[PA36] 児童の質問力を向上させるための質問精査指導の効果の検討
探究的に学ぶ自律的な学習者の育成
キーワード:質問力, 探究学習, 自律的な学習
はじめに
児童生徒の「問う力」を育成することは,単なる知識の暗記にとどまらず,物事をより深く考えることにつながる.また,自ら「問い」を持つことで,「知りたい」という気持ちが高まり,探求的な学びを促進し,自ら学ぶ人材を育てることにつながる.
そのため,これまでに児童生徒の「問い」を活用した教育実践が多数行われている.例えば,小山・八木橋(2016)は,小学校の道徳の授業を2コマ構成で行った.まず,1コマ目に教師が「泣いた赤おに」を朗読し,児童に問いを生成してもらった.1コマ目と2コマ目の間には数日間あったため,その間に教師は,同様の種類の「問い」を生成した児童同士を同じグループにした表を作成した.
2コマ目の授業では,児童は同様の問いを作成したグループで「話し合い活動」を行った.例えば,グループAでは「赤おにが人間となかよくなりたかったのはどうしてか」,グループBでは「やさしい赤おにが怒ったのはどうしてか」グループCでは「なぜ青おには自分をぎせいにして,赤おにに人間のともだちを作ってあげたのか」について議論した.
問題・目的
小山・八木橋(2016)実践では児童から出た「問い」の精選を教師が行っており,話し合うべき問いとそうではない問いを見極めるというプロセスを児童が体験していない.そのため,「どのような問いがみんなで考えるのに適している「問い」で,どのような「問い」が話し合いに適していないのかを考える機会がなく,児童の「問い」を精査するスキルを伸ばせていない.
そこで,本研究では,教師主導でみんなで考えるべき「問い」とそうではない「問い」を考えることを児童が体験することで,本題とは無関係の問いが減少し,より適切な問いを児童が生成できるようになるか検討を行った.
方 法
参加者:小学校1年生の3クラス(計97名)
教師が児童に問いの精査のモデルを示す授業を次のように行った後,問いを生成してもらった.
指導法:
クラスA(正・誤事例と根拠):教師が話し合いに適した問いと,話し合いに適さない問いの両方の例を示すとともに,その理由を述べる.
クラスB(正事例と根拠):教師が話し合いに適した問いの例とともに,その理由を述べる.話し合いに適さない問いの例は示さない.
クラスC(正事例のみ):教師が話し合いに適した問いの例を示すのみ.その理由は述べない.
結 果
児童が生成した教材と関連する正質問(例:うさぎさんは,ねこさんに「いや」て言われたとき,どんな気もちだったの)は,クラスAが47個,クラスBが61個,クラスCが74個であった.教材の本質とは無関係な質問(例:なぜぞうさんはだいえっとしないのだろう,なんでりすとねこはかみのけがないの?等)は,クラスAが3個,クラスBが6個,クラスCが17個であった(Figure 1)
考 察
教師が問いの正事例と誤事例の両方の事例を示し,その理由を説明することで,児童が本題とは無関係な問いを発することが少なくなり,問いを精査するスキルがつくことが示された.ただし,小学校低学年の児童の自由な質問生成を教師が誘導して,無関係な問いを制限することで,弊害がないか,慎重に検討する必要がある.
付 記
本研究はJSPS科研費15H01976の助成を受けた。
児童生徒の「問う力」を育成することは,単なる知識の暗記にとどまらず,物事をより深く考えることにつながる.また,自ら「問い」を持つことで,「知りたい」という気持ちが高まり,探求的な学びを促進し,自ら学ぶ人材を育てることにつながる.
そのため,これまでに児童生徒の「問い」を活用した教育実践が多数行われている.例えば,小山・八木橋(2016)は,小学校の道徳の授業を2コマ構成で行った.まず,1コマ目に教師が「泣いた赤おに」を朗読し,児童に問いを生成してもらった.1コマ目と2コマ目の間には数日間あったため,その間に教師は,同様の種類の「問い」を生成した児童同士を同じグループにした表を作成した.
2コマ目の授業では,児童は同様の問いを作成したグループで「話し合い活動」を行った.例えば,グループAでは「赤おにが人間となかよくなりたかったのはどうしてか」,グループBでは「やさしい赤おにが怒ったのはどうしてか」グループCでは「なぜ青おには自分をぎせいにして,赤おにに人間のともだちを作ってあげたのか」について議論した.
問題・目的
小山・八木橋(2016)実践では児童から出た「問い」の精選を教師が行っており,話し合うべき問いとそうではない問いを見極めるというプロセスを児童が体験していない.そのため,「どのような問いがみんなで考えるのに適している「問い」で,どのような「問い」が話し合いに適していないのかを考える機会がなく,児童の「問い」を精査するスキルを伸ばせていない.
そこで,本研究では,教師主導でみんなで考えるべき「問い」とそうではない「問い」を考えることを児童が体験することで,本題とは無関係の問いが減少し,より適切な問いを児童が生成できるようになるか検討を行った.
方 法
参加者:小学校1年生の3クラス(計97名)
教師が児童に問いの精査のモデルを示す授業を次のように行った後,問いを生成してもらった.
指導法:
クラスA(正・誤事例と根拠):教師が話し合いに適した問いと,話し合いに適さない問いの両方の例を示すとともに,その理由を述べる.
クラスB(正事例と根拠):教師が話し合いに適した問いの例とともに,その理由を述べる.話し合いに適さない問いの例は示さない.
クラスC(正事例のみ):教師が話し合いに適した問いの例を示すのみ.その理由は述べない.
結 果
児童が生成した教材と関連する正質問(例:うさぎさんは,ねこさんに「いや」て言われたとき,どんな気もちだったの)は,クラスAが47個,クラスBが61個,クラスCが74個であった.教材の本質とは無関係な質問(例:なぜぞうさんはだいえっとしないのだろう,なんでりすとねこはかみのけがないの?等)は,クラスAが3個,クラスBが6個,クラスCが17個であった(Figure 1)
考 察
教師が問いの正事例と誤事例の両方の事例を示し,その理由を説明することで,児童が本題とは無関係な問いを発することが少なくなり,問いを精査するスキルがつくことが示された.ただし,小学校低学年の児童の自由な質問生成を教師が誘導して,無関係な問いを制限することで,弊害がないか,慎重に検討する必要がある.
付 記
本研究はJSPS科研費15H01976の助成を受けた。