3回,調査を実施し,下位尺度の各項目の合計値を,それぞれ「関与・理解得点」,「思考促進得点」として採用した。
学習観尺度 児童が算数の問題を解く時に,「答えを求める過程」と「結果」のどちらを重視しているかを測定するために,過程重視・結果重視の2因子からなる学習観尺度を採用した。5件法で,単元開始前・後・遅延の3回調査を実施し,下位尺度の各3項目の合計値を,それぞれ「過程重視得点」,「結果重視得点」として採用した。
結果と考察
グループ学習への肯定的認知の関与・理解得点と思考促進得点のα係数は,それぞれ= .86, = .84であり,十分な内的整合性が得られた。学習観については,過程重視得点と結果重視得点のα係数は,それぞれ= .45, = .84であり,前者については,十分な内的整合性が得られないことから分析から除外した。関与・理解得点と思考促進得点,結果重視得点を従属変数に,群(熟達・遂行)×測定時期(単元開始前・単元終了後・遅延)の2要因分散分析を行った。
その結果,「熟達目標群では,単元終了後や遅延の熟達目標群の思考促進得点が,遂行目標群よりも高く,単元終了後の遂行目標群の結果重視得点が,熟達目標群よりも高かった(Table 1)。これらのことは,両群の異なる達成目標の促進が,グループ学習に対する肯定的認知や児童の学習観に影響を与えたことを示唆している。