日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

2018年9月15日(土) 13:00 〜 15:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB57] 教室場面での援助提供の実態

特別な教育的支援を要する児童に援助提供する周囲児に着目して

杉岡千宏1, 橋本創一2, 熊谷亮3, 三浦巧也4 (1.東京学芸大学, 2.東京学芸大学, 3.福岡教育大学, 4.東京農工大学)

キーワード:援助提供, 小学校, 周囲児

目  的
 教室場面において,特別な教育的支援を要する児童に対して,周囲が過剰に手助けをしてしまうという姿がみられる。しかし,理にかなった支援が必要であり,多大な援助提供は障壁ともなりうる。よって,手助けが必要な場面では周囲は状況把握・判断・表現のどの段階につまずきがあるのかを見極めた上で,援助提供することが求められるだろう。本報告では特別な教育的支援を要する児童に対して援助提供する周囲児はどのような児童なのかについて,調査し実態を明らかにする。

方  法
対象者 2017年1月に公立小学校の特別支援教育コーディネーターの教員(特別支援学級を除く)を対象に質問紙調査を行った。回収した質問紙は261部であった。
調査内容 特別な教育的支援を要する児童の周囲児の援助提供に関する質問項目に対して,回答を求めた。特別な教育的支援を要する児童の中で任意に1名(以降,Aさんとする)を挙げてもらい,Aさんの特性を7つの項目から選択してもらう(複数回答可)。7項目とは,「1.暴言暴力がある」「2.集中力が続かない」「3.友だちにちょっかいを出す」「4.自己中心的な行動をしてしまう」「5.こだわりが多くイライラしてしまう」「6.個別の学習支援が必要」「7.その他」,である。次に,Aさんの周囲児に関して質問した。周囲児に関する質問は3点ある。1点目は周囲児の援助提供の有無について回答を求めた。周囲児が援助提供すると回答した場合に2,3点目に回答を求めた。2点目は,周囲児が援助提供する際の状況について①教師が「手助けしてあげて」と言うと援助する②Aさんが「助けて」と言うと援助する③Aさんが「助けて」と言わなくても進んで援助する④その他,という4つの中から選択するよう求めた。3点目は,周囲児の特徴として①Aさんととても仲が良い児童②誰に対してもお世話をやくことが好きな児童③誰に対しても困っていると適切に手助けする児童④その他,という4つの中から選択するよう求めた。分析方法 Aさんの特性ごとに,周囲児に関する質問を集計・分析し,周囲児の援助提供に関して違いがみられるのかについて検討する。倫理的配慮 調査の依頼文において,研究の趣旨や回答は自由意思であり,得られた情報は研究の目的以外で使用しないこと,個人・学校が特定されないよう配慮することを明記し,調査用紙の回収をもって調査への同意が得られたものとした。

結果と考察
 「1.暴言暴力」がみられる120名の児童の内,周囲児から90件(75%)は援助提供を受けている,26件(22%)は援助提供を受けていない,4件(3%)がその他という回答がみられた。援助提供する周囲児の内,援助提供する際の状況が教師の指示による場合は19件(20%),Aさんの援助要請に応じた場合は17件(18%),自ら進んで援助する場合は51件(54%),周囲児の特徴は,Aさんと仲良しが31件(29%),お世話焼きは24件(22%),困っている児童に適切に手助けするは50件(46%)であった。「2.集中力が続かない」がみられる93名の児童の内,周囲児から77件(83%)は援助提供を受けている,12件(13%)は援助提供を受けていない,4件4(%)がその他という回答がみられた。援助提供する周囲児の内,援助提供する際の状況が教師の指示による場合は19件(24%),Aさんの援助要請に応じた場合は14件(18%),自ら進んで援助する場合は44件(56%),周囲児の特徴は,Aさんと仲良しが22件(24%),お世話焼きは32件(35%),困っている児童に適切に手助けするは33件(36%)であった。「3.友だちにちょっかいを出す」がみられる99名の児童の内,周囲児から77件(78%)は援助提供を受けている,17件(17%)は援助提供を受けていない,5件(5%)がその他という回答がみられた。援助提供する周囲児の内,援助提供する際の状況が教師の指示による場合は16件(20%),Aさんの援助要請に応じた場合は20件(25%),自ら進んで援助する場合は41件(51%),周囲児の特徴は,Aさんと仲良しが25件(28%),お世話焼きは25件(28%),困っている児童に適切に手助けするは38件(42%)であった。「4.自己中心的な行動」がみられる136名の児童の内,周囲児から104件(76%)は援助提供を受けている,27件(20%)は援助提供を受けていない,5件(4%)がその他という回答がみられた。援助提供する周囲児の内,援助提供する際の状況が教師の指示による場合は24件(22%),Aさんの援助要請に応じた場合は20件(19%),自ら進んで援助する場合は56件(52%),周囲児の特徴は,Aさんと仲良しが28件(23%),お世話焼きは31件(25%),困っている児童に適切に手助けするは57件(47%)であった。「5.こだわりが多くイライラ」がみられる111名の児童の内,周囲児から89件(80%)は援助提供を受けている,20件(18%)は援助提供を受けていない,2件(2%)がその他という回答がみられた。援助提供する周囲児の内,援助提供する際の状況が教師の指示による児童は19件(21%),Aさんの援助要請に応じた場合は14件(15%),自ら進んで援助する場合は53件(58%),周囲児の特徴は,Aさんと仲良しが26件(25%),お世話焼きは25件(24%),困っている児童に適切に手助けするは49件(47%)であった。「6.個別の学習支援必要」がみられる121名の児童の内,周囲児から106件(87%)は援助提供を受けている,14件(11%)は援助提供をうけていない,2件(2%)がその他という回答がみられた。援助提供する周囲児の内,援助提供する際の状況が教師の指示による場合は20件(18%),Aさんの援助要請に応じた場合は25件(23%),自ら進んで援助する場合は62件(57%),周囲児の特徴は,Aさんと仲良しが32件(26%),お世話焼きは29件(23%),困っている児童に適切に手助けするは55件(44%)であった。
 本調査から,特別な教育的支援を要する児童がどのような特性であれ,周囲児の援助提供に関して大きな違いはみられなかった。特別な教育的支援を要する児童の8割程度は援助提供されていることがわかった。援助提供する周囲児のうちの過半数は進んで援助提供している。また,援助提供する周囲児の半数程度は,誰に対しても困っている相手に手をさしのべていることが明らかになった。以上のことから,半数程度の特定の周囲児は,どのような児童に対しても,支援をしていることが推測される。