日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-78)

2018年9月15日(土) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PA03] 小学生の食生活が生活満足度に及ぼす影響

栗山和広 (愛知教育大学)

キーワード:小学生, 食生活, 生活満足度

問題と目的
 近年,子どもの食事内容や食事環境など,食事の多様化が進んでおり,食生活の乱れや子どもの心身の健康に関わる食生活の問題に関心が高まっている。家庭科における食の学びとして,栄養,食品,調理を中心に数多くの研究がなされてきている。その中で,食生活の教育について関心が高まっている。生活習慣と精神的健康との関連(松浦・竹下,2008),献立数や共食が健康状態に及ぼす影響(佐々他,2003)などが明らかにされている。しかし,こうした研究は,それぞれの要因の分析にとどまっていることから,江崎(2016)は,中学生を対象に,夕食における親子の共食が食QOLに及ぼす影響のメカニズムについて検討している。
 本研究では,食生活の乱れが始まる小学5年生と6年生を対象に,朝食と夕食のそれぞれにおいて,食の生活要素に基づく家族の会話が食QOL及び生活満足度に及ぼす影響のメカニズムについて検討する。

方  法
調査対象者:公立小学校に在籍する5年生202名,6年生253名の計455名に回答を得た。そのうち欠損のあるものを除いた5年生178名,6年生222名の計400名を分析対象者とした。
手続き:無記名個別形式の質問紙を用いてクラス担任の教師と大学生が調査を実施した。
調査内容
(1)食生活に関する調査:調査前日の夕食と当日の朝食のそれぞれについて,食生活の要素として,摂取の有無,献立数と共食人数,食事に関する手伝い(回答は4件法)を尋ねた。(2)会話:食事中の会話について「全く話をしなかった」,「あまり話をしなかった」,「少し話をした」,「よく話をした」からあてはまるものを1つ選択する形式で尋ねた。(3)食のQOL:會退ら(2012)を参考にして「食欲があった」,「食事の時間が待ち遠しかった」「食事の雰囲気は明るかった」,などの6項目について,回答は5件法で尋ねた。(4)共食感:足立(2010)を参考にして,「家族と一緒に食事をすることが楽しい」「できるだけ家族と食事がしたい」の2項目について,回答は4件法で尋ねた。
(5)生活満足度:吉武(2010)を参考にして,「自分の生活はうまくいっている」,「自分の生活に満足している」,などの7項目について回答は6件法で尋ねた。

結果と考察
 食生活要素(献立数,共食人数,手伝い)が,会話,共食感,を媒介にして食QOLや生活態度と関連するモデルを検討するために共分散構造分析によるパス解析を行った。Figure 1に朝食のモデルのパス図,Figure 2に夕食のモデルのパス図を示した。分析の結果,朝食,夕食ともモデルが適合することが確認された(朝食:χ2(8)=9.02, n.s., GFI=.98, CFI=.97, RMSEA=.07; 夕食:χ2(8)=11.32, n.s., GFI=.97, CFI=.94, RMSEA=.08)。Figure1から,朝食において,献立数と共食人数から会話へのパスがみられ,会話から共食感,共食感から食QOLへ,食QOLから生活満足度へのパスが見られた。同様に,夕食において,お手伝いと共食人数から,会話へ,会話から共食感,食QOL,生活満足度へとパスが確認された。尚,朝食ではお手伝いが,夕食では献立数が,会話へのパスが見られなかった。これらのことから,小学生において,生活要素としてのお手伝い,献立数,共食人数が,コミュニケーションを活発にすることにより,共食感を高め,食QOLを高め,生活満足度を高めることが示された。