[PB70] 他者存在が児童の教師の言葉かけの認知に及ぼす影響
キーワード:言葉かけ
問題と目的
教師の言葉かけは,ほめや叱りなど教育現場において重要なキーワードの一つであり,教師の言葉かけの効果を焦点に当てた研究が数多くなされている。しかし,他者の存在によってほめられてもネガティブな感情反応を示す子どもがいる(青木,2009)など,教師の言葉かけがなされる状況や言葉かけを受ける子ども次第でその効果は変化することが考えられる。また,他者の存在に関して,子どもへの指導は教師と子どもの二者関係ではなく周囲の子どもをも含めた三者関係で考える必要があり(加藤・大久保,2009),他者が存在する場面では,周囲の子どもが不公平・ひいきと捉えないような言葉かけが求められる。他者の存在を考慮して設定した場面における教師の言葉かけが,子どものひいき認知に影響を及ぼすのかを明らかにするため,本研究では大学生を対象に教師の言葉かけのひいき認知について予備調査を行った。
方 法
調査対象者:教員養成系学部の大学生166名。
調査時期:2018年1月。
調査方法:他者がいる様々な場面で,自分または他者が教師から言葉かけを受けた際にひいきと認知しているのかを明らかにするために遠藤・三浦(2000)を参考にし,大学生に質問紙調査を実施した。調査に関しては中学生の頃を思い浮かばせ,当時の適応感と,言葉かけに対するひいき認知の2つを評定させた。適応感については三浦らの作成した学習関連人格特性尺度(1987,1988)と心身健康尺度(1985)を利用し,26項目を4件法で評定させた。ひいき認知については他者が存在する12場面を設定し,各場面でどの程度,ひいきと認知しているか5件法で評定させた。
結果と考察
適応感を確かめるために使用した2つの尺度の因子構造を確認するため因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った。その結果,4因子構造が確認され,第1因子を「学校適応感」(α=.74),第2因子を「学校忌避」(α=.69),第3因子を「教師信頼感」(α=.64),第4因子を「クラス適応感」(α=.72)と命名した。次に,適応感を説明変数,各場面でのひいき認知を目的変数とした重回帰分析を行った。結果はTable 1の通りである。「学校適応感」から「労働ほめ他者」,「労働励し他者」,「苛めほめ他者」,「苛め励し他者」,「宿題叱り自分」へ有意な正の影響,「教師信頼感」から「労働叱り自分」,「苛め叱り自分」,「宿題ほめ他者」へ有意な正の影響,そして「クラス適応感」から「労働叱り自分」,「苛め叱り自分」へ低い有意な負の影響,「宿題ほめ他者」へ低い有意な正の影響が見られた。今回の調査では学校に適応している中学生ほど,労働・苛めといった生活場面での言葉かけをひいきと認知し,教師を信頼している中学生ほど,自分のみが叱られる言葉かけをひいきと認知していることが示唆された。
教師の言葉かけは,ほめや叱りなど教育現場において重要なキーワードの一つであり,教師の言葉かけの効果を焦点に当てた研究が数多くなされている。しかし,他者の存在によってほめられてもネガティブな感情反応を示す子どもがいる(青木,2009)など,教師の言葉かけがなされる状況や言葉かけを受ける子ども次第でその効果は変化することが考えられる。また,他者の存在に関して,子どもへの指導は教師と子どもの二者関係ではなく周囲の子どもをも含めた三者関係で考える必要があり(加藤・大久保,2009),他者が存在する場面では,周囲の子どもが不公平・ひいきと捉えないような言葉かけが求められる。他者の存在を考慮して設定した場面における教師の言葉かけが,子どものひいき認知に影響を及ぼすのかを明らかにするため,本研究では大学生を対象に教師の言葉かけのひいき認知について予備調査を行った。
方 法
調査対象者:教員養成系学部の大学生166名。
調査時期:2018年1月。
調査方法:他者がいる様々な場面で,自分または他者が教師から言葉かけを受けた際にひいきと認知しているのかを明らかにするために遠藤・三浦(2000)を参考にし,大学生に質問紙調査を実施した。調査に関しては中学生の頃を思い浮かばせ,当時の適応感と,言葉かけに対するひいき認知の2つを評定させた。適応感については三浦らの作成した学習関連人格特性尺度(1987,1988)と心身健康尺度(1985)を利用し,26項目を4件法で評定させた。ひいき認知については他者が存在する12場面を設定し,各場面でどの程度,ひいきと認知しているか5件法で評定させた。
結果と考察
適応感を確かめるために使用した2つの尺度の因子構造を確認するため因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った。その結果,4因子構造が確認され,第1因子を「学校適応感」(α=.74),第2因子を「学校忌避」(α=.69),第3因子を「教師信頼感」(α=.64),第4因子を「クラス適応感」(α=.72)と命名した。次に,適応感を説明変数,各場面でのひいき認知を目的変数とした重回帰分析を行った。結果はTable 1の通りである。「学校適応感」から「労働ほめ他者」,「労働励し他者」,「苛めほめ他者」,「苛め励し他者」,「宿題叱り自分」へ有意な正の影響,「教師信頼感」から「労働叱り自分」,「苛め叱り自分」,「宿題ほめ他者」へ有意な正の影響,そして「クラス適応感」から「労働叱り自分」,「苛め叱り自分」へ低い有意な負の影響,「宿題ほめ他者」へ低い有意な正の影響が見られた。今回の調査では学校に適応している中学生ほど,労働・苛めといった生活場面での言葉かけをひいきと認知し,教師を信頼している中学生ほど,自分のみが叱られる言葉かけをひいきと認知していることが示唆された。