[PC17] 被害を与えた際の受け止め方の変化
周囲の反応の影響についての検討
キーワード:罪悪感, 羞恥心, 逃避
犯罪者の中には,犯罪行為をしている最中は特段何も思わず,その行為で捕まって,初めて悪いことをしたと実感したと語る者がいる一方,その行為を周囲から責められ,頑なに自己弁護する者も観察される。そこで,本研究では,人に被害を与えた出来事を取り上げ,その出来事をめぐっての周囲の反応によって,罪悪感等がどのように変容するかを検討することを目的とした。
方 法
成人600名(男女300名ずつ,年齢22~89歳,平均年齢50.39歳)に「対人観についての調査」と題したインターネット調査を,調査会社を介して2017年10月に無記名自記式で実施した。
調査では,罪悪感を抱く可能性がある以下の2つのエピソードに自身が立ち会ったとして,どのように受け止めるかを回答するよう求めた。
エピソードA:あなたのためにと知人の口ききで,有力者を紹介してもらったのに,その有力者との面談で,有力者の機嫌を損ねた。
エピソードB:無理に貸してもらった知人の大事な品を,鍵をかけて保管していたつもりでいたが,なくなっていることに気づいた。
それぞれのエピソードについて,その出来事に遭遇した当初の段階(段階1),その出来事を自身が知人に報告する前に,そのことを知った知人が平静心を失っているところを目の当たりにした段階(段階2),そのことが周りに知れて,自身が笑い者になった段階(段階3),出来事の終結段階(段階4),の4段階それぞれについて,その際に抱く可能性がある感情・認知10項目を測定した。
段階4の出来事の終結段階については,知人が自身を許してくれる(終結1),知人が自身を責めてくる(終結2),事態改善案を思いつく(終結3),の3群を設け,上記調査協力者を200名(男女100名ずつ)ずつ割り振って,回答を求めた。
結 果
各エピソードの各段階で測定した感情・認知10項目について,因子分析を行ったところ,罪悪感,自己嫌悪感,羞恥心,逃避,閉口感の5因子に分かれることが確認できた。それぞれの感情・認知同士の関連はTable1に示したとおりである。
各エピソードの段階1~3の上記感情・認知の平均値はTable2のとおりである。反復測定による分散分析を行ったところ,エピソードAの閉口感を除き,段階間に有意差が認められた。また,段階4の終結種類別の感情・認知はTable3のとおりである。各感情・認知について段階3の該当感情・認知を共変量として,終結種類についての分散分析を行った結果,エピソードAの羞恥心を除き,種類間に有意差が認められた。
考 察
自身が人に被害を与えたとして,その行為自体は変わらなくても,その事態の展開の仕方によって,感情・認知が揺れ動くことが確認できた。たとえば,罪悪感は,被害を与えた事象が発生したときよりも,それによって他者が困ってしまっている場面を目の当たりにした方が強くなること,反対に,そのことで自身が周囲から疎外されたり中傷されたりすると弱まることが示された。また,その事態改善を自身が図れそうと思う場合には罪悪感が弱いこと,被害を受けた者が許容してくれる場合の方がくれない場合に比べて,自己嫌悪感や閉口感が弱いことが示された。
付 記
本研究は科研基盤C15K04151の助成に基づいて行われた。
方 法
成人600名(男女300名ずつ,年齢22~89歳,平均年齢50.39歳)に「対人観についての調査」と題したインターネット調査を,調査会社を介して2017年10月に無記名自記式で実施した。
調査では,罪悪感を抱く可能性がある以下の2つのエピソードに自身が立ち会ったとして,どのように受け止めるかを回答するよう求めた。
エピソードA:あなたのためにと知人の口ききで,有力者を紹介してもらったのに,その有力者との面談で,有力者の機嫌を損ねた。
エピソードB:無理に貸してもらった知人の大事な品を,鍵をかけて保管していたつもりでいたが,なくなっていることに気づいた。
それぞれのエピソードについて,その出来事に遭遇した当初の段階(段階1),その出来事を自身が知人に報告する前に,そのことを知った知人が平静心を失っているところを目の当たりにした段階(段階2),そのことが周りに知れて,自身が笑い者になった段階(段階3),出来事の終結段階(段階4),の4段階それぞれについて,その際に抱く可能性がある感情・認知10項目を測定した。
段階4の出来事の終結段階については,知人が自身を許してくれる(終結1),知人が自身を責めてくる(終結2),事態改善案を思いつく(終結3),の3群を設け,上記調査協力者を200名(男女100名ずつ)ずつ割り振って,回答を求めた。
結 果
各エピソードの各段階で測定した感情・認知10項目について,因子分析を行ったところ,罪悪感,自己嫌悪感,羞恥心,逃避,閉口感の5因子に分かれることが確認できた。それぞれの感情・認知同士の関連はTable1に示したとおりである。
各エピソードの段階1~3の上記感情・認知の平均値はTable2のとおりである。反復測定による分散分析を行ったところ,エピソードAの閉口感を除き,段階間に有意差が認められた。また,段階4の終結種類別の感情・認知はTable3のとおりである。各感情・認知について段階3の該当感情・認知を共変量として,終結種類についての分散分析を行った結果,エピソードAの羞恥心を除き,種類間に有意差が認められた。
考 察
自身が人に被害を与えたとして,その行為自体は変わらなくても,その事態の展開の仕方によって,感情・認知が揺れ動くことが確認できた。たとえば,罪悪感は,被害を与えた事象が発生したときよりも,それによって他者が困ってしまっている場面を目の当たりにした方が強くなること,反対に,そのことで自身が周囲から疎外されたり中傷されたりすると弱まることが示された。また,その事態改善を自身が図れそうと思う場合には罪悪感が弱いこと,被害を受けた者が許容してくれる場合の方がくれない場合に比べて,自己嫌悪感や閉口感が弱いことが示された。
付 記
本研究は科研基盤C15K04151の助成に基づいて行われた。