[PC32] 潜在曲線モデル分析によるアクティブ・ラーニング型授業の効果測定(2)
協同作業認識がグループワーク活動に及ぼす影響
キーワード:アクティブ・ラーニング, 協同作業認識, 潜在曲線モデル分析
教育の質的転換が求められる中,高等教育におけるアクティブ・ラーニングの積極的な導入が試みられている (中央教育審議会, 2012)。最近では,アクティブ・ラーニング型授業がすべての学生にとって有効ではないとの指摘がなされるようになり (松下・京都大学高等教育研究開発推進センター, 2015),個人差に配慮したアクティブ・ラーニングの導入が課題とされている。
こうした個人差に配慮すべく,さまざまなアクティブ・ラーニング型の授業方略が検討される中,個人差が大きく影響する授業方略の1つにグループワークがあげられる。たとえば,協同作業に対する認識 (長濱・安永・関田・甲原, 2009) として協同を有効と認識している学生は,有効と認識していない学生に比べて,「グループワーク」・「ペアワーク」型授業の受講を希望する (野中, 2016)。
このように,グループワーク形式の授業に対する事前の認識が肯定的であれば,その後の授業におけるグループ活動も積極的であることが予想される。一方,グループワーク形式の授業を採用するからには,こうした授業に苦手意識をもつ学生が実際に行うグループ活動を明らかにしたうえで,その結果をもとに有効な手立てを工夫し,積極的に取り入れることが求められる。
そこで,本研究では学生の個人差として,協同作業認識 (長濱他, 2009) に注目し,授業開始時点での協同作業認識が,アクティブ・ラーニング型授業におけるグループ活動に及ぼす影響を検討する。なお,授業を通して,グループ活動の様相は変化していくことが想定されるため,その変化を明らかにし,その変化に学生の協同作業認識が及ぼす影響を明らかにするため,条件付き潜在曲線モデルによる検討を行う。
方 法
調査対象者 大学1年生295名 (女性109名,男性186名) で,4~8名の固定メンバーから成る46グループを対象とした。
調査内容 (1) グループワーク活動:杉本 (2017) のグループワーク活動尺度 (発言活動,協同活動) を使用した。(2) 協同作業認識:長濱他 (2009) の協同作業認識尺度 (協同効用,個人志向,互恵懸念) を使用した。
手続き (1) は第2回から第14回の各授業終了時に,(2) は第1回授業開始前に測定した。
結果と考察
13時点で測定した発言および協同活動得点 (各1~4点) の切片および傾きの個人差を説明するものとして,協同作業認識の3因子 (協同効用,個人志向,互恵懸念) を説明変数に仮定した条件付き潜在曲線モデルで分析を行った (Figure 1)。説明変数はあらかじめ中心化を行った。
その結果,発言活動においては,切片平均は2.893点であった (p < .001)。傾き平均の推定値は0.003点であり,正の値をとるが有意ではなかった (p = .322)。切片に協同効用 (b = 0.252, p < .001),個人志向 (b = 0.139, p = .005) からともに有意な正のパスがみられた。また切片と傾きに有意な負の共分散がみられた (ψαβ = -0.008, p < .001)。すなわち,協同作業の場で協同することを有益と考えない学生や個人で進めていくことを有益と考えない学生は,初めの時点で発言活動を行うことができない。しかし,そうした学生ほど,授業を通しての発言活動はより促進されることが示された。
一方,協同活動においては,切片平均は3.149点であった (p < .001)。傾き平均の推定値は-0.008点であった (p = .022)。切片に協同効用から有意な正のパスがみられ (b = 0.209, p = .003),傾きには協同効用から有意傾向の負のパスがみられた (b = -0.014, p = .066)。また切片と傾きに有意な負の共分散がみられた (ψαβ = -0.005, p = .014)。すなわち,協同することを有益と考えている学生は,初めの時点で積極的に協同活動を行うことができるが,そうした学生ほど,また協同活動をもともと行える学生ほど,授業を通して協同活動はより行われなくなることが示された。
こうした個人差に配慮すべく,さまざまなアクティブ・ラーニング型の授業方略が検討される中,個人差が大きく影響する授業方略の1つにグループワークがあげられる。たとえば,協同作業に対する認識 (長濱・安永・関田・甲原, 2009) として協同を有効と認識している学生は,有効と認識していない学生に比べて,「グループワーク」・「ペアワーク」型授業の受講を希望する (野中, 2016)。
このように,グループワーク形式の授業に対する事前の認識が肯定的であれば,その後の授業におけるグループ活動も積極的であることが予想される。一方,グループワーク形式の授業を採用するからには,こうした授業に苦手意識をもつ学生が実際に行うグループ活動を明らかにしたうえで,その結果をもとに有効な手立てを工夫し,積極的に取り入れることが求められる。
そこで,本研究では学生の個人差として,協同作業認識 (長濱他, 2009) に注目し,授業開始時点での協同作業認識が,アクティブ・ラーニング型授業におけるグループ活動に及ぼす影響を検討する。なお,授業を通して,グループ活動の様相は変化していくことが想定されるため,その変化を明らかにし,その変化に学生の協同作業認識が及ぼす影響を明らかにするため,条件付き潜在曲線モデルによる検討を行う。
方 法
調査対象者 大学1年生295名 (女性109名,男性186名) で,4~8名の固定メンバーから成る46グループを対象とした。
調査内容 (1) グループワーク活動:杉本 (2017) のグループワーク活動尺度 (発言活動,協同活動) を使用した。(2) 協同作業認識:長濱他 (2009) の協同作業認識尺度 (協同効用,個人志向,互恵懸念) を使用した。
手続き (1) は第2回から第14回の各授業終了時に,(2) は第1回授業開始前に測定した。
結果と考察
13時点で測定した発言および協同活動得点 (各1~4点) の切片および傾きの個人差を説明するものとして,協同作業認識の3因子 (協同効用,個人志向,互恵懸念) を説明変数に仮定した条件付き潜在曲線モデルで分析を行った (Figure 1)。説明変数はあらかじめ中心化を行った。
その結果,発言活動においては,切片平均は2.893点であった (p < .001)。傾き平均の推定値は0.003点であり,正の値をとるが有意ではなかった (p = .322)。切片に協同効用 (b = 0.252, p < .001),個人志向 (b = 0.139, p = .005) からともに有意な正のパスがみられた。また切片と傾きに有意な負の共分散がみられた (ψαβ = -0.008, p < .001)。すなわち,協同作業の場で協同することを有益と考えない学生や個人で進めていくことを有益と考えない学生は,初めの時点で発言活動を行うことができない。しかし,そうした学生ほど,授業を通しての発言活動はより促進されることが示された。
一方,協同活動においては,切片平均は3.149点であった (p < .001)。傾き平均の推定値は-0.008点であった (p = .022)。切片に協同効用から有意な正のパスがみられ (b = 0.209, p = .003),傾きには協同効用から有意傾向の負のパスがみられた (b = -0.014, p = .066)。また切片と傾きに有意な負の共分散がみられた (ψαβ = -0.005, p = .014)。すなわち,協同することを有益と考えている学生は,初めの時点で積極的に協同活動を行うことができるが,そうした学生ほど,また協同活動をもともと行える学生ほど,授業を通して協同活動はより行われなくなることが示された。