[PB63] 道徳の学習指導案に対する大学生の認識
研究授業の経験が指導案作成の困難感に及ぼす影響
キーワード:道徳科, 学習指導案, 教育実習
2015年に一部改正学習指導要領が示され,道徳の時間が「特別の教科 道徳」として位置づけられた。日本の道徳教育は転換点を迎えており,教員養成課程において,指導法も含めて学習する必要性が今まで以上に高まっているといえよう。そこで,本研究は道徳の学習指導案(以下,指導案)に注目し,教員を目指す大学生が指導案の作成において,どのような点に困難を感じているのかを調査した。また,研究授業の経験によって,困難感を抱く点が異なるかどうかについても検討した。
方 法
調査参加者 教育大学の学部4年生89名,大学院生1名が調査に参加した。いずれも,学部3年次と4年次のいずれか一方または両方で,教育実習を経験していた。
調査内容 教育実習を経験した学年と校種;道徳の研究授業を行った学年;校種による道徳の授業の違い(自由記述);道徳の指導案を書く際に大変だった(大変そうだと感じる)部分(「主題名」「資料・題材の選択」「児童観・生徒観(児童,生徒の実態)」「資料について(資料分析)」「本時のねらい」「指導の流れ(学習過程)」「評価の観点」「板書計画」「ワークシート」「その他」の10肢より複数選択);選んだ選択肢に関して具体的に困ったこと・大変だったこと(自由記述);免許教科の指導案との違い(自由記述)について尋ねた。
手続き 質問紙による一斉調査を行った。質問紙を配布し,まず,回答は任意であること,答えたくない質問を飛ばしたり,途中で回答を取りやめたりできることを説明した。回答は参加者のペースで進めた。
結果と考察
以下,指導案を書く際に大変だった(大変そうだと感じる)部分への回答を中心に検討を行う。
研究授業の経験 参加者90名中22名は,道徳の研究授業を行っていなかった(以下,研究授業なし群)。残りの参加者のうち,50名は3年か4年かのいずれか一方で,18名は3,4年の両学年で,研究授業を行っていた(以下,研究授業あり(一学年)群,研究授業あり(両学年)群)。
指導案作成において困難な部分 最も多くの参加者が大変な部分として選んだ選択肢は,指導の流れであった。次いで,児童観・生徒観と評価の観点,資料・題材の選択であった(Table 1参照)。
なお,研究授業なし群が選んだ選択肢の数は,平均1.64(SD=1.23),研究授業あり群は,一学年,両学年の順に,2.16,1.94(SDは1.19と1.08)であった。一要因分散分析の結果,群間差は有意ではなかった(F(2,87)=1.48)。
研究授業の経験の違いが及ぼす影響 研究授業の経験群別に,各選択肢を指導案作成において大変な部分として選んだ参加者の数を,Table 1にまとめた。参加者全体で20名を超える選択肢について,χ2検定を行った。その結果,資料・題材の選択,児童・生徒観(児童,生徒の実態),指導の流れ(学習過程)において有意差が見られた。
以上より,指導案を書く際に困難を感じる部分の量は,研究授業の経験によって大きな差異はないが,困難感の質が異なることが示唆される。
具体的には,道徳の研究授業を経験しなかった参加者は,資料・題材選択が大変であろうと感じていることが推測される。しかし,研究授業を経験した参加者では,資料・題材選択に困難感を抱いている者はそれほど多くない。これは,教育実習においては,資料・題材の範囲がある程度定まっているからであると考えられる。一方,児童・生徒の実態を捉えることの難しさや,ねらいに沿った指導の流れ(特に発問)を書くことの難しさは,研究授業に向けて指導案を書く前には,気がつきにくいようである。したがって,教育実習前の学習において,特に指導の流れに意識を向けるように促すことが重要であると考えられる。
方 法
調査参加者 教育大学の学部4年生89名,大学院生1名が調査に参加した。いずれも,学部3年次と4年次のいずれか一方または両方で,教育実習を経験していた。
調査内容 教育実習を経験した学年と校種;道徳の研究授業を行った学年;校種による道徳の授業の違い(自由記述);道徳の指導案を書く際に大変だった(大変そうだと感じる)部分(「主題名」「資料・題材の選択」「児童観・生徒観(児童,生徒の実態)」「資料について(資料分析)」「本時のねらい」「指導の流れ(学習過程)」「評価の観点」「板書計画」「ワークシート」「その他」の10肢より複数選択);選んだ選択肢に関して具体的に困ったこと・大変だったこと(自由記述);免許教科の指導案との違い(自由記述)について尋ねた。
手続き 質問紙による一斉調査を行った。質問紙を配布し,まず,回答は任意であること,答えたくない質問を飛ばしたり,途中で回答を取りやめたりできることを説明した。回答は参加者のペースで進めた。
結果と考察
以下,指導案を書く際に大変だった(大変そうだと感じる)部分への回答を中心に検討を行う。
研究授業の経験 参加者90名中22名は,道徳の研究授業を行っていなかった(以下,研究授業なし群)。残りの参加者のうち,50名は3年か4年かのいずれか一方で,18名は3,4年の両学年で,研究授業を行っていた(以下,研究授業あり(一学年)群,研究授業あり(両学年)群)。
指導案作成において困難な部分 最も多くの参加者が大変な部分として選んだ選択肢は,指導の流れであった。次いで,児童観・生徒観と評価の観点,資料・題材の選択であった(Table 1参照)。
なお,研究授業なし群が選んだ選択肢の数は,平均1.64(SD=1.23),研究授業あり群は,一学年,両学年の順に,2.16,1.94(SDは1.19と1.08)であった。一要因分散分析の結果,群間差は有意ではなかった(F(2,87)=1.48)。
研究授業の経験の違いが及ぼす影響 研究授業の経験群別に,各選択肢を指導案作成において大変な部分として選んだ参加者の数を,Table 1にまとめた。参加者全体で20名を超える選択肢について,χ2検定を行った。その結果,資料・題材の選択,児童・生徒観(児童,生徒の実態),指導の流れ(学習過程)において有意差が見られた。
以上より,指導案を書く際に困難を感じる部分の量は,研究授業の経験によって大きな差異はないが,困難感の質が異なることが示唆される。
具体的には,道徳の研究授業を経験しなかった参加者は,資料・題材選択が大変であろうと感じていることが推測される。しかし,研究授業を経験した参加者では,資料・題材選択に困難感を抱いている者はそれほど多くない。これは,教育実習においては,資料・題材の範囲がある程度定まっているからであると考えられる。一方,児童・生徒の実態を捉えることの難しさや,ねらいに沿った指導の流れ(特に発問)を書くことの難しさは,研究授業に向けて指導案を書く前には,気がつきにくいようである。したがって,教育実習前の学習において,特に指導の流れに意識を向けるように促すことが重要であると考えられる。