日本教育心理学会第60回総会

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ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

2018年9月15日(土) 13:00 〜 15:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB41] 小学生と大学生の協働による身体的表現活動をとおしたレジリエンスの変化について

教員養成課程における身体的表現活動プログラム実践から

大橋節子1, 前田一誠2, 伊藤美奈子3 (1.IPU・環太平洋大学, 2.IPU・環太平洋大学, 3.奈良女子大学)

キーワード:身体的表現活動, レジリエンス, 教員養成課程

問題と目的
 本研究は,不登校経験のある高校生が身体的表現活動によって変容した先行研究(大橋2015,2016)を,教員養成課程に在籍する大学生と公立小学校児童へ対象を拡げ,大学生と小学生とが協働で身体的表現活動を行うことにより,レジリエンス(精神的回復力)の向上をめざしたものである。
 誰もが抱く「自分を変えたい」「現状を変えよう」とする自己概念の変容や,「学校は楽しい活動の場」となる行動の変容につながる身体的表現教育(表現活動)を行う事が,どのように自己の成長に繋がり,これまで,さまざまな生活場面で感じていた精神面の脆さ,自信のなさ,健康面の不安が解消されるのか独自の尺度を用いた質問紙及び記述内容の分析調査からの考察を行った。

方  法
調査対象 2016年4月入学で身体的表現活動を行う大学生(37名)と公立小学校児童220名(1~6年生 ※特別支援学級在籍児童を含む)
調査期間 2016年~2017年の2年間
調査方法 
1.自尊感情尺度(東京都版)(伊藤・若本,2010):22項目、4件法。
2.事後レポートにおける記述内容分析
倫理的配慮 事前に調査目的,方法,内容を保護者・生徒に調査内容を伝え,同意が得られた児童・学生に調査を行った。

結果と考察
 大学1年次・2年次に身体的表現活動プログラム実践を行い,その前後で質問紙による調査と活動後のレポート記述内容を分析した。11項目の質問について,合計点を出し、その後,初回の得点を50点とした偏差値にした「心の元気度」得点を構成した。その結果,事前と事後では,元気度が,全体平均で2.5点上昇した。その内,上昇した学生は84%だった。
 「心の元気度」の変化に関連する要因分析を行った。事前と事後で,学生の変容が大きかった項目は,【自己評価・自己受容】【自己主張・自己決定】,【学習的適応】,【コミュニケーション力】,【レジリエンス】の5つであった。これらは,身体的表現活動が「心の元気度」向上に及ぼす要因であり,プログラムに内在しているものと考えられる。本研究で実践したプログラムには,以下のような経験があった。
①身体的表現活動の中で,肯定的な言葉を用いて,学生が自分自身を褒め,認めさせるようなコーチングスタッフの働きかけがあったこと。
②小学生との協働によって,学生に自己主張・自己決定の機会が頻繁にあったこと。
③学生が,小学生に教授するための準備を入念にして臨んだことで,自信をもって接することができたこと。教授するものとしてのプライドをもてたこと。
④言葉だけに頼らないコミュニケーションが図れたこと。小学生からのレスポンスが見えたこと。
⑤3日間というプログラムによって,失敗や挫折の機会と立ち直る機会とがあったこと。
これらのことが,プログラムを開発する上での要素であることも明らかになった。