[PC34] 読書手段への考え方と読書意識・行動との関連性
キーワード:読書手段への考え方, 読書意識・行動, 習慣
目 的
公益社団法人全国出版協会の日本の出版統計データによると,紙書籍の発行部数が毎年減少傾向にあるとのことである。その一要因としては,高性能なスマートフォンやタブレット,利便性の高い電子書籍端末が普及していることによるとも考えられる。しかし、現状では,紙書籍の利用者数の方が大半を占めているとのことである。そこで,本研究では,A大学生60名(2年生~4年生)を対象として質問紙調査を行い,このような読書手段である紙書籍と電子書籍への考え方と読書意識・行動との関連性について調査・検討することにした。
方 法
調査対象者:A大学人間学部ほか4学部の2~4年生の男子・女子大学生60名(男性=45名,女性=15名)。
調査日時:2017年11月22日(水)
調査場所:A大学
調査手続き:調査は質問紙により,無記名で実施した。
質問項目1 【読書手段への考え方】小林ら(2012)を引用。
Ⅰ.<紙書籍への概念>Ⅱ.<電子書籍への概念>
質問項目2 【読書意識・行動】力久ら(2012)を引用。
Ⅰ.<読書習慣>Ⅱ.<知的能力の向上>Ⅲ.<読書耐性>
Ⅳ.<読書負担軽減>Ⅴ.<教養の獲得>Ⅵ.<有形財産>
結果と考察
調査の結果,質問紙有効回答率は100%であった。
読書手段の考え方尺度の「紙書籍への概念」,「電子書籍への概念」を独立変数,6つの「読書意識・行動」をそれぞれ従属変数とする,重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。その結果はTable 1の通りであった。
6つの従属変数からなる「読書意識・行動」の中で,モデルR2に有意差が見出されたのは以下の3変数であった。
1.「読書習慣」
自由度調整済みR2が有意であり,説明率は15%であった。そして,「紙書籍への概念」の標準化偏回帰係数(β)が有意であり,弱い正の関連が示された。その理由として,これまでの慣れ,電子書籍端末の不慣れ・不所持,ページめくりの容易さなどの要因が推察される。
2.「知的能力の向上」
自由度調整済みR2が有意であり,説明率は12%であった。そして「紙書籍への概念」の標準化偏回帰係数(β)が有意であり,弱い正の関連が示された。その理由として,柴田ら(2012)が指摘しているように,紙書籍は,文書を理解するための文書タッチが促進されやすいこと,また,説明的文章の場合などは紙書籍の方が記憶に残りやすく,重要な部分が分かりやすいこと(小林ら,2012)などの要因が考えられる。
3.「有形財産」
自由度調整済みR2が有意であり,説明率は16%であった。そして「紙書籍への概念」の標準化偏回帰係数(β)が有意であり,弱~中程度の正の関連が示された。その主因として,紙書籍は情報収集するためのものだけでなく,後世の人々に各時代の文化や歴史等を伝達する上で貴重な価値があると捉えた人が多かったことによるものと推察される。
結 論
本研究では,質問紙調査によって読書手段への考え方と読書意識・行動との関連性について探究した。その結果,前述の3つの有意な変数における読書手段では,紙書籍の方が電子書籍よりも利用率が高いことが明らかになった。
しかし,2つの読書手段には,それぞれの利点を有すると考えられるので,今後,両手段の活用法について詳細に調査・検討する必要があろう。
公益社団法人全国出版協会の日本の出版統計データによると,紙書籍の発行部数が毎年減少傾向にあるとのことである。その一要因としては,高性能なスマートフォンやタブレット,利便性の高い電子書籍端末が普及していることによるとも考えられる。しかし、現状では,紙書籍の利用者数の方が大半を占めているとのことである。そこで,本研究では,A大学生60名(2年生~4年生)を対象として質問紙調査を行い,このような読書手段である紙書籍と電子書籍への考え方と読書意識・行動との関連性について調査・検討することにした。
方 法
調査対象者:A大学人間学部ほか4学部の2~4年生の男子・女子大学生60名(男性=45名,女性=15名)。
調査日時:2017年11月22日(水)
調査場所:A大学
調査手続き:調査は質問紙により,無記名で実施した。
質問項目1 【読書手段への考え方】小林ら(2012)を引用。
Ⅰ.<紙書籍への概念>Ⅱ.<電子書籍への概念>
質問項目2 【読書意識・行動】力久ら(2012)を引用。
Ⅰ.<読書習慣>Ⅱ.<知的能力の向上>Ⅲ.<読書耐性>
Ⅳ.<読書負担軽減>Ⅴ.<教養の獲得>Ⅵ.<有形財産>
結果と考察
調査の結果,質問紙有効回答率は100%であった。
読書手段の考え方尺度の「紙書籍への概念」,「電子書籍への概念」を独立変数,6つの「読書意識・行動」をそれぞれ従属変数とする,重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。その結果はTable 1の通りであった。
6つの従属変数からなる「読書意識・行動」の中で,モデルR2に有意差が見出されたのは以下の3変数であった。
1.「読書習慣」
自由度調整済みR2が有意であり,説明率は15%であった。そして,「紙書籍への概念」の標準化偏回帰係数(β)が有意であり,弱い正の関連が示された。その理由として,これまでの慣れ,電子書籍端末の不慣れ・不所持,ページめくりの容易さなどの要因が推察される。
2.「知的能力の向上」
自由度調整済みR2が有意であり,説明率は12%であった。そして「紙書籍への概念」の標準化偏回帰係数(β)が有意であり,弱い正の関連が示された。その理由として,柴田ら(2012)が指摘しているように,紙書籍は,文書を理解するための文書タッチが促進されやすいこと,また,説明的文章の場合などは紙書籍の方が記憶に残りやすく,重要な部分が分かりやすいこと(小林ら,2012)などの要因が考えられる。
3.「有形財産」
自由度調整済みR2が有意であり,説明率は16%であった。そして「紙書籍への概念」の標準化偏回帰係数(β)が有意であり,弱~中程度の正の関連が示された。その主因として,紙書籍は情報収集するためのものだけでなく,後世の人々に各時代の文化や歴史等を伝達する上で貴重な価値があると捉えた人が多かったことによるものと推察される。
結 論
本研究では,質問紙調査によって読書手段への考え方と読書意識・行動との関連性について探究した。その結果,前述の3つの有意な変数における読書手段では,紙書籍の方が電子書籍よりも利用率が高いことが明らかになった。
しかし,2つの読書手段には,それぞれの利点を有すると考えられるので,今後,両手段の活用法について詳細に調査・検討する必要があろう。