日本教育心理学会第60回総会

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ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

2018年9月15日(土) 15:30 〜 17:30 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC30] 学び続ける教師を支える要因 

小学校教師の達成目標志向性との関連

森永秀典1, 河村茂雄2 (1.岡山市立芳泉小学校, 2.早稲田大学)

キーワード:達成目標理論, 教師教育

問題と目的
 中原(2015)は,近年の多様化している子供や保護者の変化に対応するには,経験を積んだベテラン教師にとっても難しく,教師としての基礎的な知識や技能の習得もままならない状態の若手教師にとっては,より大きく困難な状況になっているとしている。小島(2007)は若手教師だから応援するという保護者は少なくなっており,それどころか,若手教師をベテラン教師と比較し,不足を容赦なく非難,わが子に最善の教育を求めるようになっていることを指摘している。そのような現状は教諭の離職率にも表れており,25歳以上50歳未満の中で,25歳以上30歳未満の群の離職数が最も多いことからも(文部科学省 2016b)若手教師にとって,働き続けることが難しい現状があることが考えられる。
 中央教育審議会(2015)は,今後求められる教師の資質として,自律的に学ぶ姿勢をもち,時代の変化や自らのキャリアステージに応じて求められる資質能力を,生涯にわたって高めていくことのできる力が必要であり,常に探究心や学び続ける意識をもつことが重要であることを提言している。そこで本研究では,小学校の若手教師の学び続けようとする態度を支える要因として,達成目標志向性に注目した。
 上淵(2012)は,達成目標理論では,「人」は有能さを求める存在であると規定し,その有能さを求めるために人は行動すると捉え,個々人が行動をとる際に設定するのが達成目標であるとしている。Decks(1986)によると,達成目標は,達成行動において,自分自身の能力の評価を得ることを志向し,悪い評価を避けようとする遂行目標と,自分の能力を高めることを志向し,知る事や獲得することを目指す熟達目標とに分けられており,Decksの研究移行様々な研究がなされている。
 以上をふまえ本研究では,教師の学び続けようとする態度と達成目標志向性との関連を検討する
ことを目的とした。

方  法
調査対象 A県の公立小学校の教師46名(男性22名,女性24名)が対象であった。
調査時期と手続き 教師への調査は2017年7月~8月にかけて実施した。
調査内容 学び続ける教師の態度については,河村ら(2014)の教員組織尺度の自主・向上性因子の項目(16項目)を用いた。「かなり当てはまる(5点)」~「全く当てはまらない(1点)」の5件法で回答を求めることにより,個人の得点が算出される。平均得点を算出し,平均得点より高い群をH群,低い群をL群とした。また教師の達成目標志向性については,三木・山内(2005)を参考に,小学校教師の達成目標志向性尺度を作成し,「かなり当てはまる(5点)」~「全く当てはまらない(1点)」の5件法で回答を求めた。

結果と考察
学び続ける教師の態度と達成目標志向性との関連について
 小学校の若手教師において,自主・向上性H群はL群によって,熟達目標志向性においてのみ有意差が示された。自主・向上性H群は,L群と比較して,熟達目標志向性が高いことが明らかになった。達成目標理論における熟達目標をもつ学習者は,効力感が高いこと(中野・藤井,2013)や,日常的な学習行動を促すこと(遠藤・中谷,2017)が報告されており,学び続ける教師の態度との関連について,さらなる研究が求められる。今後の課題としたい。