[PB01] 死別経験による成長感および死の不安と感情状態
キーワード:死別経験, 成長感, 死の不安
目 的
青年期後期の大学生にとって死は,余命や寿命という点からすれば現実感には乏しい。しかし,二人称としての死,すなわち身近な他者との死別経験は,30~40%に達すると推測され(増田,2011他),その影響は少なくない。死別を乗り越えることによって,生への感謝(安藤ら,2004)や価値観の変化もみられるという(やまだ,1999)。他方,日常的な死への不安の強さは,感情状態によって異なってくる可能性がある。
今回は,死別経験による変化を成長感の観点から調査するとともに,死への不安の強さが感情状態へどう影響するかを検討するために計画した。
方 法
調査時期および対象
本調査は,2015年7月に実施し,最終的な分析対象は,女子大学生1年生から4年生の184名で平均年齢は19.0歳であった。なお,未記入箇所があったものと「死」がテーマとなっているため回答に際して,以下の取り扱いを行った。すなわち,回答に際して答えたくない場合は,フェイスシートにマークさせ回答を求めなかった。未記入等分析から除いた22通のうち10通がこれに該当した。
調査内容
調査内容は,死別経験に関わる項目といくつかの領域の項目から成立していた。今回分析の対象とした領域は,15項目からなる「死の不安尺度(DAS)」(Templer,1970;4件法),15項目からなる死別による経験を通しての「成長感尺度」(宮島ら,2011;5件法)と24項目からなる「一般感情尺度」(小川ら,2000;4件法)であった。
結果と考察
死別経験による成長感
死別による成長感尺度について,下位の5つの領域スコア,合計スコアおよび各項目について,3つの死別経験を独立変数として分散分析を実施した。ここでの死別経験は以下の通りとした。死別経験を有するものに対しては,「過去に最も強い悲しみをもたらした人やペットとの死別経験」とし,そうした死別経験のないものには,特定の身内との死別を想定して回答させた。Table 1に示したように,5領域中3つの下位領域で差異が認められた。「死への態度の変化」と「ライフスタイルの変化」の2領域と4項目では想定した死別群が最も高く,ペットとの死別がもっとも低かった。これは,調査時点で改めて死に対峙することによる効果と推測される。反対に残りの「生への感謝」と1項目では,想定した死別群だけが低かった。
つぎに現実の死別経験を有するもののみに限定し,人とペットに分け検討したところ,「死への態度」,「ライフスタイル」および「生への感謝」の3領域と4項目で有意ないしは傾向が認められ,すべてペットとより人との死別を有するものの方が高くなっていた。この分析から有意差のあった項目は,すべて人との死別の方が高くなっており,成長感にとっては,重要な他者との死別が関わる可能性を示唆する結果となった。人との死別の場合,ペットに比べれば必然的に自らの死と直面することになり,現実感の違いが関係したのかもしれない。ただ,個別項目別では15のうち7項目に差異が認められた。
死への不安と感情状態
合計スコアに基づいて,死への不安の高い群と低い群の各々30%(高群;M=45.1,SD=2.79,低群;M=33.1,SD=1.81)に分け,各感情状態の得点の差異を検討した。その結果,肯定的感情では「楽しい」,「充実した」で高群の方が高く,否定的感情では「驚いた」で高かった。安静状態に関しては,「ゆっくりした」,「平穏な」で高群が,「静かな」で低群がそれぞれ高くなっていた。
青年期後期の大学生にとって死は,余命や寿命という点からすれば現実感には乏しい。しかし,二人称としての死,すなわち身近な他者との死別経験は,30~40%に達すると推測され(増田,2011他),その影響は少なくない。死別を乗り越えることによって,生への感謝(安藤ら,2004)や価値観の変化もみられるという(やまだ,1999)。他方,日常的な死への不安の強さは,感情状態によって異なってくる可能性がある。
今回は,死別経験による変化を成長感の観点から調査するとともに,死への不安の強さが感情状態へどう影響するかを検討するために計画した。
方 法
調査時期および対象
本調査は,2015年7月に実施し,最終的な分析対象は,女子大学生1年生から4年生の184名で平均年齢は19.0歳であった。なお,未記入箇所があったものと「死」がテーマとなっているため回答に際して,以下の取り扱いを行った。すなわち,回答に際して答えたくない場合は,フェイスシートにマークさせ回答を求めなかった。未記入等分析から除いた22通のうち10通がこれに該当した。
調査内容
調査内容は,死別経験に関わる項目といくつかの領域の項目から成立していた。今回分析の対象とした領域は,15項目からなる「死の不安尺度(DAS)」(Templer,1970;4件法),15項目からなる死別による経験を通しての「成長感尺度」(宮島ら,2011;5件法)と24項目からなる「一般感情尺度」(小川ら,2000;4件法)であった。
結果と考察
死別経験による成長感
死別による成長感尺度について,下位の5つの領域スコア,合計スコアおよび各項目について,3つの死別経験を独立変数として分散分析を実施した。ここでの死別経験は以下の通りとした。死別経験を有するものに対しては,「過去に最も強い悲しみをもたらした人やペットとの死別経験」とし,そうした死別経験のないものには,特定の身内との死別を想定して回答させた。Table 1に示したように,5領域中3つの下位領域で差異が認められた。「死への態度の変化」と「ライフスタイルの変化」の2領域と4項目では想定した死別群が最も高く,ペットとの死別がもっとも低かった。これは,調査時点で改めて死に対峙することによる効果と推測される。反対に残りの「生への感謝」と1項目では,想定した死別群だけが低かった。
つぎに現実の死別経験を有するもののみに限定し,人とペットに分け検討したところ,「死への態度」,「ライフスタイル」および「生への感謝」の3領域と4項目で有意ないしは傾向が認められ,すべてペットとより人との死別を有するものの方が高くなっていた。この分析から有意差のあった項目は,すべて人との死別の方が高くなっており,成長感にとっては,重要な他者との死別が関わる可能性を示唆する結果となった。人との死別の場合,ペットに比べれば必然的に自らの死と直面することになり,現実感の違いが関係したのかもしれない。ただ,個別項目別では15のうち7項目に差異が認められた。
死への不安と感情状態
合計スコアに基づいて,死への不安の高い群と低い群の各々30%(高群;M=45.1,SD=2.79,低群;M=33.1,SD=1.81)に分け,各感情状態の得点の差異を検討した。その結果,肯定的感情では「楽しい」,「充実した」で高群の方が高く,否定的感情では「驚いた」で高かった。安静状態に関しては,「ゆっくりした」,「平穏な」で高群が,「静かな」で低群がそれぞれ高くなっていた。