[PA46] 乳児用液体ミルクが母親の育児負担感の軽減に及ぼす効果1
韓国の場合
キーワード:乳児用液体ミルク, 育児負担, 韓国
はじめに
日本において,現在,乳児用液体ミルクの販売の解禁を厚生労働省の委員会が検討している。現時点において,乳児用液体ミルクは,欧米,韓国で販売されている。液体ミルクは,保護者の育児負担の軽減につながるとともに,災害時に役に立つことが見込まれている。
そこで本稿では,販売開始から10年以上経った韓国の母親を対象に,液体ミルクをどのように使用してきたか,育児負担の軽減につながったかについて質問紙調査を行った結果を報告する。
方 法
(1)調査対象者
韓国・麗水市内の幼稚園,保育所に子どもを通わせている母親453名。
(2)調査手続き
無記名,自記式の質問紙を配布し,留置法によって回収した。調査時期は2018年1月であった。本研究は,筑波大学医学医療系医の倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:1244)。
結果と考察
子ども(複数いる場合には,最も年齢の小さい子どもについて回答)が授乳期に飲んでいたものを尋ねた結果(複数回答),粉ミルク(71%),母乳(69%)が多く,液体ミルクを飲ませていた人は11%のみであった。その中で子どもに最も多く飲ませていたものを尋ねたところ,液体ミルクを挙げた人は7%に過ぎなかった。
子どもが授乳を必要とする年齢であると仮定して,液体ミルクをどの程度使用したいかを7段階のリッカート尺度で尋ねた(7に近いほど使用したい程度が高い)。その結果,平均値は3.22(SD=1.46)であり,全体的にそれほど高くなかった。また,子どもに飲ませるならば,どのように使用するかを尋ねたところ,「外出時のみ」が最も多く(34%),「災害などの緊急時のみ」が次いだ(18%)。「日常的に使う」と答えた人は5%のみであった。
液体ミルクのメリット,デメリットを5段階のリッカート尺度で尋ねた。その結果,「外出するときに粉ミルクよりも持ち物を減らすことができる」(4.22),「外出時にお湯を提供してもらえる場所を探さなくてよい」(4.16),「ミルクを作る時の手間がかからない」(4.15),「粉ミルクを作る場所がないところ(例えば,電車の中など)で,手軽に飲ませることができる」(4.15),「子どもがミルクをほしがったときに,子どもを待たせずに飲ませることができる」(4.10)ことが評価されていた。
一方,「粉ミルクに比べて値段が高い」(3.91),「液体ミルクは保存期間が短い」(3.74),「液体ミルクには添加物が含まれている」(3.60)がデメリットと考えられていた。
液体ミルクの使用と母親の育児負担の軽減との関係に関する意見についてどの程度賛成するかを5段階のリッカート尺度で尋ね,液体ミルクの使用経験の有無によって比較した。その結果,液体ミルクを使用した経験のある人の方が使用した経験のない人に比べて有意に「液体ミルクを使用することによって保護者の育児負担が減る」と考えていた(あり群:M=3.85,SD=1.01;なし群:M=3.20,SD=1.08,t(429)=3.86,p<.01)。しかし,「液体ミルクを使用することによって,母親の職場復帰が早くできる」ことには両群ともに同意していなかった(あり群:M=2.38,SD=1.39;なし群:M=2.70,SD=1.15,t(425)=1.76,n.s.)。また,「液体ミルクを子どもに飲ませるのは,保護者が育児の手を抜いているように他の人から見られる不安がある」については,両群ともに否定的であった(あり群:M=3.17,SD=1.17;なし群:M=2.99,SD=1.18,t(424)=0.96,n.s.)。
付 記
本研究は平成29年度公益財団法人 すかいらーくフードサイエンス研究所による助成で行った。
日本において,現在,乳児用液体ミルクの販売の解禁を厚生労働省の委員会が検討している。現時点において,乳児用液体ミルクは,欧米,韓国で販売されている。液体ミルクは,保護者の育児負担の軽減につながるとともに,災害時に役に立つことが見込まれている。
そこで本稿では,販売開始から10年以上経った韓国の母親を対象に,液体ミルクをどのように使用してきたか,育児負担の軽減につながったかについて質問紙調査を行った結果を報告する。
方 法
(1)調査対象者
韓国・麗水市内の幼稚園,保育所に子どもを通わせている母親453名。
(2)調査手続き
無記名,自記式の質問紙を配布し,留置法によって回収した。調査時期は2018年1月であった。本研究は,筑波大学医学医療系医の倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:1244)。
結果と考察
子ども(複数いる場合には,最も年齢の小さい子どもについて回答)が授乳期に飲んでいたものを尋ねた結果(複数回答),粉ミルク(71%),母乳(69%)が多く,液体ミルクを飲ませていた人は11%のみであった。その中で子どもに最も多く飲ませていたものを尋ねたところ,液体ミルクを挙げた人は7%に過ぎなかった。
子どもが授乳を必要とする年齢であると仮定して,液体ミルクをどの程度使用したいかを7段階のリッカート尺度で尋ねた(7に近いほど使用したい程度が高い)。その結果,平均値は3.22(SD=1.46)であり,全体的にそれほど高くなかった。また,子どもに飲ませるならば,どのように使用するかを尋ねたところ,「外出時のみ」が最も多く(34%),「災害などの緊急時のみ」が次いだ(18%)。「日常的に使う」と答えた人は5%のみであった。
液体ミルクのメリット,デメリットを5段階のリッカート尺度で尋ねた。その結果,「外出するときに粉ミルクよりも持ち物を減らすことができる」(4.22),「外出時にお湯を提供してもらえる場所を探さなくてよい」(4.16),「ミルクを作る時の手間がかからない」(4.15),「粉ミルクを作る場所がないところ(例えば,電車の中など)で,手軽に飲ませることができる」(4.15),「子どもがミルクをほしがったときに,子どもを待たせずに飲ませることができる」(4.10)ことが評価されていた。
一方,「粉ミルクに比べて値段が高い」(3.91),「液体ミルクは保存期間が短い」(3.74),「液体ミルクには添加物が含まれている」(3.60)がデメリットと考えられていた。
液体ミルクの使用と母親の育児負担の軽減との関係に関する意見についてどの程度賛成するかを5段階のリッカート尺度で尋ね,液体ミルクの使用経験の有無によって比較した。その結果,液体ミルクを使用した経験のある人の方が使用した経験のない人に比べて有意に「液体ミルクを使用することによって保護者の育児負担が減る」と考えていた(あり群:M=3.85,SD=1.01;なし群:M=3.20,SD=1.08,t(429)=3.86,p<.01)。しかし,「液体ミルクを使用することによって,母親の職場復帰が早くできる」ことには両群ともに同意していなかった(あり群:M=2.38,SD=1.39;なし群:M=2.70,SD=1.15,t(425)=1.76,n.s.)。また,「液体ミルクを子どもに飲ませるのは,保護者が育児の手を抜いているように他の人から見られる不安がある」については,両群ともに否定的であった(あり群:M=3.17,SD=1.17;なし群:M=2.99,SD=1.18,t(424)=0.96,n.s.)。
付 記
本研究は平成29年度公益財団法人 すかいらーくフードサイエンス研究所による助成で行った。