[PC56] 通常学級における特別なニーズ教育の学習指導尺度等の開発
小学校教師を対象として
キーワード:通常学級, 特別なニーズ教育, 学習指導
目 的
文部科学省(2017)は,「小学校等の通常の学級においても,発達障害を含む障害のある児童生徒が在籍している可能性があることを前提に,各教科等の学びの過程において考えられる困難さに対する指導の工夫の意図,手立ての例を具体的に示すことが必要である」と示し,通常学級における特別なニーズ教育に配慮した学習指導の充実を求めている。そこで本研究の目的は,教師を対象とした通常学級の特別なニーズ教育に配慮した学習指導(TSNERSC)について,尺度を作成および信頼性と妥当性を検討することである。
方 法
調査協力者 九州・近畿・東海の小学校教師380名に質問紙調査とインターネットによる質問紙調査を実施した。質問紙に回答した教師のうち,不備のなかった261名(男116名,女129名,不明16名,平均年齢38.2,標準偏差 14.4)を対象とした(有効回答率68.6%)。
調査内容
(1) TSNERSC尺度 学生にWISC-Ⅳの知能検査を説明し,4つの指標得点(言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度)の低い児童を想定させ学習指導を作成し模擬授業を発表させた。その感想からの108項目を小学校・大学教教師等で目内容の精査と表現の修正を行い27項目からなるTSNERSC尺度を作成した。回答は「いつもする(5)」から「全然しない(1)」の5件法で尋ねた。
(2)教師特有のビリーフ尺度 基準関連妥当性を確認するために,河村・國分(1996)の教師特有のビリーフ尺度のうち自分(教師自身)についての18項目を用いた。回答は「とてもそう思う(5)」から「全くそう思わない(1)」の5件法で尋ねた。
(3)教師効力感尺度 基準関連妥当性を確認するために,桜井(1992)の教師効力感尺度のうち,個人的な教授効力感についての9項目と,一般的な教育効力感の6項目を用いた。回答は「とてもそう思う(5)」から「全くそう思わない(1)」の5件法で尋ねた。
結果と考察
TSNERSC尺度の因子分析 27項目についてスクリープロットを確認したところ,4因子構造が妥当であった。そこで4因子を指定し,探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を実施した。その結果,“児童生徒の姿を具体的にイメージしている”等の7項目“スモールステップによる学習を工夫している”等4項目 “視覚支援について用いている”等4項目 “児童生徒の家庭環境を考えている”等3項目を順に「児童生徒理解と学習集団作り」「スモールステップと読みの工夫」「見通し・手順等視覚支援の工夫」「家庭環境理解と配慮」と命名した(Table1)。α係数は順に.84,.80,.78,.77であった。
TSNERSC尺度の妥当性の検討 TSNERSC尺度の基準関連妥当性を確認するために,教師特有のビリーフ,個人的な教授効力感との相関係数を確認した。教師特有のビリーフでは,「児童生徒理解と学習集団作り」が.24「スモールステップと読みの工夫」が.28「見通し・手順等視覚支援の工夫」が.25「家庭環境理解と配慮」が.23であった。また,個人的な教授効力感は,順に.22,.27,.26,.20で,いずれも有意であった。
謝辞 本文の作成にあたり,公益財団法人日本教育公務員弘済会より平成30年度日教弘本部より奨励金の助成を受けました。
文部科学省(2017)は,「小学校等の通常の学級においても,発達障害を含む障害のある児童生徒が在籍している可能性があることを前提に,各教科等の学びの過程において考えられる困難さに対する指導の工夫の意図,手立ての例を具体的に示すことが必要である」と示し,通常学級における特別なニーズ教育に配慮した学習指導の充実を求めている。そこで本研究の目的は,教師を対象とした通常学級の特別なニーズ教育に配慮した学習指導(TSNERSC)について,尺度を作成および信頼性と妥当性を検討することである。
方 法
調査協力者 九州・近畿・東海の小学校教師380名に質問紙調査とインターネットによる質問紙調査を実施した。質問紙に回答した教師のうち,不備のなかった261名(男116名,女129名,不明16名,平均年齢38.2,標準偏差 14.4)を対象とした(有効回答率68.6%)。
調査内容
(1) TSNERSC尺度 学生にWISC-Ⅳの知能検査を説明し,4つの指標得点(言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度)の低い児童を想定させ学習指導を作成し模擬授業を発表させた。その感想からの108項目を小学校・大学教教師等で目内容の精査と表現の修正を行い27項目からなるTSNERSC尺度を作成した。回答は「いつもする(5)」から「全然しない(1)」の5件法で尋ねた。
(2)教師特有のビリーフ尺度 基準関連妥当性を確認するために,河村・國分(1996)の教師特有のビリーフ尺度のうち自分(教師自身)についての18項目を用いた。回答は「とてもそう思う(5)」から「全くそう思わない(1)」の5件法で尋ねた。
(3)教師効力感尺度 基準関連妥当性を確認するために,桜井(1992)の教師効力感尺度のうち,個人的な教授効力感についての9項目と,一般的な教育効力感の6項目を用いた。回答は「とてもそう思う(5)」から「全くそう思わない(1)」の5件法で尋ねた。
結果と考察
TSNERSC尺度の因子分析 27項目についてスクリープロットを確認したところ,4因子構造が妥当であった。そこで4因子を指定し,探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を実施した。その結果,“児童生徒の姿を具体的にイメージしている”等の7項目“スモールステップによる学習を工夫している”等4項目 “視覚支援について用いている”等4項目 “児童生徒の家庭環境を考えている”等3項目を順に「児童生徒理解と学習集団作り」「スモールステップと読みの工夫」「見通し・手順等視覚支援の工夫」「家庭環境理解と配慮」と命名した(Table1)。α係数は順に.84,.80,.78,.77であった。
TSNERSC尺度の妥当性の検討 TSNERSC尺度の基準関連妥当性を確認するために,教師特有のビリーフ,個人的な教授効力感との相関係数を確認した。教師特有のビリーフでは,「児童生徒理解と学習集団作り」が.24「スモールステップと読みの工夫」が.28「見通し・手順等視覚支援の工夫」が.25「家庭環境理解と配慮」が.23であった。また,個人的な教授効力感は,順に.22,.27,.26,.20で,いずれも有意であった。
謝辞 本文の作成にあたり,公益財団法人日本教育公務員弘済会より平成30年度日教弘本部より奨励金の助成を受けました。