日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH08] 親友の存在と適応との関係

親友がいる・いない・いるかどうかわからない大学生の比較

佐藤有耕1, 種村文孝#2 (1.筑波大学, 2.京都大学)

キーワード:親友, 大学生, 友人関係

 「自分には親友がいるのか(落合,2002)」という問いは青年にとって重要な問題であるが,親友がいる場合といない場合とでは,どのような違いがみられるであろうか。この点を検討することを目的として大学生を親友の有無によって3分類し,各群の特徴を比した結果について報告する。
方   法
 X大学における教職科目(1年次主対象)の講義を利用して実施された複数回の継続的調査のうち,2011-12年5-7月に行われた調査を取り上げ,親友の有無に回答した大学1-4年生302名(M106,F196)を分析の対象とした。Satoh(2016,ICP)と一部重なるデータである。年齢範囲は18-22歳であり,M=18.71(SD=0.79)歳であった。分析に取り上げた変数は,1)親友の有無(種村・佐藤,2007):“あなたにはいま,「この人が私の親友だ」と思える人はいますか”という質問に,「いる(人数も記入) 」,「いない」,「わからない」の3つの選択肢から回答を求めた。2)友だち関係満足度6項目(豊田,2003),3)友だちづきあい18項目(落合,1998),4)友だちとのつきあい方の2次元10項目(佐藤,2010),5)改訂版UCLA孤独感尺度(Russell, Peplau & Cutrona,1980),6)LSO(落合,1983)であった。
結果と考察
1.親友の有無 「親友がいる(241;79.8%)」「いない(16;5.3%)」「わからない(45;14.9%)」という結果であった。親友の平均人数は3.18(SD=2.17)人であった。
2.孤独感に関連した違い 親友の有無の3群に孤独感得点の違いがあり(F(2,283)=17.04,p<.001,η2=.11),親友いない(49.5;
SD=9.8)>わからない(39.9;SD=8.5)=いる(36.5;SD=8.4),となった。親友がいない人は孤独感が高いという特徴がみられた。またLSO-U得点にも違いがあり(F(2,283)=12.80,p<.001,η2=.08),親友いる>わからない>いない,となった。親友がいる,わからない,いないの3群の順に,人と理解・共感できると感じていることが示された。
3.友人関係に関連した違い 友だちとの深いつきあい方の得点に親友の有無の3群間で違いがあり(F(2,227)=6.38,p=.002, η2=.05),親友いる>わからない=いない,となった。逆に,本音を出さない自己防衛的なつきあい方では(F(2,260)=7.11, p=.001,η2=.05),親友いない>わからない=いる,となった。一方で,友だちと同じようにしようとする同調的なつきあい方での違い(F(2,260)=3.53, p=.031, η2=.03)は,わからない>親友いる,という結果であったが,親友がいない人の得点はいる人の得点よりも低い数値であった。また,友だち関係満足度(F(2,252)=6.23,p=.002,η2=.05)では,親友いる=わからない>いない,となった。
 以上より,大学生で親友がいる場合は,友だちに心をひらいた深いつきあい方をしており,友だち関係の満足度も高く,友だちとわかりあえることから孤独感も高くはならないことが示された。親友がいない場合に比べて,親友がいる場合の方が適応的であることが示唆される。一方,親友がいるかどうかわからない場合には,適応の程度は両者の中間の状態にあり,同調的なつきあい方をしていることが特徴であった。親友がいることは,良好な友人関係と適応の指標となることが確認された。