日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

2018年9月15日(土) 13:00 〜 15:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB06] 中学生における関係性攻撃動機と共感性との関連

梅津直子1, 濱口佳和2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

キーワード:関係性攻撃, いじめ, 中学生

問題と目的
 攻撃性やいじめの要因として共感性が挙げられる。一般に共感性の乏しさが攻撃性を高めるものと考えられているが,関係性攻撃に関しては一貫した知見が得られていない。共感性と負の関連が示されている一方で(MacEvoy & Leff,2012;Batanova & Loukas,2014),関連が認められなかった研究もある(Burton, Hafetz, & Henninger,2007)。また,共感性を多次元的に測定した場合,共感的関心が関係性攻撃を抑制するのに対し,視点取得は関係性攻撃を促進していた(Batanova & Loukas,2011)。同様に,本邦においても児童の関係性攻撃は,他の攻撃性に比べ,共感性の認知的側面よりもむしろ感情的な能力が欠けていることを示唆されている(山崎・勝間,2008)。しかしながら、関係性攻撃を行う者すべてが認知的共感性が高く、情緒的共感性が乏しいとは一概に言えない。関係性攻撃を行う背景や動機によっても共感性に差異がある可能性がある。よってどのような動機が共感性と関連しているか詳細に検討することとした。

方  法
調査対象者:中学校1~2年生357名(男子177名,女子180名)。
質問項目:①中学生用関係性攻撃動機尺度(梅津・新井,2009)から8下位尺度45項目,5件法。②青年期用多次元的共感性尺度(登張,2003)から「共感的関心(13項目)」「気持ちの想像(5項目)」を使用。共感性の認知面を測定するため長谷川・堀内・鈴木・佐渡(2009)の児童用多次元共感性尺度から「視点取得(9項目)」も併せて使用した。いずれも5件法であった。

結果と考察
 男女別に共感性と関係性攻撃動機の下位尺度ごとの相関係数を算出した(Table 1)。その結果,男子では「気持ちの想像」と「優越感・嫉妬」,「直接コミュニケーション不安」,「防衛・同調」との間に有意な正の関連が見られた。さらに,「直接コミュニケーション不安」では「共感的関心」や「視点取得」とも正の関連が見られた。他方,女子では「共感的関心」と「怒り嫌悪」,「雰囲気」,「快楽追求」との間に負の関連が認められた。
 以上の結果から共感性が高いことによって防衛・同調や直接コミュニケーション不安による動機が高じて関係性攻撃を行うことが示唆された。共感性が高いからといって攻撃が抑制されるとは必ずしもいえず,むしろ関係性攻撃を行う仲間に共感することで同情・同調的に攻撃に加わっている可能性がある。と同時に,相手の感情が推測できるからこそ,相手に不快な思いをさせるのではないかと懸念し,関係性攻撃という間接的な手段を用いて自身の気持ちを伝えようとしている可能性がある。いじめや関係性攻撃の介入においてはこのような点を考慮する必要があると思われる。