日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-78)

2018年9月15日(土) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PA48] ポジティブ教育の基礎研究(1) 

品性の強み質問紙CST24の開発と高校生の特徴

島井哲志1, 竹橋洋毅2, 宇惠弘3, 津田恭充4, 堀田千絵5 (1.関西福祉科学大学, 2.関西福祉科学大学, 3.関西福祉科学大学, 4.関西福祉科学大学, 5.関西福祉科学大学)

キーワード:ポジティブ心理学, 品性の強み, 高校生

 ポジティブ心理学は,心のポジティブな側面に関する研究実践を推進する心理学上の運動である(島井, 2006)。最近では,ポジティブ心理学を用いた介入実践が進められ,この実践のひとつとして,ポジティブ教育があり,オーストラリアのGeelong Grammar Schoolなど,多くの学校で採用され始めている(Seligmanら, 2009)。
 多くの実践で採用されているのは,SeligmanがFlourish (2011)で提案しているPERMA,すなわち,ポジティブ感情,エンゲイジメント,関係性,人生の意義,達成である。それを否定するわけではないが,具体的な目標や評価のために,また,わが国の実情に合わせた展開のためには,基礎的研究に基づいた実践である必要があると考えている。
 ポジティブ教育で重要と考えられる内容のひとつに,品性の強み(character strengths)があり,Petersonらによって24種類の強みのハンドブックが刊行され(2004),測定尺度VIA-ISも開発されている(日本版は,大竹ら, 2005)。しかし,この尺度は240項目と項目数が多く,研究のために使用するのは容易ではない。
 そこで,ここでは,24種類の品性の強みを簡便に評価し,強みをポジティブ教育やポジティブ心理学介入などの領域で活用することをめざして,24項目の品性の強み質問紙CST24を作成し,高校生の特徴を大学1・2年生と比較検討した。

方  法
 調査は,インターネット調査会社によって実施し,対象者は,高校生男子429名,女子708名,計1137名であった。大学生は男子436名女子665名計1101名であった。調査内容は,上記CST24のほか,主観的幸福感尺度SHS(島井, 2004),人生の意味尺度MLQ(Stegerら, 2008),感謝尺度GQ6(Hatoriら, 2014)と知能観(及川, 2005) であった。CST24は,VIA日本版開発時の他者評価ほかを参考に,各強みの名称の次に強みのある人の特徴を記述し,ランダムに提示して,自分について,「まったくあてはまらない」~「非常によくあてはまる」の7件法で回答を求めた(津田ら, 2018)。
 なお,研究計画は,所属の研究倫理委員会の承認を受けた(承認番号17-58)。

結果と考察
 Figure 1に,高校生の24の強みの評価点の高い方から示した。審美心,好奇心,公平性などが上位に,リーダーシップ,勇気,熱意が下位であった。ユーモアだけは高校生が有意に高かったが,判断力,思慮深さ,自己制御,感謝心,忠誠心,勤勉性,正直,向学心,勇気では大学生が高かった。
 強み24項目の信頼性係数はα=.936であった。最尤法プロマックス回転による探索的因子分析の結果,累積説明率は47.16%で4因子が抽出された。第1因子は,勇気,リーダーシップ,独創性,判断力,見通しなど9項目で知力,第2因子は自己制御,思慮深さ,謙虚など6項目で統制力,第3因子は希望,審美心など5項目で人間力,第4因子は親切心,親密性など4項目で対人力と命名した。これらは,VIAの6分類とは異なるが,VIAの因子分析による結果の4因子(Brdar & Kshdan,2009)におおむね対応したものであると考えられた。

付  記
本研究に公開するべき利益相反はありません。
本研究は,部分的に,平成29・30年度関西福祉科学大学共同研究費,およびJSPS科学研究費補助金基盤研究(B)16H03743による。