[PC18] アクティブ・ラーニングを意図して制作した美術テキストを用いた学修
学生は授業をとおして何を学修したか?
Keywords:アクティブ・ラーニング, ジェネリック・スキル, 美術教育
問題と目的
現在,日本の高等教育機関は,社会からの期待に応える大学づくりを推進するため,文部科学省の方針にしたがい,高大接続改革の推進,アクティブ・ラーニングの充実,大学の国際競争力の向上,イノベーション創出のための教育・研究環境づくり,社会人の学び直し機能の強化等に取り組んでいる。さらに学士課程教育においては,真の「学力」を育成する大学教育への質的転換を図っていくことが求められており,その中には教育課程の体系化・構造化,学修成果の可視化やPDCAサイクルによる教学マネジメントの確立を基盤として,学生に知識・技能だけでなく思考力・判断力・表現力を身につけさせていくことが含まれている。それを実現するためには,学生が主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度が必要不可欠であり,学生の主体的・能動的な学びを促すアクティブ・ラーニングの導入・拡大が推進されている。このように現在の大学教育においては,アクティブ・ラーニングによる授業実践についての研究は大きな課題となっている。したがって大貫(2017)は,一斉授業(講義科目)「美術」において学生が主体的,能動的に学修できるよう工夫を施したテキスト『鑑賞による表出』を刊行した。本研究はそのテキストを用いた授業をとおして学生が何を学修したのかを検討する。
方 法
対象者:教養の選択科目「美術Ⅱ」受講生66名。
査実施時期:「美術Ⅱ」の最後(15回目)の授業(2018年1月),③調査方法:授業時間の最後に,「あなたは「美術Ⅱ」の授業を通して何を学んだのか,どんな能力を身につけたと思うかを自由に記述してください。」と教示を与え,アンケート用紙に記述させた。
結果と考察
心理学者2名でKJ法を用いて分析した結果,全164の項目は28項目に分類され,さらに関係性などの検討を重ね大項目として7項目となり,その関係性を図に示した(Figure 1参照)。「テキスト」を用いることによって「美術・作家に関する知識」と「表現の技法」(描き方や色のぬり方)といった「専門的な知識」の獲得がスムーズに進み,もっといろいろな美術作品を鑑賞してみたいといった「美術への関心」が高まった。また「楽しさ」や「自己の成長」にもつながっていた。さらにそれだけでなく,「専門的な知識」を得たことにより,多角的な観点から美術を鑑賞したり,鑑賞からさらに深く思考することなどを含む「美術の鑑賞能力」が高まっており,それらは「ジェネリック・スキル」(「視野の広がり」「多様性への気づき」「観察力」「センス・感性」「表現力」「発想力」「想像力」「創造力」「集中力」)に発展していた。座学でありながらもワークを取り入れたりQRコードを活用するなどしてアクティブ・ラーニングを実践したからこその結果だと考えられる。今後は客観的な指標を用いて学修成果としてのジェネリック・スキルを検証していく必要がある。
現在,日本の高等教育機関は,社会からの期待に応える大学づくりを推進するため,文部科学省の方針にしたがい,高大接続改革の推進,アクティブ・ラーニングの充実,大学の国際競争力の向上,イノベーション創出のための教育・研究環境づくり,社会人の学び直し機能の強化等に取り組んでいる。さらに学士課程教育においては,真の「学力」を育成する大学教育への質的転換を図っていくことが求められており,その中には教育課程の体系化・構造化,学修成果の可視化やPDCAサイクルによる教学マネジメントの確立を基盤として,学生に知識・技能だけでなく思考力・判断力・表現力を身につけさせていくことが含まれている。それを実現するためには,学生が主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度が必要不可欠であり,学生の主体的・能動的な学びを促すアクティブ・ラーニングの導入・拡大が推進されている。このように現在の大学教育においては,アクティブ・ラーニングによる授業実践についての研究は大きな課題となっている。したがって大貫(2017)は,一斉授業(講義科目)「美術」において学生が主体的,能動的に学修できるよう工夫を施したテキスト『鑑賞による表出』を刊行した。本研究はそのテキストを用いた授業をとおして学生が何を学修したのかを検討する。
方 法
対象者:教養の選択科目「美術Ⅱ」受講生66名。
査実施時期:「美術Ⅱ」の最後(15回目)の授業(2018年1月),③調査方法:授業時間の最後に,「あなたは「美術Ⅱ」の授業を通して何を学んだのか,どんな能力を身につけたと思うかを自由に記述してください。」と教示を与え,アンケート用紙に記述させた。
結果と考察
心理学者2名でKJ法を用いて分析した結果,全164の項目は28項目に分類され,さらに関係性などの検討を重ね大項目として7項目となり,その関係性を図に示した(Figure 1参照)。「テキスト」を用いることによって「美術・作家に関する知識」と「表現の技法」(描き方や色のぬり方)といった「専門的な知識」の獲得がスムーズに進み,もっといろいろな美術作品を鑑賞してみたいといった「美術への関心」が高まった。また「楽しさ」や「自己の成長」にもつながっていた。さらにそれだけでなく,「専門的な知識」を得たことにより,多角的な観点から美術を鑑賞したり,鑑賞からさらに深く思考することなどを含む「美術の鑑賞能力」が高まっており,それらは「ジェネリック・スキル」(「視野の広がり」「多様性への気づき」「観察力」「センス・感性」「表現力」「発想力」「想像力」「創造力」「集中力」)に発展していた。座学でありながらもワークを取り入れたりQRコードを活用するなどしてアクティブ・ラーニングを実践したからこその結果だと考えられる。今後は客観的な指標を用いて学修成果としてのジェネリック・スキルを検証していく必要がある。