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[PG48] 社会化エージェントの多層的影響に関する研究(22)
Mover-stayer潜在移行分析によるエージェント資源と向社会性の関連の検討
Keywords:社会化, エージェント, 向社会性
Harris (1995) は,子どもの社会化が,親,友人,地域住民,教師といった特定のエージェントとの関係など,文脈固有で行われると指摘する。吉澤他(2016)は,各エージェントが効果的な社会化機能を有することを資源と捉えて全体の包括的資源を仮定し,その資源の様態が,向社会性の指標である社会的スキル,共感性,自己制御に影響することを示した。本研究では,3波の縦断調査により,包括的資源の様態における変化(移行群・維持群)が向社会性の変化に与える影響を検討する。
方 法
対象者 A県内の平均的な特徴を持つ1公立中学校の生徒285名(全9学級)に対して,1~3年生時(2014~2016年すべて1月; Time 1~3)に調査を行った。養育者を含め有効回答が得られた176名(男子86名,女子90名; 父8名,母165名,不明3名)のデータを分析した。
中学生の測定内容 全測定時点で,東海林他(2012)の社会的スキル尺度から,他者理解スキルと自己他者モニタリングスキル(MS)を用いた(9項目3件法)。長谷川他(2009)の共感性尺度から,視点取得と共感的関心を用いた(16項目5件法)。原田他(2008)の自己主張と自己抑制からなる社会的自己制御尺度を用いた(29項目5件法)。エージェント指標として,丹野(2008)の友人関係機能尺度の改訂版(12項目5件法),三隅・矢守(1989)のP機能とM機能からなる教師リーダーシップ尺度を測定した(22項目5件法)。
養育者の測定内容(エージェント指標) Time 1の測定時点に,中道・中澤(2003)の応答性と統制からなる養育態度尺度を,小学校低学年時の回顧法用に改訂し用いた(各5項目4件法)。安香他(1990)の望ましい行動(良)と望ましくない行動(悪)を測定するしつけ尺度を,同時点の回顧法用に改訂し用いた(各13項目5件法)。地域住民の集合的有能感(CE)を非公式社会的統制と社会的凝集性・信頼により測定する吉澤他(2009)の尺度を用いた(各6項目4件法)。地域住民が地域の子どもに関与する活動に従事する程度として,地域活動参加度と子ども関与度を測定した(10項目5件法)。
結果と考察
社会化エージェント指標の様態に基づくTime 1の潜在クラスを把握するため,Mplus ver. 7.3により潜在プロフィル分析を実施した結果,5クラスが抽出された(BLRT 6対7クラスの変化が非有意であったが人数が1となるクラスが存在, エントロピー = .804)。Time 3を5クラス(Figure 1参照)に設定し,3時点すべてで同じクラスに属する維持群に制約を置いたMover-stayer潜在移行分析(Langeheine & van de Pol, 2002)を実施した。
Time 3のクラス要因とこのクラスへの移行要因(移行・維持群)を独立変数,向社会性指標のTime 1から3への変化量を従属変数とした分散分析を実施した。自己他者MSにはクラス要因の主効果(p = .028)があり,クラス1よりも2の得点が有意に高かった。共感的関心や自己主張には移行要因の主効果(順にp = .017, .005)があり,いずれも維持群より移行群の得点が有意に高かった。視点取得では交互作用が有意(p = .017)であり,クラス4において維持群より移行群,移行群においてクラス1より5の得点が有意に高かった(Figure 1)。本結果は,包括的なエージェント資源の変化が向社会性の変化と共変することを支持する知見である。今後は,潜在クラスやクラス間移行の規定要因の検討が求められる。
方 法
対象者 A県内の平均的な特徴を持つ1公立中学校の生徒285名(全9学級)に対して,1~3年生時(2014~2016年すべて1月; Time 1~3)に調査を行った。養育者を含め有効回答が得られた176名(男子86名,女子90名; 父8名,母165名,不明3名)のデータを分析した。
中学生の測定内容 全測定時点で,東海林他(2012)の社会的スキル尺度から,他者理解スキルと自己他者モニタリングスキル(MS)を用いた(9項目3件法)。長谷川他(2009)の共感性尺度から,視点取得と共感的関心を用いた(16項目5件法)。原田他(2008)の自己主張と自己抑制からなる社会的自己制御尺度を用いた(29項目5件法)。エージェント指標として,丹野(2008)の友人関係機能尺度の改訂版(12項目5件法),三隅・矢守(1989)のP機能とM機能からなる教師リーダーシップ尺度を測定した(22項目5件法)。
養育者の測定内容(エージェント指標) Time 1の測定時点に,中道・中澤(2003)の応答性と統制からなる養育態度尺度を,小学校低学年時の回顧法用に改訂し用いた(各5項目4件法)。安香他(1990)の望ましい行動(良)と望ましくない行動(悪)を測定するしつけ尺度を,同時点の回顧法用に改訂し用いた(各13項目5件法)。地域住民の集合的有能感(CE)を非公式社会的統制と社会的凝集性・信頼により測定する吉澤他(2009)の尺度を用いた(各6項目4件法)。地域住民が地域の子どもに関与する活動に従事する程度として,地域活動参加度と子ども関与度を測定した(10項目5件法)。
結果と考察
社会化エージェント指標の様態に基づくTime 1の潜在クラスを把握するため,Mplus ver. 7.3により潜在プロフィル分析を実施した結果,5クラスが抽出された(BLRT 6対7クラスの変化が非有意であったが人数が1となるクラスが存在, エントロピー = .804)。Time 3を5クラス(Figure 1参照)に設定し,3時点すべてで同じクラスに属する維持群に制約を置いたMover-stayer潜在移行分析(Langeheine & van de Pol, 2002)を実施した。
Time 3のクラス要因とこのクラスへの移行要因(移行・維持群)を独立変数,向社会性指標のTime 1から3への変化量を従属変数とした分散分析を実施した。自己他者MSにはクラス要因の主効果(p = .028)があり,クラス1よりも2の得点が有意に高かった。共感的関心や自己主張には移行要因の主効果(順にp = .017, .005)があり,いずれも維持群より移行群の得点が有意に高かった。視点取得では交互作用が有意(p = .017)であり,クラス4において維持群より移行群,移行群においてクラス1より5の得点が有意に高かった(Figure 1)。本結果は,包括的なエージェント資源の変化が向社会性の変化と共変することを支持する知見である。今後は,潜在クラスやクラス間移行の規定要因の検討が求められる。