日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-78)

2018年9月15日(土) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PA32] 大学生における遅刻に対する態度および授業観が遅刻に及ぼす影響

安正鎬1, 常峰咲彩#2, 成澤元3, 高橋敏治#4 (1.法政大学大学院, 2.株式会社マルイチ産商, 3.公益財団法人 神経研究所, 4.法政大学大学院)

キーワード:遅刻, 遅刻に対する態度, 大学授業観

問題と目的
 大学おいて学生が授業に遅れて来ることはまれな場面ではない。では,大学生の授業への遅刻にはどのような要因が影響しているだろうか。金子・小暮(2005),金城・富元(2015)によると,大学生の授業への遅刻理由には,「寝坊」,「時間の逆算が甘い」,「出か開ける前に何か他の幼児を始めてしまう」などの単純な自己責任に加え,「先生が遅刻に厳しくない」,「必修の授業ではない」など,大学生個々人の授業観が遅刻理由に反映されていることがわかる。本調査では,大学生を調査対象として,普段の遅れに対する態度とともに,大学生の授業観を調べることにより,大学生の授業に対する遅刻の要因を検討することにした。

方  法
調査対象者 大学生220名が調査に参加した。このうち,不備のあった者を除く201名(男性76名,女性123名,不明2名)を分析対象とした。なお,因子分析以外は,性別が不明であった2名を除く199名を分析対象とした。
調査実施期間 2017年10月20日から31日まで質問紙調査を行った。
質問紙の構成 (a)フェイスシート:性別と居住形態の記入を求めた。(b)遅刻に対する態度尺度:遅刻に対する態度の関連する37項目について回答を求めた(川上,2007)。(c)大学授業観尺度:松島・尾崎(2012)の39項目を使用した。(d)二週間の授業の出席状況を記入するシート:2週間の授業への出席状況が記入できるシートを作成し,記入を求めた。その際,「授業開始時に指定の教室にいないこと」を遅刻と定義した。(e)遅刻理由について記入するシート:遅刻があった場合,遅刻理由について回答を求めた。
手続き 授業時間中と,授業時間中に大学内の教室以外にいた大学生に質問紙調査を実施した。質問紙回答は約30分であった。

結  果
 因子分析により,遅刻に対する態度尺度から3因子(自分の遅刻に対する罪悪感,他者の遅刻に対する非難,遅刻の自己責任性のなさ),大学授業観尺度から2因子(自己成長・充実感,義務・退屈感)が得られた。遅刻に関しては,2週間の授業への出席状況から遅刻率を求めたが,分布が正規分布から大きく逸脱しており,遅刻0%に度数が偏っていた。そのため,遅刻は,遅刻の有無に分類した(なし=126,あり=73)。最終的な分析には,遅刻有無を目的変数,参加者の基本属性(性別,学年,居住形態)と上記の5因子を説明変数とする二項ロジスティックを用いた。ロジスティック分析の結果,有意な回帰モデルが得られ(χ²(8)=27.59,p<.01,Nagelkerke R²=.18),性別,他者の遅刻に対する非難,遅刻の自己責任性のなさが,遅刻有無に有意に影響することが分かった。性別では,女性の方が男性より遅刻することが(OR=0.38),他者の遅刻に対する非難では,非難の程度が低いほど遅刻することが示された(OR=0.63)。遅刻の自己責任性のなさでは,自己責任性が弱いほど遅刻することが分かった(OR=2.05)。

考  察
 本調査により,遅刻には性別,そして,遅刻に対する態度の中の,他者の遅刻に対する非難,自己責任性が影響することが分かった。遅刻の予防対策には上記の要因への働きかけが重要であると推察される。遅刻に有意な影響を及ぼさなかった大学生の授業観に関しては,調査時期によって授業観が変容する可能性を考慮し(松島・尾崎,2012),時期別の授業観と遅刻の関連性を再検討する必要があると考えられる。