[PA31] 現職教員と教員志望学生の授業観に関する研究(3)
取得希望免許状および講義受講経験による違いに関する検討
キーワード:授業観, 取得希望免許状, 講義受講経験
問題と目的
本研究の目的は,現職教員と教員志望学生の授業観のうち,大学1年生を対象とし,以下の事項を検討することである。
1) 小学校免許状取得希望者―他校種免許状取得希望者間における授業観の違い
2) 講義受講前後(学習/学習指導に係る教職科目受講前後)での授業観の違い
林ら(2018)では,上記のうち,2)の点に関する検討を行った。その際,藤田ら(2018)において見いだされた下位尺度ごとにt検定による群間の比較検討を行ったところ,「知識獲得」において,受講後(7月)の方が厳しめの評定を行っていたのに加え,「児童生徒の積極的関与」においても,受講後(7月)の方が厳しめの評定を行う傾向が見られた。また,「知識獲得」における3項目,「児童生徒の積極的関与」における4項目で,受講後の評定値が低くなったことから,受講前に比べて厳しめの評定を行っていることが考えられる。
しかしながら,林ら(2018)の結果は,これらの傾向が取得希望免許状の校種によって異なるのかどうかについてまでは検討していなかった。
そこで本研究では,取得希望免許状の校種(小学校―他校種(中学校/高等学校))によって授業観の変容の様相に何らかの違いが見られるのかどうかを検討する。
方 法
調査参加者 研究(2)に同じ
材料 研究(1)(2)に同じ
手続き 調査は,2017年4月~7月にかけて,心理学関係の授業(発達と学習に関わる授業)の一部を利用し,集団で行われた。4月の授業において,授業観をたずねるための質問紙調査を実施した。その際,回答は任意であり,本調査に同意をした者だけが回答するよう求めた(この時点では,受講者は学習/学習指導に関する授業の受講経験はなかった)。同様の調査は7月(学習/学習指
導に関する授業の受講後)にも行われた。本研究では,4月および7月に行われた調査を分析対象とした。
結果と考察
藤田ら(2018)で見出された下位尺度構造に基づき,下位尺度ごとに,取得免許状の校種(小学校―他校種)×講義受講時期(4月/7月)の2要因分散分析(混合計画)を行った。その結果,「知識獲得(第2因子)」において,授業受講時期の主効果が有意であり(F(1,131)=4.92 p<.05),7月の評定値の方が4月に比べて低くなった。また,「児童生徒の積極的関与(第1因子)」においては授業受講前後の主効果が有意傾向を示し(F(1,131)=2.87 p<.10),7月の評定値の方が4月に比べて低くなる傾向が見られた。一方,取得免許状の主効果,交互作用は有意ではなかった。
これらの点を踏まえると,本研究参加者の場合,取得希望免許状の種類にかかわらず,授業受講後(7月)の方が,児童生徒の積極的関与についての評定を厳しめに行っていることが考えられる。また,児童生徒の積極的関与についても,授業受講後の方が評定を厳しめに行う傾向が見られると考えられる。
本研究の目的は,現職教員と教員志望学生の授業観のうち,大学1年生を対象とし,以下の事項を検討することである。
1) 小学校免許状取得希望者―他校種免許状取得希望者間における授業観の違い
2) 講義受講前後(学習/学習指導に係る教職科目受講前後)での授業観の違い
林ら(2018)では,上記のうち,2)の点に関する検討を行った。その際,藤田ら(2018)において見いだされた下位尺度ごとにt検定による群間の比較検討を行ったところ,「知識獲得」において,受講後(7月)の方が厳しめの評定を行っていたのに加え,「児童生徒の積極的関与」においても,受講後(7月)の方が厳しめの評定を行う傾向が見られた。また,「知識獲得」における3項目,「児童生徒の積極的関与」における4項目で,受講後の評定値が低くなったことから,受講前に比べて厳しめの評定を行っていることが考えられる。
しかしながら,林ら(2018)の結果は,これらの傾向が取得希望免許状の校種によって異なるのかどうかについてまでは検討していなかった。
そこで本研究では,取得希望免許状の校種(小学校―他校種(中学校/高等学校))によって授業観の変容の様相に何らかの違いが見られるのかどうかを検討する。
方 法
調査参加者 研究(2)に同じ
材料 研究(1)(2)に同じ
手続き 調査は,2017年4月~7月にかけて,心理学関係の授業(発達と学習に関わる授業)の一部を利用し,集団で行われた。4月の授業において,授業観をたずねるための質問紙調査を実施した。その際,回答は任意であり,本調査に同意をした者だけが回答するよう求めた(この時点では,受講者は学習/学習指導に関する授業の受講経験はなかった)。同様の調査は7月(学習/学習指
導に関する授業の受講後)にも行われた。本研究では,4月および7月に行われた調査を分析対象とした。
結果と考察
藤田ら(2018)で見出された下位尺度構造に基づき,下位尺度ごとに,取得免許状の校種(小学校―他校種)×講義受講時期(4月/7月)の2要因分散分析(混合計画)を行った。その結果,「知識獲得(第2因子)」において,授業受講時期の主効果が有意であり(F(1,131)=4.92 p<.05),7月の評定値の方が4月に比べて低くなった。また,「児童生徒の積極的関与(第1因子)」においては授業受講前後の主効果が有意傾向を示し(F(1,131)=2.87 p<.10),7月の評定値の方が4月に比べて低くなる傾向が見られた。一方,取得免許状の主効果,交互作用は有意ではなかった。
これらの点を踏まえると,本研究参加者の場合,取得希望免許状の種類にかかわらず,授業受講後(7月)の方が,児童生徒の積極的関与についての評定を厳しめに行っていることが考えられる。また,児童生徒の積極的関与についても,授業受講後の方が評定を厳しめに行う傾向が見られると考えられる。