[PA10] 中学生が情緒的援助要請に抱く期待の個人差と短期的ストレス状態変化の関連
潜在プロフィル分析を用いた探索的検討
キーワード:援助要請, 中学生, 潜在プロフィル分析
問題と目的
中学生の不登校やひきこもり等の不適応防止策として講じられているスクールカウンセラーや地域の居場所づくり等の社会的援助は,緊急性の高い場合を除き,悩みをもつ中学生自身による「援助要請行動」があって初めて機能するものである。しかし,中学生の援助要請行動の帰結に関する先行研究によると,直接的問題解決を目的とした道具的援助要請は肯定的帰結をもたらすことが明らかになっている一方,情緒的安定を目的とした情緒的援助要請の帰結は一貫した報告がなされていない (e.g. Kato, 2015; 高本&相川, 2013; Veles et al, 2016)。中学生の抱える問題は根本的解決が困難なものも多いため,情緒的援助の担う役割は大きく,どのような生徒であれば情緒的援助の効果があるのか,効果がない生徒にはどのような支援が必要なのかを検討することは喫緊の課題と言える。
ではなぜ,情緒的援助要請の帰結が一貫しないのであろうか。ひとつの要因として,情緒的援助要請時にもつ援助者への期待が区別されずに検討されてきたことが考えられる(村山&及川, 2005)。
そこで本研究では,中学生が情緒的援助要請を行う際に援助者に対して抱く期待のパターンを明らかにし,援助要請後のストレス状態の短期的変化が期待の個人差によって異なるか否かを探索的に検討する。
方 法
データ収集の方法
対象:首都圏A中学校,東北地方B中学校の1~3年生 約1,100名
時期:2017年10月および11月
方法:学校での一斉実施による質問紙調査
分析:潜在プロフィル分析
分析の方針
1)潜在クラスモデルの検討
Time2で測定した情緒的援助要請時の期待尺度より,5つの下位尺度得点の各平均を標準化し,潜在プロフィル分析を行う。クラス数の決定はブートストラップ法による。
2)各変数の平均のクラス間差の検討
クラスによって,援助要請行動やストレス状態等の変数に差が見られるかを一要因分散分析で検討する。有意となった場合は,Tukey HSDの多重比較分析(5%水準)により,その内容を確認する。
結 果
有効回答者は,Time1・Time2でデータがマッチング可能であり,また,調査期間中に何らかの悩みに対処した経験のある517名(男子217名,女子300名)である。先行研究に倣い,分析は性別および悩みの領域別に回答者を4群に分類して実施した。本発表は心理・社会的悩みをもつ生徒に焦点を当てる。
情緒的援助要請時の期待によるクラス分け
潜在プロフィル分析により,女子は6クラス,男子は5クラスモデルが採用された。
ストレス変化のクラス間差
男女共に,援助要請行動のクラス間差は見られなかった。男子において,全ての期待が1.5SD以上高い「期待過剰群」のみ,Time1からTime2のストレスが上昇。また,女子の「期待高群」は,受けた援助に対する否定的評価が高かった。
考 察
援助要請行動,悩みの統制可能性や影響性,愛着スタイルにクラス間差がないことから,「期待過剰群」や「期待高群」で見られたネガティブな事象は,本人の中で援助に期待するものが明確ではなく,相手の反応を受けて混乱やストレスが生じたことではないかと考えられる。
中学生の不登校やひきこもり等の不適応防止策として講じられているスクールカウンセラーや地域の居場所づくり等の社会的援助は,緊急性の高い場合を除き,悩みをもつ中学生自身による「援助要請行動」があって初めて機能するものである。しかし,中学生の援助要請行動の帰結に関する先行研究によると,直接的問題解決を目的とした道具的援助要請は肯定的帰結をもたらすことが明らかになっている一方,情緒的安定を目的とした情緒的援助要請の帰結は一貫した報告がなされていない (e.g. Kato, 2015; 高本&相川, 2013; Veles et al, 2016)。中学生の抱える問題は根本的解決が困難なものも多いため,情緒的援助の担う役割は大きく,どのような生徒であれば情緒的援助の効果があるのか,効果がない生徒にはどのような支援が必要なのかを検討することは喫緊の課題と言える。
ではなぜ,情緒的援助要請の帰結が一貫しないのであろうか。ひとつの要因として,情緒的援助要請時にもつ援助者への期待が区別されずに検討されてきたことが考えられる(村山&及川, 2005)。
そこで本研究では,中学生が情緒的援助要請を行う際に援助者に対して抱く期待のパターンを明らかにし,援助要請後のストレス状態の短期的変化が期待の個人差によって異なるか否かを探索的に検討する。
方 法
データ収集の方法
対象:首都圏A中学校,東北地方B中学校の1~3年生 約1,100名
時期:2017年10月および11月
方法:学校での一斉実施による質問紙調査
分析:潜在プロフィル分析
分析の方針
1)潜在クラスモデルの検討
Time2で測定した情緒的援助要請時の期待尺度より,5つの下位尺度得点の各平均を標準化し,潜在プロフィル分析を行う。クラス数の決定はブートストラップ法による。
2)各変数の平均のクラス間差の検討
クラスによって,援助要請行動やストレス状態等の変数に差が見られるかを一要因分散分析で検討する。有意となった場合は,Tukey HSDの多重比較分析(5%水準)により,その内容を確認する。
結 果
有効回答者は,Time1・Time2でデータがマッチング可能であり,また,調査期間中に何らかの悩みに対処した経験のある517名(男子217名,女子300名)である。先行研究に倣い,分析は性別および悩みの領域別に回答者を4群に分類して実施した。本発表は心理・社会的悩みをもつ生徒に焦点を当てる。
情緒的援助要請時の期待によるクラス分け
潜在プロフィル分析により,女子は6クラス,男子は5クラスモデルが採用された。
ストレス変化のクラス間差
男女共に,援助要請行動のクラス間差は見られなかった。男子において,全ての期待が1.5SD以上高い「期待過剰群」のみ,Time1からTime2のストレスが上昇。また,女子の「期待高群」は,受けた援助に対する否定的評価が高かった。
考 察
援助要請行動,悩みの統制可能性や影響性,愛着スタイルにクラス間差がないことから,「期待過剰群」や「期待高群」で見られたネガティブな事象は,本人の中で援助に期待するものが明確ではなく,相手の反応を受けて混乱やストレスが生じたことではないかと考えられる。