日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

2018年9月16日(日) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD03] 児童期の情動発達とその特異性に関する研究9

情動項目の判別分析による「気になる」児童の特徴

本郷一夫1, 平川久美子2, 飯島典子3, 高橋千枝4, 相澤雅文5 (1.東北大学, 2.石巻専修大学, 3.宮城教育大学, 4.東北学院大学, 5.京都教育大学)

キーワード:情動発達, 児童, 「気になる」子

問題と目的
 本研究は,幼児期から児童期における情動発達のアセスメント・スケールを開発することを目的とした研究の一部である。このうち,本研究では日本教育心理学会第59回総会(2017)における報告(2017年;1~5),日本発達心理学会第29回大会における報告(2018年;6~8)に続き,児童期の情動発達の特徴について,情動項目の判別分析を用いて「気になる」児童と典型発達児の違いを明らかにすることを目的とした。

方  法
1. 調査対象 小学校の担任に,「気になる」児童(各クラス3名以内)と「気になる」児童と同じクラスの年齢が近く,性が一致する児童(典型発達児)について評定を求めた。本報告では,欠損値がなく,「気になる」児童と典型発達児のペアデータが揃っている2142名(男児1696名,女児446名)のデータを分析した。
2. 調査時期 2016年12月~2017年3月。
3. 調査内容 (1) 情動発達:「喜んでいることを表情で表現する」「怒っている気持ちを抑える」「友だちの悲しい気持ちがわかる」などの情動に関する7領域(<表情による表現>,<言葉による表現>,<抑制>,<誇り・恥>,<理解>,<共感>,<過敏さ>)20項目について,「全くない」(1)~「よくある」(5)の5段階で評定してもらった。

結果と考察
1. 判別分析 情動項目20項目を独立変数として,「気になる」子どもと典型発達児の違いに影響を与える情動項目について判別分析を用いて検討した。その結果,正準判別関数の固有値は.571,正準相関係数は.603であった。また,Wilksのラムダの値は.637(χ2=961.85,p<.001)であった。
正準判別関数係数:
 ①Table 1には,比較的値が大きかった標準化された正準判別関数係数が示されている。ここから,「E13友だちの怒っている気持ちがわかる」といった他者の怒りといった否定的情動の理解に関する項目の寄与が最も大きいことがわかる。
 ②先の研究(報告6)では,「気になる」児童と
典型発達児の評定平均値の差が大きい項目は,<抑制><理解><共感>の領域の項目が中心であった。しかし,判別分析を用いた検討では,「E10自分ができることに誇りをもっている」といった<誇り・恥>の領域の項目,「E6 悲しんでいることを言葉で表現する」といった<言葉による表現>の項目の値が比較的高くなっていた。これらのことから,「気になる」子どもの情動発達支援においては,<理解><共感>に加え,<誇り>や<言語による表現>が重要であることが示唆された。

付  記
 なお,本研究は科学研究費補助金(基盤研究B)「幼児期・児童期の情動発達アセスメント・スケールの開発と保育・教育への応用」(研究代表:本郷一夫)の助成を受けて行われた。