[PC02] 保育者の専門性を高める研修をいかに組織するか
福井県幼児教育支援センターにおける研修の発展過程の分析
キーワード:保育者の専門性, 幼児教育センター, 研修
問題と目的
近年,さまざまな自治体で幼児教育センターが整備されつつある。その中には,幼児教育アドバイザーを採用し,園で指導助言させる事業を行うに留まっている現状もある。本来,幼稚園・保育所の保育者が専門性を高めるには,園において保育を見合い語り合う研修が重要とされている。そこでは,保育者たちが対等に語り合い,協働することが必要とされ,さまざまな方法が開発されている。そして,それを企画運営し,話し合いをファシリテートする保育者こそが重要であり,こうしたリーダーを養成していく必要がある。
福井県幼児教育支援センターでは,園内で中核になるリーダーを養成する研修と,市町ごとの幼児教育アドバイザーを養成する研修をリンクさせ,研修を発展させてきた。本研究では,その過程を明らかにし,保育者の専門性を高めるための研修についてのフレームを提案することを目的とする。
方 法
福井県幼児教育支援センター(以下,センターとする)において行われてきた園内リーダー研修・市町幼児教育アドバイザー研修について,開催初年度である平成27年度から平成29年度までの3年間の実践事例を対象とする。
いずれの年度も,オリエンテーション,遊びの中の学びの事例検討3回,報告会を兼ねた公開フォーラムの計5回から成る。園種を問わず募集し,園から1名を限度に100~150名程度で行われた。報告者は,センターの指導主事2名と福井大学の同僚1名と共に研修を構想し,各回の前後に相談しながら,参画してきた。本研究では年度ごとの鍵となるテーマを提示し,どのようにして軌道修正しながら研修を発展させてきたのかを分析する。
結果と考察
(1) 多様なバックグランドを越える(1年目)
公私・園種を問わず多様な園から参加してくる保育者を対象とすることが大きなテーマであった。そのため,保育の在り方が異なっていても共通に重要といえる「遊びの中の学び」に焦点を当てた。方法としても,遊びの事例を持ち寄ってそこでの学びについて小グループで検討し合うという保育内容・方法に関わらず参加可能な方法をとった。
市町幼児教育アドバイザーもまた公私・園種の多様なメンバーであったが,グループのファシリテータを依頼し,「指導」というよりは,遊びの中の学びを見る目を協働で育むことに重点を置いた。またアドバイザーには,市町ごとに保育で大事にしていることをポスターにまとめ,公開フォーラムで報告することとした。それにより,大事にしたい保育の本質を共有することが可能となった。
(2) 遊びの中の学びの共有化と明確化(2年目)
中核的だった指導主事が異動し,新しい担当者が加わった。学習指導要領の改訂に向けた動きと連動して,育みたい資質・能力について,我々自身が遊びの事例を元によく語り合い,考えを共有していった。それは研修にも反映され,遊びの中の学びについてより明確に提起することとなった。
また,事例を書くことに抵抗のある保育者や遊びをどう捉えたらいいか困難を感じる保育者にも目が向くようになった。より参加者の視点に立ち,遊びの場面のビデオを元に話し合う演習等も取り入れながら,事例を持ち寄る研修に入っていった。
遊びが展開していくサイクルについての視点も,「ワークシート」という形で明確に提起され,事例を持ち寄った際に,字面を読むのではなく,そのストーリーを語り直すことに重点を置いた。
市町幼児教育アドバイザーについては,ファシリテータやポスター作成は継続しつつ,市町ごとに研修を企画し運営していくことを提案し,公開保育や事例報告会を行う市町も見られた。
(3) 学び合うコミュニティの拡がり(3年目)
研修の最初から語り合うムードを作ることが志向され,ビデオ教材についてもより選定された。幼稚園教育要領等の改訂にあたっての説明会に研修も重ね,対談形式で具体例を交えた説明を協働で進め,我々自身が学びについてより共有していった。遊びの展開サイクルについては,段階を追って長期的なスパンで遊びの展開を捉えることができるよう,各回それを意識して提起された。このように共有し明確化しながら調整がなされた。
市町ごとの研修は,複数の市町に公開保育が拡がり,地区の小学校や過去のアドバイザーも巻き込み,校種や世代を越えて幅のあるネットワークが支えとなり,研修が行われるようになった。
保育者の専門性を高めるには,各園で遊びの中の学びについて語り合うことが必要であり,学び合うコミュニティが幾重にも織られた研修を組織することが重要と示唆された。
近年,さまざまな自治体で幼児教育センターが整備されつつある。その中には,幼児教育アドバイザーを採用し,園で指導助言させる事業を行うに留まっている現状もある。本来,幼稚園・保育所の保育者が専門性を高めるには,園において保育を見合い語り合う研修が重要とされている。そこでは,保育者たちが対等に語り合い,協働することが必要とされ,さまざまな方法が開発されている。そして,それを企画運営し,話し合いをファシリテートする保育者こそが重要であり,こうしたリーダーを養成していく必要がある。
福井県幼児教育支援センターでは,園内で中核になるリーダーを養成する研修と,市町ごとの幼児教育アドバイザーを養成する研修をリンクさせ,研修を発展させてきた。本研究では,その過程を明らかにし,保育者の専門性を高めるための研修についてのフレームを提案することを目的とする。
方 法
福井県幼児教育支援センター(以下,センターとする)において行われてきた園内リーダー研修・市町幼児教育アドバイザー研修について,開催初年度である平成27年度から平成29年度までの3年間の実践事例を対象とする。
いずれの年度も,オリエンテーション,遊びの中の学びの事例検討3回,報告会を兼ねた公開フォーラムの計5回から成る。園種を問わず募集し,園から1名を限度に100~150名程度で行われた。報告者は,センターの指導主事2名と福井大学の同僚1名と共に研修を構想し,各回の前後に相談しながら,参画してきた。本研究では年度ごとの鍵となるテーマを提示し,どのようにして軌道修正しながら研修を発展させてきたのかを分析する。
結果と考察
(1) 多様なバックグランドを越える(1年目)
公私・園種を問わず多様な園から参加してくる保育者を対象とすることが大きなテーマであった。そのため,保育の在り方が異なっていても共通に重要といえる「遊びの中の学び」に焦点を当てた。方法としても,遊びの事例を持ち寄ってそこでの学びについて小グループで検討し合うという保育内容・方法に関わらず参加可能な方法をとった。
市町幼児教育アドバイザーもまた公私・園種の多様なメンバーであったが,グループのファシリテータを依頼し,「指導」というよりは,遊びの中の学びを見る目を協働で育むことに重点を置いた。またアドバイザーには,市町ごとに保育で大事にしていることをポスターにまとめ,公開フォーラムで報告することとした。それにより,大事にしたい保育の本質を共有することが可能となった。
(2) 遊びの中の学びの共有化と明確化(2年目)
中核的だった指導主事が異動し,新しい担当者が加わった。学習指導要領の改訂に向けた動きと連動して,育みたい資質・能力について,我々自身が遊びの事例を元によく語り合い,考えを共有していった。それは研修にも反映され,遊びの中の学びについてより明確に提起することとなった。
また,事例を書くことに抵抗のある保育者や遊びをどう捉えたらいいか困難を感じる保育者にも目が向くようになった。より参加者の視点に立ち,遊びの場面のビデオを元に話し合う演習等も取り入れながら,事例を持ち寄る研修に入っていった。
遊びが展開していくサイクルについての視点も,「ワークシート」という形で明確に提起され,事例を持ち寄った際に,字面を読むのではなく,そのストーリーを語り直すことに重点を置いた。
市町幼児教育アドバイザーについては,ファシリテータやポスター作成は継続しつつ,市町ごとに研修を企画し運営していくことを提案し,公開保育や事例報告会を行う市町も見られた。
(3) 学び合うコミュニティの拡がり(3年目)
研修の最初から語り合うムードを作ることが志向され,ビデオ教材についてもより選定された。幼稚園教育要領等の改訂にあたっての説明会に研修も重ね,対談形式で具体例を交えた説明を協働で進め,我々自身が学びについてより共有していった。遊びの展開サイクルについては,段階を追って長期的なスパンで遊びの展開を捉えることができるよう,各回それを意識して提起された。このように共有し明確化しながら調整がなされた。
市町ごとの研修は,複数の市町に公開保育が拡がり,地区の小学校や過去のアドバイザーも巻き込み,校種や世代を越えて幅のあるネットワークが支えとなり,研修が行われるようになった。
保育者の専門性を高めるには,各園で遊びの中の学びについて語り合うことが必要であり,学び合うコミュニティが幾重にも織られた研修を組織することが重要と示唆された。