[PA09] 児童の役割取得,他者への配慮,規則遵守と親の子育てスタイルとの関係
親評定尺度を用いた検討
キーワード:児童, 役割取得, 子育てスタイル
問題と目的
登張他(2016a,2016b)は親が子どもの協調性,役割取得,他者への配慮,規則遵守,親和性等を評定し,自分の子育ての仕方を答えるという内容の質問紙調査を実施し,その分析結果から親評定・児童用の多面的協調性尺度,役割取得,他者への配慮,規則遵守,親和性,自己主張,同情尺度と親の子育てスタイル尺度を作成した。また,登張他(2016c)は,子育てスタイル尺度の高低から親の子育てパターンを権威ある,権威主義的,許容的,関心低の4群に分類し,児童の協力志向と協調的問題解決は権威ある群と許容的群が権威主義群と関心低群より高く,協力志向は権威主義群が関心低群より高いという結果を報告した。
本研究では,親の子育てパターンによる児童の役割取得,他者への配慮,道徳遵守,親和性,自己主張,同情得点の違いについて検討する。
方 法
協力者:小学1-6年生の保護者2034名(女性1844名,男性171名,不明19名)25-73歳。父親や祖父母も含まれている。本研究では,母親と考えられる50歳以下の女性1717名を分析対象とした。
測度:子育てスタイル尺度(応答・共有尺度5項目,統制・要求尺度4項目)
親評定・児童用役割取得尺度(4項目),
他者への配慮尺度(6項目),規則遵守尺度(4項目),親和性尺度(4項目),自己主張尺度(2項目),同情尺度(3項目) どの尺度についても「全然当てはまらない」から「よく当てはまる」までの5件法で回答を求めた。
結果と考察
応答・共有尺度と統制・要求尺度のそれぞれ[平均値-1標準偏差]以下を低群,[平均値+1標準偏差]以上を高群とし,両方高い群を「権威ある」子育てパターン群,応答・共有が高く統制・要求が低い群を「許容的」群,応答・共有が低く統制・要求が高い群を「権威主義」群,両方低い群を「関心低」群に分類した。親評定・児童用尺度の子育てパターンを要因とする一元配置分散分析の結果と各群の度数と平均値をTable 1に示した。
どの尺度も,子育てパターンの群別の主効果が有意だった。また,どの尺度も,権威ある子育てパターン群の得点が最も高かったが,権威ある群と許容的群との間に有意差はみられなかった。
役割取得と他者への配慮と規則遵守は,権威ある群と許容的群が権威主義群と関心低群より有意に高く,統制・要求よりも応答・共有の高さが効果を示していることが示唆された。親和性も,権威ある群と許容的群が権威主義群と関心低群より有意に高く,応答・共有の子育てスタイルが効果を示すことが示唆されたが,関心低群は権威主義群より有意に低く,親和性が低かった。
自己主張と同情は,権威ある群は権威主義群と関心低群より有意に高かったが,許容的群と権威主義群の間に有意差がみられず,関心低群は権威主義群より有意に低かった。自己主張と同情は,応答・共有も統制・要求も両方高い権威ある群が高く,両方低い関心低群が低いという結果である。
引用文献
登張・名尾・首藤・大山・田村 (2016a). 子育てスタイル尺度の作成 発達心理学会27回大会,PF36.
Tobari, Nao,Shuto,Oyama,& Tamura(2016b). Parental assessment of Cooperativeness, Role-taking, Consideration for others, Obedience to rules, Self-assertion, Affiliation, and Sympathy in schoolchildren. ICP2016 Yokohama PS26P-02-145.
登張・名尾・首藤・大山・田村 (2016c). 児童の協調性と親の子育てスタイルとの関係―親評定尺度を用いた検討 教育心理学会58回総会,PC17.
登張他(2016a,2016b)は親が子どもの協調性,役割取得,他者への配慮,規則遵守,親和性等を評定し,自分の子育ての仕方を答えるという内容の質問紙調査を実施し,その分析結果から親評定・児童用の多面的協調性尺度,役割取得,他者への配慮,規則遵守,親和性,自己主張,同情尺度と親の子育てスタイル尺度を作成した。また,登張他(2016c)は,子育てスタイル尺度の高低から親の子育てパターンを権威ある,権威主義的,許容的,関心低の4群に分類し,児童の協力志向と協調的問題解決は権威ある群と許容的群が権威主義群と関心低群より高く,協力志向は権威主義群が関心低群より高いという結果を報告した。
本研究では,親の子育てパターンによる児童の役割取得,他者への配慮,道徳遵守,親和性,自己主張,同情得点の違いについて検討する。
方 法
協力者:小学1-6年生の保護者2034名(女性1844名,男性171名,不明19名)25-73歳。父親や祖父母も含まれている。本研究では,母親と考えられる50歳以下の女性1717名を分析対象とした。
測度:子育てスタイル尺度(応答・共有尺度5項目,統制・要求尺度4項目)
親評定・児童用役割取得尺度(4項目),
他者への配慮尺度(6項目),規則遵守尺度(4項目),親和性尺度(4項目),自己主張尺度(2項目),同情尺度(3項目) どの尺度についても「全然当てはまらない」から「よく当てはまる」までの5件法で回答を求めた。
結果と考察
応答・共有尺度と統制・要求尺度のそれぞれ[平均値-1標準偏差]以下を低群,[平均値+1標準偏差]以上を高群とし,両方高い群を「権威ある」子育てパターン群,応答・共有が高く統制・要求が低い群を「許容的」群,応答・共有が低く統制・要求が高い群を「権威主義」群,両方低い群を「関心低」群に分類した。親評定・児童用尺度の子育てパターンを要因とする一元配置分散分析の結果と各群の度数と平均値をTable 1に示した。
どの尺度も,子育てパターンの群別の主効果が有意だった。また,どの尺度も,権威ある子育てパターン群の得点が最も高かったが,権威ある群と許容的群との間に有意差はみられなかった。
役割取得と他者への配慮と規則遵守は,権威ある群と許容的群が権威主義群と関心低群より有意に高く,統制・要求よりも応答・共有の高さが効果を示していることが示唆された。親和性も,権威ある群と許容的群が権威主義群と関心低群より有意に高く,応答・共有の子育てスタイルが効果を示すことが示唆されたが,関心低群は権威主義群より有意に低く,親和性が低かった。
自己主張と同情は,権威ある群は権威主義群と関心低群より有意に高かったが,許容的群と権威主義群の間に有意差がみられず,関心低群は権威主義群より有意に低かった。自己主張と同情は,応答・共有も統制・要求も両方高い権威ある群が高く,両方低い関心低群が低いという結果である。
引用文献
登張・名尾・首藤・大山・田村 (2016a). 子育てスタイル尺度の作成 発達心理学会27回大会,PF36.
Tobari, Nao,Shuto,Oyama,& Tamura(2016b). Parental assessment of Cooperativeness, Role-taking, Consideration for others, Obedience to rules, Self-assertion, Affiliation, and Sympathy in schoolchildren. ICP2016 Yokohama PS26P-02-145.
登張・名尾・首藤・大山・田村 (2016c). 児童の協調性と親の子育てスタイルとの関係―親評定尺度を用いた検討 教育心理学会58回総会,PC17.