The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH61] 高等学校と特別支援学校高等部の位置的統合による教育効果

静岡県の高校生へのアンケート調査から

杉木充 (静岡県立清水南高等学校・同中等部)

Keywords:特別支援教育, 共生, 高校教育

研究の目的
 静岡県では平成16年度の共生・共育推進事業として静岡県立静岡北養護学校南の丘分校(高等部)を静岡県立静岡南高等学校内(現静岡県立駿河総合高等学校)に設置した。朝日新聞(2009)によれば,高等学校内に特別支援学校の分校を設置し,教育課程の異なる二校を位置的に統合した学校は全国的に増加する傾向にある。吉岡・冨永(2011)は,全国の教育委員会を対象にアンケート調査を行い,こうした学校の設置意義として「高校生の人権意識の向上,人間的成長につながる」を挙げる教育委員会が多いことを指摘している。しかし,高校生自身が分校の生徒から何を学んでいるのかは分かっていない。また,共生社会の実現に向けて,高校生に対してどのような指導が必要なのかといったことも不明である。そこで,本研究では高校生が分校生から学んでいることと指導すべきことを明らかにする。
研究方法
 特別支援学校高等部と位置的に統合されたA高校の生徒535人を対象にアンケート調査を行った。回答した生徒は,1年生168人,2年生185人,3年生174人の500人で,回収率は93.5%だった。また,一般的な全日制普通科のB高校の生徒707人に同様のアンケート調査を行った。回答した生徒は,1年生219人,2年生222人,3年生215人の656人で,回収率は83.7%だった。
結果と考察
(1)高校生が分校生から学びたいこと
 「分校生のよいところや真似したいと思うところはどんなところですか。自由に書いてください。」という質問に対してA高校の生徒39人(12.5%)が「分校生同士の団結力や仲の良さを真似したい」と回答している。また,A高校の生徒46人(14.8%)が「思い切りの良さや自信のある言動を真似したい」と回答している。一方で,杉木(2017)がA高校の教員を対象に実施したアンケート調査では,共生・共育の効果について,高校生が分校生から人間関係や積極性,自己肯定感を学んでいるといった回答は見られなかった。こうした高校教員の回答と高校生の回答との間に見られる違いは,これまで指摘されてこなかった位置的統合による共生・共育の高校生への教育効果を表すものと考えられる。
(2)合理的な配慮に関する理解
 合理的配慮に関して,内閣府(2012)を参考にした「障害のある人の社会参加について配慮・工夫を行わないことは差別だと思いますか」という質問をしたところ,「わからない」と回答した生徒は,A高校で33.4%,B高校で31.9%であった。一方で,内閣府(2012)では,「わからない」と「一概にいえない」と回答した人は全体の8.2%であった。この回答は,同じ校舎や敷地内で分校生と学校生活を送ることが高校生の合理的配慮に関する理解を促進するものではないことを示している。つまり,共生社会の実現に向けて様々な取り組みを進める現段階においては,合理的な配慮については高校生に対して指導すべきものだと考える。
引用文献
朝日新聞(2009).知的障害者の高等部,公立高に 
  「分教室」倍増 12年度,18府県55校に2009
  年12月31日 大阪本社 1総合面
杉木充(2017).位置的に統合された高等学校と特
  別支援学校高等部における生徒及び教員の学
  び 上越教育大学大学院修士論文
内閣府(2012).障害者に関する世論調査 http://
  survery.gov-online.go.jp/h24/h24-shougai
  /zh/z15.html 閲覧日2016年11月16日
吉岡徹・冨永光明(2011).高等学校における特別
  支援学校分校・分教室設置に関する研究:全 
  国都道府県教育委員会調査を通して 大阪教
  育大学紀要第Ⅳ部門,60(1),127-139