日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

2018年9月15日(土) 13:00 〜 15:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB35] 教育実習生の省察の変容(2)

岩澤美咲1, 高橋知己2 (1.上越教育大学大学院, 2.上越教育大学)

キーワード:教育実習, 省察, 実習記録ノート

問題の所在と目的
 Schön(1983)は教師の省察の重要性を指摘し,「行為の中の省察」の概念を構築した。湯口(2015)は,「教育実習においては,子どもと毎日関わる中で発現する出来事との出会いが経験となり,そこでどのような思考をして行動したかという「行為」の変化を丁寧に点検すること」が求められると指摘した。本研究では,教育実習生に焦点を当て,彼らの成長の過程を教育実習中の出来事や反省等を毎日記入する実習記録ノートにより実習生の視線の変容に注目し,カテゴリーを設定,分析し,実習生の変容過程について検討することを目的とする。

調査及び分析の方法
 教員養成系の大学生3名が行った中学校教育実習(15日間)の実習記録ノート内の経過日及び研究・反省・感想などに関する記述(25,545文字)を分析の対象とした。分析の手続きとしては,① KH Coderを用いて形態素解析を行い,② その分析結果から「外部への視線」と「内部への視線」の2つの枠組みに分類した。外部への視線とは,「記述者が観察する周囲の状況への認識」であり,内部への視線とは,「記述者自身が感じた自らの内面への語りをさす」と定義した。そして,③カテゴリー分析を行った。カテゴリーの分類,設定に当たっては,M-GTA(木下 ,2007)の手法を参考にしながら,1:概念化(文のまとまりで分類),2:カテゴリーの統合(概念を整理),3:確認(分析の経過を指導教員と大学院生で見直し),4:修正,5:再確認,という手順で行った。

結果と考察
 調査の結果からカテゴリーは,Table 1に示したように分類できた。実習の最後に自分の行動や言動を振り返りながら,改めて教職を志す気持ちが強まること,そして教育に対してより真剣に向き合っていくことなどが分かった。教職への意欲や子供との関わりに出現数が多く見られたことからも,教育実習では自分自身や子供と向き合い,省察しながら行動し,さらにその行動を次に活かしていくことが分かった。

引用・参考文献
Donald A. Schön (1983) The Reflective Practitioner: How Professional Think in Action,Basic Books 佐藤学・秋田喜代美(2001)監訳 『専門家の知恵―反省的実践家は行為しながら考える』 ゆみる出版 
湯口雅史(2015) 「反省的実践を内容にもつ教育実習の提案:「参加型教育実習」カリキュラムの可能性」 鳴門教育大学研究紀要 第30巻 pp.367-377.