[PC10] 単語音読の流暢さの発達軌跡
就学後2年間の縦断調査から
キーワード:単語音読, 発達軌跡, 縦断調査
目 的
英語などアルファベット言語での先行研究では,単語レベルの読みの発達過程における言語ごとの特徴について,主に文字と音の対応関係の一貫性の枠組みから検討されてきた(e.g., Caravolas et al., 2017)。一方,日本語のひらがなは,文字と音の対応関係の一貫性は比較的高いものの,音節(またはモーラ)を表記単位とする点において音素を単位とするアルファベット言語とは大きく異なり,その読み能力の発達軌跡や個人差の発達的変化の様相は明らかでない。本研究では,日本語話者の児童における就学後2年間の縦断調査をとおして,ひらがなの単語と非単語における音読の流暢さの発達に焦点を当てて検討した。
方 法
調査参加者 小学1年生169名(平均月齢80.1ヶ月)。このうち135名が小学2年生終盤までの2年間にわたり継続して調査に参加した。
調査時期 各年度の序盤(5,6月)と終盤(11,12月)におよそ半年の間隔で,合計4回の調査を実施した(以下,時点1から時点4)。
調査内容 1)単語速読課題:ひらがな4文字で表記される単語(清音,濁音,特殊音からなる)のリストを制限時間(45秒)内にできるだけ速く間違えないように読む。満点は104点。2)非単語速読課題:ひらがな4文字で表記される非単語を制限時間(45秒)内にできるだけ速く間違えないように読む。満点は63点。
倫理的配慮 時点1に先立ち,参加者の保護者より参加への同意を得た。また本研究の内容について聖学院大学研究倫理委員会の承認を得た。
結 果
全4時点の遂行成績による成長曲線モデリングの結果,以下の4点が示された。1)就学後2年間での流暢さの発達的変化は非単語の読みより単語の読みのほうが大きい。2)単語と非単語の読みの発達速度の間には中程度の相関(r = .48, p < .01)が見られる。3)流暢さの個人差は非単語の読みより単語の読みのほうが一貫して大きい。4)当該の期間においては非単語の読みの個人差がわずかに拡大する。
考 察
本研究の結果から,ひらがなの単語と非単語の読みの流暢さにおける就学後2年間の発達軌跡の様相が明らかとなった。単語の読みでは2年間をとおして比較的大きな個人差が見られ,非単語の読みではむしろ個人差が拡大していたことから,就学時の読み能力のアセスメント(およびその後の継続的な評価)をとおして持続的な読み困難の兆候を早期に見出せることが示唆された。
英語などアルファベット言語での先行研究では,単語レベルの読みの発達過程における言語ごとの特徴について,主に文字と音の対応関係の一貫性の枠組みから検討されてきた(e.g., Caravolas et al., 2017)。一方,日本語のひらがなは,文字と音の対応関係の一貫性は比較的高いものの,音節(またはモーラ)を表記単位とする点において音素を単位とするアルファベット言語とは大きく異なり,その読み能力の発達軌跡や個人差の発達的変化の様相は明らかでない。本研究では,日本語話者の児童における就学後2年間の縦断調査をとおして,ひらがなの単語と非単語における音読の流暢さの発達に焦点を当てて検討した。
方 法
調査参加者 小学1年生169名(平均月齢80.1ヶ月)。このうち135名が小学2年生終盤までの2年間にわたり継続して調査に参加した。
調査時期 各年度の序盤(5,6月)と終盤(11,12月)におよそ半年の間隔で,合計4回の調査を実施した(以下,時点1から時点4)。
調査内容 1)単語速読課題:ひらがな4文字で表記される単語(清音,濁音,特殊音からなる)のリストを制限時間(45秒)内にできるだけ速く間違えないように読む。満点は104点。2)非単語速読課題:ひらがな4文字で表記される非単語を制限時間(45秒)内にできるだけ速く間違えないように読む。満点は63点。
倫理的配慮 時点1に先立ち,参加者の保護者より参加への同意を得た。また本研究の内容について聖学院大学研究倫理委員会の承認を得た。
結 果
全4時点の遂行成績による成長曲線モデリングの結果,以下の4点が示された。1)就学後2年間での流暢さの発達的変化は非単語の読みより単語の読みのほうが大きい。2)単語と非単語の読みの発達速度の間には中程度の相関(r = .48, p < .01)が見られる。3)流暢さの個人差は非単語の読みより単語の読みのほうが一貫して大きい。4)当該の期間においては非単語の読みの個人差がわずかに拡大する。
考 察
本研究の結果から,ひらがなの単語と非単語の読みの流暢さにおける就学後2年間の発達軌跡の様相が明らかとなった。単語の読みでは2年間をとおして比較的大きな個人差が見られ,非単語の読みではむしろ個人差が拡大していたことから,就学時の読み能力のアセスメント(およびその後の継続的な評価)をとおして持続的な読み困難の兆候を早期に見出せることが示唆された。