The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH68] 教師の指導行動が小学生の援助要請に対する意識に及ぼす影響

浅原修一1, 秋光恵子2 (1.兵庫教育大学大学院, 2.兵庫教育大学)

Keywords:被援助志向性, 教師の指導行動

問題と目的
 悩みを抱えた際の対処方法として,他者への援助要請が注目されている。小学生では援助資源として「保護者」が,中学生以降では「友人」が最も選ばれているが(佐藤・渡邉,2013;岩瀧,2009),家庭環境の状態や友人の援助スキル不足から,援助要請を行ったとしても,充分な援助を受けることができず悩みが解決できない子どもも存在すると考えられる。一方,どのような子どもに対しても,子どもの求める適切な援助を安定して提供できるのは,学校で子どもに対して個に応じた教育を行う教師なのではないだろうか。また,援助要請の有無は,援助要請者と援助要請を受ける側との関係性や印象により変化する(竹ヶ原,2014)という指摘から,教師の様々な指導行動は,子どもの援助要請の基盤になると考えられる。そこで本研究では,小学生を対象とし,教師の声掛けや普段の関わりのような指導行動が,児童の援助要請に対する意識にどのような影響を与えているかを検討し,教師から児童への具体的な支援に関する示唆を得ることを目指す。
方   法
 2017年2月下旬から3月中旬に小学校3校の5年と6年の児童297名を対象に調査を行い,男子135名,女子143名の計278名から有効回答を得た。有効回答率は93.6%であった。調査には以下の2つの尺度が使用された。
教師に対する被援助志向性尺度  本田・新井・石隈(2011)と田村・石隈(2001)の尺度から,重複する項目と教師への援助要請に相当しない項目を除いた15項目について4段階で回答を求めた。
児童に対する教師の働きかけ尺度  是常・秋光(2014)の児童個人に対する働きかけ尺度23項目と学級全体に対する働きかけ尺度33項目について4段階で回答を求めた。
結果と考察
教師に対する被援助志向性尺度の因子分析(主因子法・プロマックス回転)  第1因子と第2因子は先行研究とほぼ同一の項目で構成されていたため,先行研究に倣って『被援助に対する抵抗感の低さ』『被援助希求』と命名した。さらに,先行研究にはみられなかった第3因子も抽出され,「先生に相談すると自分の心が弱い人間と思われそうである」等で構成されていたため,『被援助に対する懸念』と命名した。全ての因子においてα>.78となり,内的一貫性が確認された。
教師の働きかけ尺度の因子分析(主因子法・プロマックス回転)  個人に対する働きかけ尺度は『何気ない働きかけ』『意図が明確な指導・注意』『賞賛・承認』『意図が不明確な指導・注意』と解釈される4因子解が採択された。第4因子のみα<.7であったが,項目全体の平均値が低めであったためと考えられた。学級全体に対する働きかけ尺度では『良好な学級を作る関わり』と『意図が不明確な指導・注意』という2因子解を採択した。どちらの因子もα>.7であった。
各因子の相関関係  『被援助に対する抵抗感の低さ』と『被援助希求』『何気ない働きかけ』『意図が明確な指導・注意』『賞賛・承認』『良好な学級を作る関わり』との間にr>.5の正の相関がみられた。これらの因子を構成する項目の内容から,教師が個人に行う日々のあいさつや褒める行為,また学級全体への声掛け・指導が,教師からの援助に対する抵抗感を下げ,それが援助をされたい気持ちにつながることが考えられた。一方,『意図が不明確な指導・注意』と被援助志向性尺度のそれぞれの因子との相関が低いことから,厳しい叱責や権威的な指導が直接的に児童の被援助に対する意識に影響を及ぼすわけではないことが伺えた。