日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

2018年9月15日(土) 15:30 〜 17:30 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC72] 教育効果の測定指標としての「自律の力」について

田中優1, 安藤正紀2, 櫻井康博#3, 中島豊#4, 黒澤岳博#5, 孫佳茹#6 (1.大妻女子大学, 2.玉川大学, 3.埼玉大学, 4.長野大学, 5.城西大学, 6.早稲田大学)

キーワード:教育効果, 測定指標, 自律の力

問題と目的
 90余年の歴史を持つ日本のボーイスカウト教育の教育効果に関する実証的研究は,未だほとんど手が着けられていない。本研究では,ボーイスカウトの教育効果を明らかにすることを目的としている。本報告では,その教育効果を評価するために作成した測定指標について,その因子構造について報告する。

方  法
 2017年4~6月に,34都府県のボーイスカウト(11~15歳)457名(男子326名,女子131名)を対象者として,郵送法による質問紙調査を実施した。調査内容は,(1)ボーイスカウト活動について,(2)「生きる力」:「IKR評定用紙(簡易版)」(独立行政法人国立青少年教育振興機構,2010)28項目(心理的社会的能力:14項目,徳育的能力:8項目,身体的能力:6項目),(3)「社会性と情緒の学習(SEL-8S)」(小泉,2011)26項目(基本的社会的能力:15項目,応用的社会的能力:9項目,虚偽尺度:2項目),(4)「ストレスコーピング」:3項目(問題焦点型・ストレス解消(発散)型・社会的支援型),(5)リーダーシップ測定尺度(国立妙高青少年自然の家,2011)20項目(課題達成機能:12項目,集団維持機能:8項目),(6)自尊感情尺度(福岡県青少年アンビシャス運動推進室,2010)10項目。

結  果
教育効果の測定指標「自律の力」の構造
 教育効果の測定指標の構造を導出するために,「生きる力」の28項目,「社会性と情緒の学習(SEL-8S)」の26項目,「ストレスコーピング」の3項目の計57項目について,因子分析(主因子法・バリマックス回転)による因子構造の解明を行った(Table1)。固有値が1.0以上を1つの目安とし,加えて,十分なる説明割合を得ることができ,スクリープロットによる固有値の変化の推移をも考慮し,単一の因子に絶対値.40以上の因子負荷量をもつ項目による因子の解釈から,「社会的能力」「愛他心」「問題解決能力」「危険回避」「共感性」「自制心」「自己理解」「身体的耐性」の8側面が導出された。各因子の信頼性係数は,.878から.650であり,内的一貫性について,一定の信頼性を有することが確認された。そこで,これら8因子から構成される能力や資質を「自律の力」とし,スカウト教育の教育効果の測定指標とした。

考  察
 本報告では,ボーイスカウトの少年少女が対象の調査データにより導出された教育効果の測定指標を「自律の力」とした。今後は,尺度の妥当性の検討,および,この測定指標が,一般の児童・生徒を対象とした,また,多様な教育効果の測定指標となり得るかに関する検討が必要である。