日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH13] 中学生の母親に対する苛立ちの強さと回想的な児童期の母子関係との関連

福田佳織 (東洋学園大学)

キーワード:母子関係, 中学生, 苛立ち

問題と目的
 12,3歳頃の思春期の子どもは,自我の急速な成長に伴い,精神面での独立・自立欲求が高まることから親や年長者,さらには社会的な権威,制度,通念など抽象度の高い対象に対して反抗的態度を示す(山口, 1991)という。ところが,現代のこの時期にある子どもたちには,こうした反抗的態度が見られないことが指摘されている(深谷, 2005)。
 しかしながら,反抗の形態は様々であり(須崎, 2015),「反抗」の表現形態には言語的反抗や行動的反抗の他にも,黙殺,冷眼,不機嫌などの非言語的な表現での反抗,心の中での反抗のような内面的な反抗もある(住田, 1995)という。こうした様々な表現形態の中で,表面的には穏やかに見えても,内面的な苛立ちが強い場合も考えられる。
これらの反抗は親子関係とは切り離せない(大久保, 2009; 平石, 2011)ことから,青年の苛立ちの様相と親子関係の特性との間に何らかの関連が見られることが推測される。
 そこで,本研究では,中学生の母親に対する苛立ちの強さに着目し,それが回想的な児童期の母子関係とどのように関連しているかを検討する。
方   法
1.対象者:南関東圏在住の中学2,3年生38名(2年生7名,3年生31名;男性22名,女性16名)。
2.調査期間:2016年8月5日~2017年2月6日。
3.手続き:14年前に著者の母子関係調査に協力した母子のうち,断続的に調査協力を得ている67家庭あてに,母親ならびに中学2,3年生になる子ども(以下,「対象者」と呼ぶ)に対する本研究の概要説明書,質問用紙,調査協力撤回書,返信用封筒を送付した。まずは,母親に調査概要と質問用紙を読んでいただき,対象者が回答することに問題がなければ,質問用紙と概要説明書を対象者に渡してもらうように文書で依頼した。また,受け取った対象者には,調査は任意であること,回答が済んだ後,返信用封筒に入れて返信するよう文書で求めた。回答の抜け漏れについては,対象者に再度連絡し回答を求めたため,無効回答はなかった。
4.質問項目:①フェイスシート;対象者氏名(謝礼送付のため),年齢,学年,性別。②児童期の母子関係;母親に対する愛着尺度(本多, 2002)の15項目(8項目は回避性項目,7項目は両価性項目)を使用した。それぞれ「はい(4点)」~「いいえ(1点)」の4件法で尋ねた。③母親に対する苛立ち感;自分の苛立ちの最大強度を10とした場合,最近,母親に対して苛立つ程度の平均を0~10で尋ねた。
結   果
 中学生の母親に対する苛立ちの強さと回想的な児童期の母子関係との関連
 現在の母親への苛立ちの強度(0~10)について,無(0),低(1~4),中(5~7),高(8~10)の4群に分けた。この4群において,児童期の母子関係の回避性項目(α=.792)の合計得点/項目数と両価性項目(α=.792)の合計得点/項目数のそれぞれの得点に差が見られるかを検討するため一元配置の分散分析(その後の検定にTukey)を行った。その結果,回避性得点に有意傾向の差が見られ(F(3,34)=2.26,p<.10),その後の検定により,苛立ち低群と高群との間に有意傾向の差が見られることが明らかになった(Figure1参照)。
 これらの結果から,母親への苛立ちが強い中学生は苛立ちが低い中学生より,(回想的ではあるが)児童期の母親との関係性において回避性が高い傾向があることが示された。
考   察
 両価性が高い方がネガティブな情動を強く経験しやすい(記憶バイアスがかかりやすい) (Pietromonaco & Barrett, 1997)と言われてきたが,回避性の高さと母親への苛立ちの強さとの間にも,どのような関連性があるのかを検討する必要があるだろう。