日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH47] 児童の学級コミットメントが教師の突きつける指導行動の有効性に及ぼす影響

森智史 (上越教育大学)

キーワード:学級コミットメント, 教師の指導行動, 自律

目   的
 本研究では,児童が自律性を発揮する学級を目指す教師の手立てとして,弓削(2012)の「突きつけ」の指導行動に着目した。この指導行動が学級の自律性を促進するには,学級へのコミットメントがどのように影響するのか検討した。
予備調査
学級コミットメント尺度
 高木・石田・益田(1997)を参考に,28項目の質問紙を作成した。2017年1月,公立小学校6年生児童110名(男子47名,女子63名)を対象に質問紙調査を実施した(5件法)。因子分析の結果,2因子(「愛着」,「貢献・献身」)が抽出され,この結果をもとに,11項目からなる「学級コミットメント尺度」を作成した。
学級自律性尺度
 長谷川・小野寺(2016),伊藤・松井(1996,2001)を参考に,29項目の質問紙を作成した。2017年1月,公立小学校6年生児童105名(男子47名,女子58名)を対象に質問紙調査を実施した(5件法)。因子分析の結果,2因子(「主体的な問題解決」,「相互的な規律遵守」)が抽出され,この結果をもとに,14項目からなる「学級自律性尺度」を作成した。
突きつける指導行動尺度
 弓削(2008,2010,2012),弓削・新井(2007,2009)を参考に,28項目の質問紙を作成した。2017年1月,公立小学校教諭78名(男性46名,女子32名)を対象に質問紙調査を実施した(4件法)。因子分析の結果,4因子(「待つ」,「突き放す・放っておく」,「尊重する・委ねる」,「引き出す」)が抽出され,この結果をもとに,16項目からなる「突きつける指導行動尺度」を作成した。
本 調 査
調査対象と調査時期
 2017年2月,公立小学校9校17学級の6年生児童455名(男子257名,女子198名)及び担任教師17名(男性7名,女性10名)を対象に質問紙調査を実施した。
調査内容
 6年生児童には,学級コミットメント尺度(4件法)及び学級自律性尺度(5件法)の質問紙調査を実施した。担任教師には,突きつける指導行動尺度(4件法)の質問紙調査を実施した。
結果と考察
 学級コミットメント尺度及び突きつける指導行動尺度の得点について,17学級の平均値を算出し,その平均値を基準にそれぞれ高群と低群に学級を分類した。学級コミットメント(2:高群・低群)×突きつけ(2:高群・低群)の4類型に該当する学級のうち1学級ずつを抽出し,分析の対象とした。学級自律性得点を従属変数として,学級コミットメント(2:高群・低群)×突きつけ(2:高群・低群)の2要因分散分析を行った。
 分散分析の結果(Figure 1),交互作用が有意であった[F(1,102)=6.31,p<.05]。単純主効果を検定した結果,突きつけ高群において,学級コミットメント高群と低群では有意差が見られ,[F(1,102)=82.14,p<.01]突きつけ低群においても有意差が見られた[F(1,102)=27.93,p<.01]。また,学級コミットメント高群において,突きつけ高群と低群では有意差が見られ,[F(1,102)=10.06,p<.01],学級コミットメント低群においては有意差が見られなかった[F<1]。
 学級コミットメントが高い学級では,突きつける指導行動が多くとられるとき,学級自律性が高いことが明らかになった。学級コミットメントが高い学級では,児童の学級への関心が高いため,担任教師が突きつける指導行動をとった際に,それらを自分事として受け止め,自律的に課題を解決していることが示唆された。