The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PG(01-81)

ポスター発表 PG(01-81)

Mon. Oct 9, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PG77] SGH指定高校の活動に対する満足度の要因

白鳥美香1, 大石超2 (1.長野県長野高等学校, 2.長野県屋代高等学校)

Keywords:SGH, 因子分析, 共分散構造分析

はじめに
長野県長野高等学校は平成26年度にSGH(Super Global High school)校に指定されたことによって, 1・2年生全員が課題研究と海外研修に取り組むなど教育課程の内容が増加した。長野高校のSGH活動は,文部科学省や運営指導委員会等からは高い評価を受けている一方で,生徒達の負担が増したことも予想され,その教育的効果については,様々な機会・方法において調査分析されてきた。本研究調査はその一環として,SGH活動の満足度とその原因となる心理的要因について,質問紙を用いて調べ,今後のSGH活動のあり方を検討しようとするものである。
研究調査方法
まず,SGH活動に対する満足度の要因を探った。指導経験の豊富な教員と実際にカリキュラムを行っている生徒を交えたKJ法と合議により,「国際情勢の関心」,「国際的仕事への興味」,「主体性」,「変化への敏感さ」,「負担感」の5要素を想定した。5要素がSGH活動に対する満足度にどの程度作用しているかを調べた。
5要素の具体的な内容について14項目,SGH活動に対する満足度について6項目,合計20項目からなる質問紙を作成し,1年生243名および2年生252名を対象に質問紙を用いた調査を実施した。質問項目に対する回答は5件法で依頼した。
結   果
 20項目の評定結果を用いて因子分析を行ったところ,2年生については6因子を抽出し,それらは想定した5要素と満足感因子であることが分かった。1年生については5因子を抽出し,負担感以外の4要素と満足感因子であることが分かった。
因子分析の結果を参考にして,満足感を従属変数とした5要因の因果モデルを用いた共分散構造分析を学年別に行った(Figure1)。モデルの適合度指標は,1年生についてはCFI=0.943,RMSEA=0.058,2年生についてはCFI=0.923,RMSEA=0.064であった。
考   察
(1)1年生の結果より
 SGH活動の満足感に及ぼす要因は,「国際的仕事の興味」因子のみであった。「国際的仕事の興味」因子と「国際情勢の関心」因子は中程度の相関がある。海外の情勢に関心があり,自分自身の将来の仕事として世界をフィールドとするような職業を考えている生徒には満足度が高かったと考えられる。
一方,世界(仕事のあり方,円の価値,教育の内容)の変化に対して敏感であることや,主体性が高いこと(自分の力で世界を変えたい,指示されるよりも自分で動きたい)は,SGH活動に対する満足感の要因としては影響が小さかった。
(2)2年生の結果より
 SGH活動の満足感に及ぼす要因は,「主体性」因子のみであった。世界を少しずつでも自分の手で変えたい,指示されるよりも自分で動きたいと考えている生徒は満足度が高く,SGH活動に積極的に取り組んでいた。「主体性」因子と「国際的仕事の興味」因子,「国際的仕事の興味」因子と「国際情勢の関心」因子の相関はともに中程度ある。国際情勢に関心があり,将来海外を渡るような職業を考えていて,主体性の高い生徒達にとって,SGH活動は有意義なものになっていると考えられる。また,世界の変化に対して敏感であることは,1年生と同様に満足感の要因としては影響が小さかった。さらに,SGH活動に対する負担感(主に体力的な負担と時間的な負担)についても影響は小さかった。SGH活動の意義を理解している生徒が多く,カリキュラム内容はそれほど無理なく実施されていたと考えられる。
(3)今後のSGH活動の方向性について
 SGH活動の満足感に関する心的要因が学年によって異なっていた。1年生は,身近で一見ローカルな社会現象であっても,その背景には国際的な枠組みが存在していることを理解させていくようなカリキュラムを構築することによって,国際的な仕事への興味が高まり,SGH活動がより充実したものになると考えられる。2年生については,1年生の時の視点に加えて,さらに,この現実世界を少しずつでも自らの手で変えていくという主体性が必要になる。