日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

2018年9月15日(土) 15:30 〜 17:30 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC19] 私たちは,どのように折り紙を折っているのか?(24)

「折り」イメージ形成の効果についての予備的調査

丸山真名美 (至学館大学)

キーワード:「折り」イメージ, イメージ形成,

問題と目的
 私たちは,何らかの動作をするときに,どのように動くかという動きのイメージを形成する認知活動を行うと考えられる。
 本研究では,折り紙を折るときに,「折り」の動きイメージを形成することが,実際に折るときにどのような影響を与えるか検討する。

方  法
調査協力者:成人女性1名。(調査結果を研究発表することとビデオ撮影と撮影した映像を公開することに同意を得た。)
課題:①「変形鶴」の折り図をみて「折り」イメージを形成してから,「変形鶴」を折る。②VVIQ イメージ能力を測定する16項目で構成される質問紙。16点から80点の得点範囲であり,点数が低いほどイメージ能力が優れていることを示す。
手続き:まず,両手の手のひらを上に向けて机の上に置き,提示された「変形鶴」の折り図を見るように教示した。提示時間は7分であった。また,このあとに実際に折ることも伝えた。折り図を提示してから7分後に,「折ってください」と教示した。折っている様子はデジタルビデオカメラで撮影した。折っている時も,折り図を提示した。

結果と考察
 「変形鶴」の折り過程を16ステップに分割した。そして,各ステップに要した時間と次のステップに移行するのに要した時間を測定した。
 Figure 1に,本研究の協力者の所要時間をイメージ形成,あらかじめ「折り」イメージを形成せずに折り図を見ながら折った丸山(2013)の協力者3名の平均所要時間をイメージ未形成として示した。VVIQの得点は,16点であった。
 「変形鶴」は,鶴とほぼ同じ折り方であるが四角折りの形が異なりその結果ふくろ折りの形も異なる。ステップ3,4,6,7が該当する。
 イメージ形成とイメージ未形成の所要時間を比較すると,ステップ間の所要時間がイメージ形成の方が短いことが示された。
 さらに,ステップ6を飛ばしてステップ7の折りを行っていることも示された。このことについて,事後の報告で次のように言及された。「ステップ4と同じ形になるように同じように折ればいいので,ステップ6の形にわざわざする必要がなかった。あらかじめどうやってどんな形にすればよいかわかっていたから」。
 以上から,あらかじめ「折り」イメージを形成することでスムースに折ることができる効果があることが示された。また,全体の「折り」イメージを形成することで,制作過程の折り紙の構造についてもイメージできることが示唆された。
 なお,ステップ4での所要時間が長いが,鶴の折り方をしてしまい折り直したためである。ステップ15と16の間では,形を整えていた。
 今後の課題は,イメージ能力がイメージ形成の成否や効果にどのように関わっているかデータを増やして検討することである。