[PC16] 反転授業における予習課題実施率を高めるには
予習課題事前提出を成績評価対象とすべきか否か
キーワード:反転授業, 動機づけ, 予習
反転授業(flip teaching)とは,教員が教室で行う通常の授業に相当する内容を,学習者が事前にビデオ教材等により予習した上で授業に参加し,授業時間内ではアクティブ・ラーニングを中心に行うという形態の授業である。藤田・芳賀(2015, 2016,2017)は,反転授業を実質化するために,単に予習を促すだけでなく,授業内で話し合う題材について予習の段階で学習者が回答を作成し事前に提出するという予習課題を設定することで,学習者は予習課題に対して面倒だというコスト感を感じながらも,有効性を認知し,90%以上という高い予習課題遂行率が期待できることを報告した。
藤田・芳賀(2015,2016,2017)が報告した実践においては,予習課題の事前提出が,成績評価における平常点を獲得するための必須要件となっていた。すなわち,予習課題の取り組みには少なからず外発的動機づけが関与していたことになる。本研究は,予習課題への取り組みを成績評価の対象外とした場合,すなわち内発的に取り組むべき課題と位置づけた場合にも,高い予習課題遂行率が維持されるか否かを検証することを目的とする。
方 法
調査対象 法政大学文学部心理学科の2年次配当科目「心理学測定法I」という質問紙調査法に関する演習形式の受講生147名。このうち,2016年度受講生68名では予習課題事前提出が平常点40%の成績評価対象に含まれており,2017年度受講生79名では成績評価対象外だった。この授業は選択必修科目であるが,2年生のほぼ全員が履修していた。2016年度は全15回,2017年度は全14回の授業回数であった。初回を除く全ての回で班活動が主であり,各班で質問紙調査を計画・実施・成果発表をするというPBL形式の授業であった。
両年度とも,第2回から最終回まで,すべての授業で事前に予習課題の提出を求めた。2016年度は17課題,2017年度は15課題が課せられた。
予習課題 授業支援システムで事前に授業プリントpdfを配信し,その中の設問に対して各受講生が回答を作成し,授業支援システム経由で授業開始前に提出,および印刷して授業に持参するという構成は,第2回から最終回までの授業で共通であった。これに加えて,第2-4回の授業では,質問紙調査の基礎となる「妥当性とは(第2回)」「母集団とサンプリング(第3回)」「尺度と測定(第4回)」「信頼性とは(第4回)」の主題でビデオ教材(10-15分)を配信し,それらを視聴した上で上記の予習課題に取り組むことを求めた。
質問紙 第2回および最終回の授業冒頭で,授業外学習に関する質問紙を実施。「教科書の予習」「それまでの授業内容の復習」「課題(宿題)に取り組む」「授業外での班活動」「ビデオ教材視聴」のそれぞれについて,「行うつもりの(行った)程度(実施)」,「効果的だと思う(有効性の認知)」,「行うのは面倒(コスト感)」について,6件法(6:非常によく当てはまる~1:まったく当てはまらない)で評定を求めた。
結果と考察
予習実施率 予習課題が平常点として評価対象となっていた2016年度では全15回平均で91%,それに対して評価対象外だった2017年度では全14回で73%と予習課題提出率が大幅に下がった。ただし,第2-4回目のビデオ教材を用いた予習部分では2016年度で94%,2017年度で85%であった。
授業外学習質問紙 ここでは全回に共通する「次の回の授業に備えて,指示された課題(宿題等)に取り組む」の評定値についてのみ報告する。2017年度の予習課題未提出回数に基づき受講生を3分割した(未提出0-1回を提出高群28名,未提出2-4回を中群,5回以上を低群とした)。
提出回数3群×測定時期2(第2回,最終回)の2要因混合分散分析の結果,「課題の実施」では交互作用が有意であり,最終回で群差が有意となったことから,評定は妥当に行われていることが確認できた。しかし,「有効性の認知」「コスト感」ともに予習課題提出の群差は有意にならず,提出率の低い学生が課題の有効性を低く認知しているわけではないことが示された。予習課題提出を評価対象にすることで,ついサボりがちな学生の背中を押すことができると示唆された。
藤田・芳賀(2015,2016,2017)が報告した実践においては,予習課題の事前提出が,成績評価における平常点を獲得するための必須要件となっていた。すなわち,予習課題の取り組みには少なからず外発的動機づけが関与していたことになる。本研究は,予習課題への取り組みを成績評価の対象外とした場合,すなわち内発的に取り組むべき課題と位置づけた場合にも,高い予習課題遂行率が維持されるか否かを検証することを目的とする。
方 法
調査対象 法政大学文学部心理学科の2年次配当科目「心理学測定法I」という質問紙調査法に関する演習形式の受講生147名。このうち,2016年度受講生68名では予習課題事前提出が平常点40%の成績評価対象に含まれており,2017年度受講生79名では成績評価対象外だった。この授業は選択必修科目であるが,2年生のほぼ全員が履修していた。2016年度は全15回,2017年度は全14回の授業回数であった。初回を除く全ての回で班活動が主であり,各班で質問紙調査を計画・実施・成果発表をするというPBL形式の授業であった。
両年度とも,第2回から最終回まで,すべての授業で事前に予習課題の提出を求めた。2016年度は17課題,2017年度は15課題が課せられた。
予習課題 授業支援システムで事前に授業プリントpdfを配信し,その中の設問に対して各受講生が回答を作成し,授業支援システム経由で授業開始前に提出,および印刷して授業に持参するという構成は,第2回から最終回までの授業で共通であった。これに加えて,第2-4回の授業では,質問紙調査の基礎となる「妥当性とは(第2回)」「母集団とサンプリング(第3回)」「尺度と測定(第4回)」「信頼性とは(第4回)」の主題でビデオ教材(10-15分)を配信し,それらを視聴した上で上記の予習課題に取り組むことを求めた。
質問紙 第2回および最終回の授業冒頭で,授業外学習に関する質問紙を実施。「教科書の予習」「それまでの授業内容の復習」「課題(宿題)に取り組む」「授業外での班活動」「ビデオ教材視聴」のそれぞれについて,「行うつもりの(行った)程度(実施)」,「効果的だと思う(有効性の認知)」,「行うのは面倒(コスト感)」について,6件法(6:非常によく当てはまる~1:まったく当てはまらない)で評定を求めた。
結果と考察
予習実施率 予習課題が平常点として評価対象となっていた2016年度では全15回平均で91%,それに対して評価対象外だった2017年度では全14回で73%と予習課題提出率が大幅に下がった。ただし,第2-4回目のビデオ教材を用いた予習部分では2016年度で94%,2017年度で85%であった。
授業外学習質問紙 ここでは全回に共通する「次の回の授業に備えて,指示された課題(宿題等)に取り組む」の評定値についてのみ報告する。2017年度の予習課題未提出回数に基づき受講生を3分割した(未提出0-1回を提出高群28名,未提出2-4回を中群,5回以上を低群とした)。
提出回数3群×測定時期2(第2回,最終回)の2要因混合分散分析の結果,「課題の実施」では交互作用が有意であり,最終回で群差が有意となったことから,評定は妥当に行われていることが確認できた。しかし,「有効性の認知」「コスト感」ともに予習課題提出の群差は有意にならず,提出率の低い学生が課題の有効性を低く認知しているわけではないことが示された。予習課題提出を評価対象にすることで,ついサボりがちな学生の背中を押すことができると示唆された。