日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH48] 父親の育児・家事参加に対する母親の受け止め方についての質的研究

金子楓1, 濱口佳和2 (1.筑波大学, 2.筑波大学)

キーワード:父親の育児・家事参加, 母親の受け止め方

問題と目的
 現代の日本社会において,地域の人々の関係の希薄化から,育児をしている母親の孤立が問題となっている(厚生労働省,2007)。そのような状況において,父親は母親の重要なサポート源である(芝崎,2015)。しかし,父親の1日の家事・育児関連時間は,1時間7分である一方,母親の育児・家事関連時間は7時間41分である(総務省,2011)。つまり,現状では,父親の育児・家事参加はそれほど行われていない。父親の育児・家事参加要因について,従来の研究では,夫婦の資源差や父親の意識に焦点が置かれている(石井クンツ,2013)。しかし,父親の育児・家事参加の要因として母親に注目することが重要である(中川,2010)。
 そこで本研究では,父親の育児・家事参加に対する母親の受け止め方に着目し,母親の様々な受け止め方を網羅的に把握することを目的とする。
方   法
調査協力者
 茨城県内の保育園に通う乳幼児期の子どもを持つ母親188人に質問紙を配布した。有効回答は73名であった。
調査内容
 (1)フェイスシート(年齢,職業,子どもの年齢と数,家族構成),(2)情緒的サポート,情報的サポート,手段的サポートそれぞれ受容量と期待量(1「全くしてくれない」~9「とてもしてくれる」までの9件法),(3)それぞれのサポートに対する受け止め方(自由記述)
分析方法
 それぞれのサポートについて,受け止め方を抽出した後,心理学を専攻する大学院生2名で,KJ法により分類を行った。
結   果
1.情緒的サポートについて
 <必要ない(1カテゴリー)><必要だが時間がない(1カテゴリー)><必要ある(1カテゴリー)><父親との肯定的関係性の認知(3カテゴリー)><サポートによる肯定的効果(3カテゴリー)><サポートへの否定的評価(3カテゴリー)><サポートによる否定的効果(1カテゴリー)>が作成された。
2.情報的サポートについて
 <必要ない(1カテゴリー)><必要ある(1カテゴリー)><父親との肯定的関係性の認知(4カテゴリー)><サポートによる肯定的効果(1カテゴリー)><サポートへの肯定的評価(2カテゴリー)><サポートへの否定的評価(2カテゴリー)><自分への否定的評価(1カテゴリー)>が作成された。
3.手段的サポートについて
 <必要ある(3カテゴリー)><父親への配慮(1カテゴリー)><父親との肯定的関係の認知(3カテゴリー)><サポートによる肯定的効果(4カテゴリー)><自分への肯定的認知(1カテゴリー)><サポートへの否定的評価(4カテゴリー)>が作成された。
考   察
 いずれのサポートにおいても作成されたカテゴリーは,<父親との肯定的関係性の認知><サポートによる肯定的効果><サポートに対する否定的評価>であった。このことから,父親の育児・家事参加は,父親との肯定的関係性の認知や肯定的な効果へつながるが,母親の意向に沿わない育児・家事参加であると,サポートを否定的に評価する可能性があると考えられる。