[PB47] いじりの立場といじり結果の認知との関連
いじる側,いじられる側,第三者の比較
キーワード:人間関係, 対人コミュニケーション, いじり
いじりとは,他者の行動や特徴について言及するコミュニケーション形態の1つである。多くの場合にはポジティブなコミュニケーションであるとされるが,いじりの表現が過激になると不快さが喚起され,場合によってはいじめとして認識される可能性も指摘されている(e.g.,瀧澤ら,2014)。
依然として,いじりがどのような場合に良いものとなり,悪いものとなるのかという,いじりの結果の部分が議論として残されている。関連する知見として,からかいには立場によるギャップがあり,からかう側よりもからかわれる側がネガティブに解釈しやすいというものがある(Kruger et al.,2006)。本研究では,与え手と受け手だけでなく,周囲にいる第三者も加え,立場によるいじり結果の認知の違いを明らかにする。そのために,瀧澤ら(2014)の未発表部分の分析を行う。
方 法
調査対象者 大学生・大学院生・社会人76名(女性54名,男性22名)が調査の対象であった。年齢の平均は21.55歳,標準偏差は3.02であった。
調査内容 いじりに関する3つのエピソードそれぞれを想起し,詳細を回答する調査を実施した。3つは回答の立場が異なっていた。調査対象者自身が「いじる側」「いじられる側」「いじりの場にいたが直接は関与していない第三者側」という3つの立場(以後,いじる,いじられ,第三者)から想起を行った。本稿は調査の一部である,調査対象者自身の態度と反応(以後,いじり結果)を取り上げる。
手続き 1対1の面接,または,集団回答式の質問紙により調査を行った。面接の場合はボイスレコーダーによって回答を記録した。
結 果
分析対象 未回答のエピソードが10個あったため,分析対象となるエピソードは218個(いじる73個,いじられ74個,第三者71個)であった。
カテゴリーの評定 カテゴリー評定の基準を設定し(Table 1),218個の記述それぞれについて評定を行った。評定の際には,参加者自身の態度や反応ではないものは,対象にしないようにした。語句が打ち消し表現(e.g.,~がない,~しない)と共起していた場合は,ポジティブに含まれる語句ならばネガティブに,同意に含まれる語句ならば非同意に含めるようにした。
立場といじり結果の関連 立場によっていじり結果の認知が異なるかどうかを検討した。立場(いじる,いじられ,第三者)×いじり結果(ポジ反応,同意,非同意,ネガ反応)のクロス集計を行い,これらの度数についてコレスポンデンス分析を行った。累積説明率を考慮し,2次元を採択した。第1次元の得点を横軸,第2次元の得点を縦軸として布置した(Figure 1)。結果,いじられる側として想起したエピソードは,いじる側や第三者として想起したエピソードに比べて,ネガティブな結果と近接していた。
考 察
同一の人物から想起されたエピソードでも,立場によって態度が変化することが示された。また,いじられる側には,いじる側や第三者との認識のギャップがみられた。原因として,一定数のいじられる側が被害感情を知覚している可能性,被害感情が記憶に残りやすい可能性などが挙げられる。いずれにしても,いじりは,いじる側や第三者よりも,いじられる側にとって悪い結果を生じさせやすいことを示していると考えられる。
引用文献
Kruger,J.,Gordon,C.L.,& Kuban,J. (2006). JPSP,90,412-425.
瀧澤純・望月正哉・澤海崇文・吉澤英里 (2014). 第33回社会言語科学会研究大会,64-67.
依然として,いじりがどのような場合に良いものとなり,悪いものとなるのかという,いじりの結果の部分が議論として残されている。関連する知見として,からかいには立場によるギャップがあり,からかう側よりもからかわれる側がネガティブに解釈しやすいというものがある(Kruger et al.,2006)。本研究では,与え手と受け手だけでなく,周囲にいる第三者も加え,立場によるいじり結果の認知の違いを明らかにする。そのために,瀧澤ら(2014)の未発表部分の分析を行う。
方 法
調査対象者 大学生・大学院生・社会人76名(女性54名,男性22名)が調査の対象であった。年齢の平均は21.55歳,標準偏差は3.02であった。
調査内容 いじりに関する3つのエピソードそれぞれを想起し,詳細を回答する調査を実施した。3つは回答の立場が異なっていた。調査対象者自身が「いじる側」「いじられる側」「いじりの場にいたが直接は関与していない第三者側」という3つの立場(以後,いじる,いじられ,第三者)から想起を行った。本稿は調査の一部である,調査対象者自身の態度と反応(以後,いじり結果)を取り上げる。
手続き 1対1の面接,または,集団回答式の質問紙により調査を行った。面接の場合はボイスレコーダーによって回答を記録した。
結 果
分析対象 未回答のエピソードが10個あったため,分析対象となるエピソードは218個(いじる73個,いじられ74個,第三者71個)であった。
カテゴリーの評定 カテゴリー評定の基準を設定し(Table 1),218個の記述それぞれについて評定を行った。評定の際には,参加者自身の態度や反応ではないものは,対象にしないようにした。語句が打ち消し表現(e.g.,~がない,~しない)と共起していた場合は,ポジティブに含まれる語句ならばネガティブに,同意に含まれる語句ならば非同意に含めるようにした。
立場といじり結果の関連 立場によっていじり結果の認知が異なるかどうかを検討した。立場(いじる,いじられ,第三者)×いじり結果(ポジ反応,同意,非同意,ネガ反応)のクロス集計を行い,これらの度数についてコレスポンデンス分析を行った。累積説明率を考慮し,2次元を採択した。第1次元の得点を横軸,第2次元の得点を縦軸として布置した(Figure 1)。結果,いじられる側として想起したエピソードは,いじる側や第三者として想起したエピソードに比べて,ネガティブな結果と近接していた。
考 察
同一の人物から想起されたエピソードでも,立場によって態度が変化することが示された。また,いじられる側には,いじる側や第三者との認識のギャップがみられた。原因として,一定数のいじられる側が被害感情を知覚している可能性,被害感情が記憶に残りやすい可能性などが挙げられる。いずれにしても,いじりは,いじる側や第三者よりも,いじられる側にとって悪い結果を生じさせやすいことを示していると考えられる。
引用文献
Kruger,J.,Gordon,C.L.,& Kuban,J. (2006). JPSP,90,412-425.
瀧澤純・望月正哉・澤海崇文・吉澤英里 (2014). 第33回社会言語科学会研究大会,64-67.