[PB40] 他者との学習における動機づけ調整
2つの協同場面における検討
キーワード:動機づけ調整, 協同学習, 自己調整学習
問題と目的
近年,わが国では他者との学習が重要視されている(e.g., 文部科学省, 2016)。そのため,そういった他者との学習プロセスを解明し,効果的な学習の促進に資する研究が必要である。
さて,自律的な学習プロセスを扱う自己調整学習分野では,やる気が低下した際に自身のやる気を高めるといった「動機づけ調整」が注目されている(e.g., Miele & Scholer, 2017)。これに関連して,梅本他(印刷中)は,他者との学習場面における動機づけ調整方略を測定する尺度を開発している。しかしながら,他者との学習場面は多様であるため,どのような協同場面でどのような動機づけ調整方略が効果的なのかについてより詳細に検討することが必要であろう。
以上より,本研究では,「テスト勉強」と「プレゼン準備」という2種類の協同場面を取り上げ,それぞれの場面において,動機づけ調整方略と行動的エンゲージメントとの関連を検討する。
方 法
手続き
場面想定による2パターンの質問紙を作成した(テスト勉強場面,プレゼン準備場面)。3つの大学のそれぞれの講義で,2つの質問紙をランダムに配布した。277名のうち,当該場面の経験がある223名(テスト勉強115名,プレゼン準備108名;男性44名,女性179名)を分析対象とした。
調査内容
梅本他(印刷中)の尺度を用いて「動機づけ調整方略」を測定した(38項目,5件法)。この尺度には5つの下位尺度が含まれた。次に,梅本他(印刷中)の尺度を用いて行動的エンゲージメントを測定した(5項目,5件法)。さらに,統制変数として,「協同学習の経験」(1項目5件法)と「協同学習の好み」(1項目4件法)を測定した。
結果と考察
まず,下位尺度ごとにα係数を算出したところ,いずれも.90から.75の範囲であったため,それぞれの項目の加算平均を用いて下位尺度得点を構成した。次に,場面別に,5つの動機づけ調整方略を独立変数,協同学習の経験と好みを統制変数,行動的エンゲージメントを従属変数とした重回帰分析を行った(Table 1)。
まず,積極的交流方略は,両場面においてその有用性が示された。特に,他の方略の偏回帰係数との比較から,テスト勉強において,他者と積極的に交流しながらやる気を高めることが重要である可能性が示された。次に,義務感高揚方略と学習活動構造化方略については,プレゼン準備場面において有用である可能性が示された。テスト勉強に比べて,プレゼンの準備は,作業を分担しながらみんなで1つのものを作り上げる要素が強いと考えられる。そのため,自分がやらなければならないといった義務感を意識したり,計画や役割分担によって活動を構造化したりしてやる気を高めることがより効果的であると考えられる。
以上より,協同場面によって,効果的な動機づけ調整方略が異なる可能性が示された。今後は,作業中のより状況的な方略の適用などについても詳細に検討していく必要がある。
近年,わが国では他者との学習が重要視されている(e.g., 文部科学省, 2016)。そのため,そういった他者との学習プロセスを解明し,効果的な学習の促進に資する研究が必要である。
さて,自律的な学習プロセスを扱う自己調整学習分野では,やる気が低下した際に自身のやる気を高めるといった「動機づけ調整」が注目されている(e.g., Miele & Scholer, 2017)。これに関連して,梅本他(印刷中)は,他者との学習場面における動機づけ調整方略を測定する尺度を開発している。しかしながら,他者との学習場面は多様であるため,どのような協同場面でどのような動機づけ調整方略が効果的なのかについてより詳細に検討することが必要であろう。
以上より,本研究では,「テスト勉強」と「プレゼン準備」という2種類の協同場面を取り上げ,それぞれの場面において,動機づけ調整方略と行動的エンゲージメントとの関連を検討する。
方 法
手続き
場面想定による2パターンの質問紙を作成した(テスト勉強場面,プレゼン準備場面)。3つの大学のそれぞれの講義で,2つの質問紙をランダムに配布した。277名のうち,当該場面の経験がある223名(テスト勉強115名,プレゼン準備108名;男性44名,女性179名)を分析対象とした。
調査内容
梅本他(印刷中)の尺度を用いて「動機づけ調整方略」を測定した(38項目,5件法)。この尺度には5つの下位尺度が含まれた。次に,梅本他(印刷中)の尺度を用いて行動的エンゲージメントを測定した(5項目,5件法)。さらに,統制変数として,「協同学習の経験」(1項目5件法)と「協同学習の好み」(1項目4件法)を測定した。
結果と考察
まず,下位尺度ごとにα係数を算出したところ,いずれも.90から.75の範囲であったため,それぞれの項目の加算平均を用いて下位尺度得点を構成した。次に,場面別に,5つの動機づけ調整方略を独立変数,協同学習の経験と好みを統制変数,行動的エンゲージメントを従属変数とした重回帰分析を行った(Table 1)。
まず,積極的交流方略は,両場面においてその有用性が示された。特に,他の方略の偏回帰係数との比較から,テスト勉強において,他者と積極的に交流しながらやる気を高めることが重要である可能性が示された。次に,義務感高揚方略と学習活動構造化方略については,プレゼン準備場面において有用である可能性が示された。テスト勉強に比べて,プレゼンの準備は,作業を分担しながらみんなで1つのものを作り上げる要素が強いと考えられる。そのため,自分がやらなければならないといった義務感を意識したり,計画や役割分担によって活動を構造化したりしてやる気を高めることがより効果的であると考えられる。
以上より,協同場面によって,効果的な動機づけ調整方略が異なる可能性が示された。今後は,作業中のより状況的な方略の適用などについても詳細に検討していく必要がある。