The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH42] 教室という弁証法(2)

教師によって変化する生徒の主体性

藤森裕紀1, 有元典文2 (1.横浜国立大学大学院, 2.横浜国立大学)

Keywords:主体性, 学習環境, 授業デザイン

問題と目的
 学習指導要領「生きる力」によれば,教師は生徒の主体的に学習に取り組む態度を養うことを求められている。浅海(2001)は主体性を,実際に活動を担う「主体」が「他と関わっていく中で現れてくる,性質としての属性」と定義した。ここから,主体性が他者との相互関係と切り離して考えることのできない性質であることが伺える。
 また,有元・尾出・岡本(2011)は,学習を単なる個人の達成と捉えるのではなく,学習が生じる社会的・文化的状況のセットで成立すると考える学習環境のデザインという視点を提唱している。この視点からも,主体性が他者や状況と切り離して考えることのできない性質であるといえる。実際に,吉澤・藤沢(2009)は自己学習授業と従来授業とを比較し,授業デザインが学習意欲に及ぼす効果を検討しており,生徒の主体性と授業デザインの関連について言及している。
 以上の観点から,本研究では生徒の主体性が社会的・文化的状況によって変化すると考え,授業デザインによる生徒間の主体的な言語活動の変化を検討することを目的とした。
方   法
 2016年10月20日から12月14日にかけての計6日間,関東圏内の公立中学校3年生1学級35名を対象に観察を行った。
 本研究においては観察を行った6日の内,4日間に一貫して実施された異なる3つの授業(以後,授業A・B・Cとする)(Figure1)を対象に,生徒間における主体的な言語活動の回数を計上し,分析を行った。なお,授業A・B・Cはそれぞれ異なる教師が担当していた。分析には統計ソフトR(version 3.3.3)を使用した。なお,得られた情報は細心の注意を払い,管理を行った。
結果と考察
 各4回ずつ実施された授業A・B・Cにおける生徒間の言語活動の発話頻度を分析するために,独立性検定を行った結果,0.1%水準で有意であった(χ²(6)=54.48,p<.001)。
 独立性検定が有意であったことから,多重比較および残差分析を行った(Figure2,3)。その結果,授業A・B,授業A・Cにて比率に有意な違いがみられ(p<.001),授業B・Cでは有意傾向がみられた(p<.1)。授業Aは生徒間の学び合いを多く取り入れた授業であり,第2・4回にて生徒の主体的な活動が多く見られたと推察される。
 これらのことから,授業のデザインによって生徒の主体的な活動の頻度が変容する可能性が示唆された。このことは,教師が生徒の特性を自分の授業のみから判断するのではなく,他の授業での様子を知り,多面的に捉えていくことの重要性を示しているといえる。
 なお,授業Aは第3回にて有意に度数が少なかった。これは実施された授業がグループ活動であり,生徒の主体的な活動の回数の捉え方が原因であると推考される。したがって,グループ活動の実情を考慮出来ていない点が本研究の問題点であり,より適確な計上方法が今後の課題である。