[PB76] 異なる学科におけるプログラミング入門教育のSIEMによるモチベーションの分析
モチベーションの向上を目指すために
キーワード:モチベーション, プログラミング入門教育
目 的
プログラミング入門教育を対象に受講者のモチベーションを向上する教授法SIEM(Systematical Information Education Method)を開発し,情報環境学部のプログラミング入門教育で実践して来た[1]。年度による変動はあるものの,モチベーションを高い状態に維持できるようになった。学内の改組の結果,2017年4月から,工学部,未来科学部,システムデザイン工学部を対象に,共通教育「情報」を担当した。後期の「コンピュータプログラミングⅠ」の授業でSIEMを試行し,異なる学科におけるモチベーションの分析結果を探る。
方 法
分析対象の学科は,工学部のEF科,EK科,EJ科,システムデザイン工学部のAD科である。EF科,EK科,EJ科はC言語を,AD科はProcessing言語を学ぶ。Processingの統合開発環境は,スケッチブックに絵を描く感覚でプログラムを組むことができ,実行結果はグラフィカルに表示される。最近,文系,芸術系,理工系等で導入する大学が増えている。C言語の統合開発環境は,Eclipseを使い同じ教科書で,同じ進み方で授業を行った。
結 果
各学科のモチベーションの結果をTable 1に示す。AD科は後期の回答件数が少なかったため,表からは除外した。EF科とAD科は,前期から中期にかけてモチベーションの大きな低下は見られなかった。一方,EK科とEJ科は1から2ポイントの低下となった。中期から後期にかけて,EF科は3ポイント近く低下したが,EK科とEJ科は大きな低下は見られなかった。
モチベーションの分析は,顧客満足度を分析する手法で知られるCS分析で行った。その結果をTable 2に示す。改善度指数が5以上は要改善,10以上は即改善項目と考えられている.Table 2では,5以上のものを網掛けで示した。網掛けの個数に着目すると,「自己目標の明確度」が6回,「自己コントロール度」が5回になった。「自己目標の明確度」の改善策は,「自分の到達すべき学習の目標を見失っている学生のため,再度,授業の意義や目的を明示し,目標を立てさせるなどが有効と考えられます」が提案された。「自己コントロール度」の改善策は,「最初はできそうな課題で『やればできる』という感覚をつかませながら,馴れた頃にチャレンジ精神をくすぐるような課題に挑戦させることで,学生に自らの工夫を生かした成功体験を与える」が提案された。EK科の後期の改善度指数は,成功機会度が8.8になり,他の学科では見られない顕著な差となった。
考 察
モチベーションはEF科,EK科,EJ科で前期から後期に掛けて1から3ポイント低下した。共通教育「情報」では,分野が異なる受講生を対象としており,SIEMが学科固有の状況に適用できていないことが窺がえる。その他,C言語の統合開発環境はEclipseを使用しており,これは初学者にとって扱いが難しことも,原因として考えられる。
CS分析によって,モチベーションを向上させるための授業改善策が明確になった。特に,「自己目標の明確度」と「自己コントロール度」が急務の課題である。普通教科「情報」では,「社会と情報」と「情報の科学」が開講されているが,プログラミングを含む「情報の科学」は,約2割しか採用されていない。このことも関係しているかも知れない。今後も継続的に分析を行っていきたい。
参考文献
(1)異なる学部のプログラミング入門教育におけるモチベーションのCS分析結果の比較,土肥紳一,宮川 治,今野紀子,日本教育心理学会,第59回総会発表論文集,p433,2017
プログラミング入門教育を対象に受講者のモチベーションを向上する教授法SIEM(Systematical Information Education Method)を開発し,情報環境学部のプログラミング入門教育で実践して来た[1]。年度による変動はあるものの,モチベーションを高い状態に維持できるようになった。学内の改組の結果,2017年4月から,工学部,未来科学部,システムデザイン工学部を対象に,共通教育「情報」を担当した。後期の「コンピュータプログラミングⅠ」の授業でSIEMを試行し,異なる学科におけるモチベーションの分析結果を探る。
方 法
分析対象の学科は,工学部のEF科,EK科,EJ科,システムデザイン工学部のAD科である。EF科,EK科,EJ科はC言語を,AD科はProcessing言語を学ぶ。Processingの統合開発環境は,スケッチブックに絵を描く感覚でプログラムを組むことができ,実行結果はグラフィカルに表示される。最近,文系,芸術系,理工系等で導入する大学が増えている。C言語の統合開発環境は,Eclipseを使い同じ教科書で,同じ進み方で授業を行った。
結 果
各学科のモチベーションの結果をTable 1に示す。AD科は後期の回答件数が少なかったため,表からは除外した。EF科とAD科は,前期から中期にかけてモチベーションの大きな低下は見られなかった。一方,EK科とEJ科は1から2ポイントの低下となった。中期から後期にかけて,EF科は3ポイント近く低下したが,EK科とEJ科は大きな低下は見られなかった。
モチベーションの分析は,顧客満足度を分析する手法で知られるCS分析で行った。その結果をTable 2に示す。改善度指数が5以上は要改善,10以上は即改善項目と考えられている.Table 2では,5以上のものを網掛けで示した。網掛けの個数に着目すると,「自己目標の明確度」が6回,「自己コントロール度」が5回になった。「自己目標の明確度」の改善策は,「自分の到達すべき学習の目標を見失っている学生のため,再度,授業の意義や目的を明示し,目標を立てさせるなどが有効と考えられます」が提案された。「自己コントロール度」の改善策は,「最初はできそうな課題で『やればできる』という感覚をつかませながら,馴れた頃にチャレンジ精神をくすぐるような課題に挑戦させることで,学生に自らの工夫を生かした成功体験を与える」が提案された。EK科の後期の改善度指数は,成功機会度が8.8になり,他の学科では見られない顕著な差となった。
考 察
モチベーションはEF科,EK科,EJ科で前期から後期に掛けて1から3ポイント低下した。共通教育「情報」では,分野が異なる受講生を対象としており,SIEMが学科固有の状況に適用できていないことが窺がえる。その他,C言語の統合開発環境はEclipseを使用しており,これは初学者にとって扱いが難しことも,原因として考えられる。
CS分析によって,モチベーションを向上させるための授業改善策が明確になった。特に,「自己目標の明確度」と「自己コントロール度」が急務の課題である。普通教科「情報」では,「社会と情報」と「情報の科学」が開講されているが,プログラミングを含む「情報の科学」は,約2割しか採用されていない。このことも関係しているかも知れない。今後も継続的に分析を行っていきたい。
参考文献
(1)異なる学部のプログラミング入門教育におけるモチベーションのCS分析結果の比較,土肥紳一,宮川 治,今野紀子,日本教育心理学会,第59回総会発表論文集,p433,2017