10:00 〜 12:00
[PG69] 学級集団と児童理解のためのアセスメント方法の試案
キーワード:文章完成法テスト, 学級の様相, 学級・個人アセスメント
問題と目的
学級経営は,担任教師にとって重要な責務のひとつである。学級は集団と個人の側面をもち,担任教師はその両面から支援していく必要がある。学級の様相を知り,児童の今をとらえることは,自己の学級経営における確認や改善において必要かつ重要な役割を果たす。
現在,学級の様相や児童の態様などを調べる主流な手法は質問紙調査である。質問紙調査は,児童が簡単に回答できるメリットがあるが,実施や分析に時間がかかり,知りたいときにすぐ結果を得ることができない。入力するだけで結果を分析してくれる調査システムや諸機関で研究開発されたソフトなども存在する。しかし,質問紙であるため調査段階的な学級内における児童の地位や状態はある程度可視化できても,より個別的で精緻的な情報は読み取ることはできない。
担任教師は,児童理解の方法として作文や日記,児童の作品等を手がかりにすることがある。その事実をヒントに,本研究では文章完成法テストを援用した自由記述から学級の様相および個人の態様をとらえる試案を作成した。この試案がどの程度学校現場で役に立つのかを明らかにする。
方 法
調査対象:A県公立B小学校5年C組(男子15 名・女子17名)と6年D組(男子18名・女子16 名)および担任教師2名
調査時期:2016年4月から9月
調査手続き:「一体感」「信頼感」「自己表現」「活動意欲」「協働性」を問う文章完成法テストを援用した自由記述の質問を6問作成し,担任を通して児童に回答を求めた。なお,刺激文は短く設定し,記述の自由度が広がるようにした。また,担任にも同意の質問を児童とは別で行い,その後検証のためインタビューを行った。
結果と考察
松井(2009)の研究を参考に児童の記述内容をA(肯定的表現),B(否定的表現),C(両価的表現:肯定も否定もどちらも含んでいる),D(その他)の4観点で分け,それぞれの出現率を計算し,学級集団の傾向をとらえた。
どちらの学級もその学級の特徴や傾向をとらえることができた。特に「自己表現」は,5年生よりも6年生の方が苦手に感じている児童が多かった。担任が具体的手立てを講じることで9月になり改善が見られた(Figure 1)。またどちらの学級も学級内の人間関係や学年に関わる行事などが「一体感」「活動意欲」に影響していると考えられた。さらに,担任の学級に対するとらえ方と実際に所属している児童の学級に対するとらえ方に違いが見られた。このことは,担任の職務遂行上の懸念を低減させる役割として機能するのではないだろうか。
個人の心情の変容をTable 1に示した。担任は児童の変容をとらえ,生徒指導に活かすことができた。回答に対し,何故そう書いたのか,そのように書く背景に何があるのかと,分析し考察することが児童理解を深める一歩になる。
本試案は,学級集団および児童理解のためのアセスメントツールとして活用可能である。必要に応じ,5つの視点を取り出しての使用が可能なため,活用範囲は広がると思われる。このような回答形式は,児童および担任にとって調査負担が少なく,短時間で行える。また,担任の主観的な感覚を客観視するツールとしても有効だと考える。
今後,調査対象学年を増やし,データを分析・蓄積していくことで,より確かな知見が得られよう。
学級経営は,担任教師にとって重要な責務のひとつである。学級は集団と個人の側面をもち,担任教師はその両面から支援していく必要がある。学級の様相を知り,児童の今をとらえることは,自己の学級経営における確認や改善において必要かつ重要な役割を果たす。
現在,学級の様相や児童の態様などを調べる主流な手法は質問紙調査である。質問紙調査は,児童が簡単に回答できるメリットがあるが,実施や分析に時間がかかり,知りたいときにすぐ結果を得ることができない。入力するだけで結果を分析してくれる調査システムや諸機関で研究開発されたソフトなども存在する。しかし,質問紙であるため調査段階的な学級内における児童の地位や状態はある程度可視化できても,より個別的で精緻的な情報は読み取ることはできない。
担任教師は,児童理解の方法として作文や日記,児童の作品等を手がかりにすることがある。その事実をヒントに,本研究では文章完成法テストを援用した自由記述から学級の様相および個人の態様をとらえる試案を作成した。この試案がどの程度学校現場で役に立つのかを明らかにする。
方 法
調査対象:A県公立B小学校5年C組(男子15 名・女子17名)と6年D組(男子18名・女子16 名)および担任教師2名
調査時期:2016年4月から9月
調査手続き:「一体感」「信頼感」「自己表現」「活動意欲」「協働性」を問う文章完成法テストを援用した自由記述の質問を6問作成し,担任を通して児童に回答を求めた。なお,刺激文は短く設定し,記述の自由度が広がるようにした。また,担任にも同意の質問を児童とは別で行い,その後検証のためインタビューを行った。
結果と考察
松井(2009)の研究を参考に児童の記述内容をA(肯定的表現),B(否定的表現),C(両価的表現:肯定も否定もどちらも含んでいる),D(その他)の4観点で分け,それぞれの出現率を計算し,学級集団の傾向をとらえた。
どちらの学級もその学級の特徴や傾向をとらえることができた。特に「自己表現」は,5年生よりも6年生の方が苦手に感じている児童が多かった。担任が具体的手立てを講じることで9月になり改善が見られた(Figure 1)。またどちらの学級も学級内の人間関係や学年に関わる行事などが「一体感」「活動意欲」に影響していると考えられた。さらに,担任の学級に対するとらえ方と実際に所属している児童の学級に対するとらえ方に違いが見られた。このことは,担任の職務遂行上の懸念を低減させる役割として機能するのではないだろうか。
個人の心情の変容をTable 1に示した。担任は児童の変容をとらえ,生徒指導に活かすことができた。回答に対し,何故そう書いたのか,そのように書く背景に何があるのかと,分析し考察することが児童理解を深める一歩になる。
本試案は,学級集団および児童理解のためのアセスメントツールとして活用可能である。必要に応じ,5つの視点を取り出しての使用が可能なため,活用範囲は広がると思われる。このような回答形式は,児童および担任にとって調査負担が少なく,短時間で行える。また,担任の主観的な感覚を客観視するツールとしても有効だと考える。
今後,調査対象学年を増やし,データを分析・蓄積していくことで,より確かな知見が得られよう。