[PC11] 保育者効力感と子どもへの関心に及ぼす愛着の内的作業モデルと乳児接触体験の影響
キーワード:保育者効力感, 子どもへの関心, 愛着の内的作業モデル
問題・目的
保育者効力感及び子どもへの関心を高めて保育者としての適性を涵養するためには,乳児接触体験の豊富さ(扇原・村井,2012)や計画的な体験的実習等による教育的な働きかけの必要性が示唆されている(龍・小川内,2017)。しかし,保育者効力感や子どもへの関心に対しては,保育者を目指す者の発達初期の養育環境に関わる個人差要因が影響を与えているとも仮定される。本研究では,この個人差要因として愛着の内的作業モデル(以下内的作業モデル)を仮定し,内的作業モデルと乳児接触体験が,保育者効力感や子どもへの関心に及ぼす影響について検討することを目的とした。
方 法
調査対象:短期大学保育者養成校の学生と4年生大学の教職課程で学ぶ学生。429名(男35名,女357名 不明37名) 平均年齢20.4(標準偏差1.44)調査時期は20××年 4月~7月。
調査に用いた測定尺度
(1)保育者効力感尺度:三木・桜井(1998)の保育者効力感尺度(例えば,「私は,子どもの能力に応じた課題を出すことができると思う」等)10項目からなる。5件法で評定させた。
(2)子どもへの関心尺度:扇原・村井(2012)の子どもへの関心尺度を用いた。好意的注目(例えば「幼児の姿を見かけるとつい目で追ってしまう」等14項目),同情(例えば「元気のない幼児を見ると心配になる」等7項目),好奇心(例えば「テレビに幼児が出てくると興味をもって見る」等6項目),寛容性(例えば「幼児の泣き声を聞くとイライラする(逆転項目)」等3項目)の4つの下位尺度からなる。各質問項目に6件法で回答させた。
(3)愛着の内的作業モデルの測定尺度:RQの日本語版(加藤,1999a)を用いた。安定型,拒絶型,とらわれ型,恐れ型の4モデルの中から最も自己に該当するモデルを1つ選ばせた。
(4)乳児接触体験測定尺度:花沢(1992)の乳児に対する接触体験尺度(例えば,「体にさわったこと」)等15項目からなる。各質問項目に3件法で評定させた。
結 果
保育者効力感と子どもへの関心を従属変数として,4(内的作業モデル型:安定・拒絶・とらわれ・恐れ)×2(接触体験:高・低)のいずれも被験者要因による2元配置の分散分析を実施した
(1)保育者効力感:内的作業モデル型と接触体験の主効果が有意であった。交互作用は有意ではなかった。つまり安定型は拒絶型,とらわれ型,恐れ型よりも有意に保育者効力感が高かった。そして,接触体験の高い群が低い群よりも保育者効力感が高かった。
(2)子どもへの関心:接触体験の主効果と内的作業モデル型と接触体験の交互作用が有意であった。接触体験が高い群は,内的作業モデル型間に有意差は認められなかった。接触体験が低い群は,内的作業モデル型間で子どもへの関心について有意な差が認められた。つまり,接触経験の低い群においては,有意にとらわれ型は拒絶型及び恐れ型よりも,そして有意傾向であるが安定型よりも子どもへの関心が高かった。拒絶型は,有意に安定型,そして有意傾向であるが恐れ型よりも子どもへの関心が低く,恐れ型は安定型との間に有意差はなかった。
考 察
保育者としての資質を高めるために,乳児との豊富な接触を体験する重要性が示された。また保育者効力感と関係する個人差変数として,内的作業モデルが関係していることが示された。
保育者効力感については,乳児接触体験と内的作業モデルが独立して関係し,乳児接触体験の豊富なこと,あるいは,様々な事態において,安定型すなわち,精神的な安定や課題に自律的に対処する傾向を有することが,子どもに良い影響力を与えるとの自信を促すことを示唆している。子どもへの関心については,接触体験の低い場合には,とらわれ型は他者との間に過度の一体感を求める傾向の故か,他の型と比較して,乳児に対して高い関心を寄せることが示された。
今後乳児との接触体験の質的な違いと保育者効力感や子どもへの関心との関係を検討することが求められる。
引用文献
扇原貴志・村井潤一郎 (2012). 大学生の子どもへの関心とその関連要因 子育て研究, 2, 3-12.
保育者効力感及び子どもへの関心を高めて保育者としての適性を涵養するためには,乳児接触体験の豊富さ(扇原・村井,2012)や計画的な体験的実習等による教育的な働きかけの必要性が示唆されている(龍・小川内,2017)。しかし,保育者効力感や子どもへの関心に対しては,保育者を目指す者の発達初期の養育環境に関わる個人差要因が影響を与えているとも仮定される。本研究では,この個人差要因として愛着の内的作業モデル(以下内的作業モデル)を仮定し,内的作業モデルと乳児接触体験が,保育者効力感や子どもへの関心に及ぼす影響について検討することを目的とした。
方 法
調査対象:短期大学保育者養成校の学生と4年生大学の教職課程で学ぶ学生。429名(男35名,女357名 不明37名) 平均年齢20.4(標準偏差1.44)調査時期は20××年 4月~7月。
調査に用いた測定尺度
(1)保育者効力感尺度:三木・桜井(1998)の保育者効力感尺度(例えば,「私は,子どもの能力に応じた課題を出すことができると思う」等)10項目からなる。5件法で評定させた。
(2)子どもへの関心尺度:扇原・村井(2012)の子どもへの関心尺度を用いた。好意的注目(例えば「幼児の姿を見かけるとつい目で追ってしまう」等14項目),同情(例えば「元気のない幼児を見ると心配になる」等7項目),好奇心(例えば「テレビに幼児が出てくると興味をもって見る」等6項目),寛容性(例えば「幼児の泣き声を聞くとイライラする(逆転項目)」等3項目)の4つの下位尺度からなる。各質問項目に6件法で回答させた。
(3)愛着の内的作業モデルの測定尺度:RQの日本語版(加藤,1999a)を用いた。安定型,拒絶型,とらわれ型,恐れ型の4モデルの中から最も自己に該当するモデルを1つ選ばせた。
(4)乳児接触体験測定尺度:花沢(1992)の乳児に対する接触体験尺度(例えば,「体にさわったこと」)等15項目からなる。各質問項目に3件法で評定させた。
結 果
保育者効力感と子どもへの関心を従属変数として,4(内的作業モデル型:安定・拒絶・とらわれ・恐れ)×2(接触体験:高・低)のいずれも被験者要因による2元配置の分散分析を実施した
(1)保育者効力感:内的作業モデル型と接触体験の主効果が有意であった。交互作用は有意ではなかった。つまり安定型は拒絶型,とらわれ型,恐れ型よりも有意に保育者効力感が高かった。そして,接触体験の高い群が低い群よりも保育者効力感が高かった。
(2)子どもへの関心:接触体験の主効果と内的作業モデル型と接触体験の交互作用が有意であった。接触体験が高い群は,内的作業モデル型間に有意差は認められなかった。接触体験が低い群は,内的作業モデル型間で子どもへの関心について有意な差が認められた。つまり,接触経験の低い群においては,有意にとらわれ型は拒絶型及び恐れ型よりも,そして有意傾向であるが安定型よりも子どもへの関心が高かった。拒絶型は,有意に安定型,そして有意傾向であるが恐れ型よりも子どもへの関心が低く,恐れ型は安定型との間に有意差はなかった。
考 察
保育者としての資質を高めるために,乳児との豊富な接触を体験する重要性が示された。また保育者効力感と関係する個人差変数として,内的作業モデルが関係していることが示された。
保育者効力感については,乳児接触体験と内的作業モデルが独立して関係し,乳児接触体験の豊富なこと,あるいは,様々な事態において,安定型すなわち,精神的な安定や課題に自律的に対処する傾向を有することが,子どもに良い影響力を与えるとの自信を促すことを示唆している。子どもへの関心については,接触体験の低い場合には,とらわれ型は他者との間に過度の一体感を求める傾向の故か,他の型と比較して,乳児に対して高い関心を寄せることが示された。
今後乳児との接触体験の質的な違いと保育者効力感や子どもへの関心との関係を検討することが求められる。
引用文献
扇原貴志・村井潤一郎 (2012). 大学生の子どもへの関心とその関連要因 子育て研究, 2, 3-12.