[PD04] 児童期の情動発達とその特異性に関する研究10
「気になる」児童の表情および言葉による情動表現の特徴
キーワード:情動発達, 児童, 「気になる」子
問題と目的
本研究は,幼児期から児童期における情動発達のアセスメント・スケールを開発することを目的とした研究の一部である。本報告では,典型発達児との比較を通して「気になる」児童の表情および言葉による情動表現の特徴を明らかにすることを目的とした。
方 法
1. 調査対象:研究9に同じ。
2. 調査時期:研究9に同じ。
3. 調査内容:(1)情動発達:研究9に同じ。このうち,〈表情による表現〉は「喜んでいることを表情で表現する」「怒っていることを表情で表現する」「悲しんでいることを表情で表現する」の3項目だった。〈言葉による表現〉は「喜んでいることを言葉で表現する」「怒っていることを言葉で表現する」「悲しんでいることを言葉で表現する」の3項目だった。(2)行動特性:研究9に同じ。
結果と考察
1. 喜びの表現:〈表情による表現〉の喜びの項目と〈言葉による表現〉の喜びの項目の得点について,表現方法(2)×子どものタイプ(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,表現方法の主効果(F(1,2140)=273.38,p<.001),子どものタイプの主効果(F(1,2140)=18.04,p<.001)および表現方法と子どものタイプの交互作用(F(1,2140)=36.35,p<.001)がそれぞれ有意だった。単純主効果検定の結果,〈言葉による表現〉の得点においては「気になる」児童よりも典型発達児のほうが有意に高かったのに対して,〈表情による表現〉の得点においては子どものタイプによる差はみられなかった。
2.怒りの表現:〈表情による表現〉の怒りの項目と〈言葉による表現〉の怒りの項目の得点について,表現方法(2)×子どものタイプ(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,表現方法の主効果(F(1,2140)=41.77,p<.001),子どものタイプの主効果(F(1,2140)=44.55,p<.001)および表現方法と子どものタイプの交互作用(F(1,2140)=36.66,p<.001)がそれぞれ有意だった。単純主効果検定の結果,「気になる」児童においては〈言葉による表現〉の得点よりも〈表情による表現〉の得点のほうが有意に高かったのに対して,典型発達児においては表現方法による差はみられなかった。
3. 悲しみの表現:〈表情による表現〉の悲しみの項目と〈言葉による表現〉の悲しみの項目の得点について,表現方法(2)×子どものタイプ(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,表現方法の主効果(F(1,2140)=354.03,p<.001)および表現方法と子どものタイプの交互作用(F(1,2140)=45.75,p<.001)がそれぞれ有意だった。単純主効果検定の結果,〈表情による表現〉の得点においては,典型発達児よりも「気になる」児童のほうが有意に高かったのに対して,〈言葉による表現〉の得点においては「気になる」児童よりも典型発達児のほうが有意に高かった。
これらのことから,「気になる」児童は喜びと悲しみの情動については言葉で表現することが少なく,一方,怒りの情動については表情や言葉で表現し過ぎてしまうという難しさを抱えていることが示された。したがって,「気になる」児童の情動面の発達支援においては,自分の情動を抑制することだけでなく,自分の情動を言葉で表現することを促していくことが重要であると考えられる。
付 記
なお,本研究は科学研究費補助金(基盤研究B)「幼児期・児童期の情動発達アセスメント・スケールの開発と保育・教育への応用」(研究代表:本郷一夫)の助成を受けて行われた。
本研究は,幼児期から児童期における情動発達のアセスメント・スケールを開発することを目的とした研究の一部である。本報告では,典型発達児との比較を通して「気になる」児童の表情および言葉による情動表現の特徴を明らかにすることを目的とした。
方 法
1. 調査対象:研究9に同じ。
2. 調査時期:研究9に同じ。
3. 調査内容:(1)情動発達:研究9に同じ。このうち,〈表情による表現〉は「喜んでいることを表情で表現する」「怒っていることを表情で表現する」「悲しんでいることを表情で表現する」の3項目だった。〈言葉による表現〉は「喜んでいることを言葉で表現する」「怒っていることを言葉で表現する」「悲しんでいることを言葉で表現する」の3項目だった。(2)行動特性:研究9に同じ。
結果と考察
1. 喜びの表現:〈表情による表現〉の喜びの項目と〈言葉による表現〉の喜びの項目の得点について,表現方法(2)×子どものタイプ(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,表現方法の主効果(F(1,2140)=273.38,p<.001),子どものタイプの主効果(F(1,2140)=18.04,p<.001)および表現方法と子どものタイプの交互作用(F(1,2140)=36.35,p<.001)がそれぞれ有意だった。単純主効果検定の結果,〈言葉による表現〉の得点においては「気になる」児童よりも典型発達児のほうが有意に高かったのに対して,〈表情による表現〉の得点においては子どものタイプによる差はみられなかった。
2.怒りの表現:〈表情による表現〉の怒りの項目と〈言葉による表現〉の怒りの項目の得点について,表現方法(2)×子どものタイプ(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,表現方法の主効果(F(1,2140)=41.77,p<.001),子どものタイプの主効果(F(1,2140)=44.55,p<.001)および表現方法と子どものタイプの交互作用(F(1,2140)=36.66,p<.001)がそれぞれ有意だった。単純主効果検定の結果,「気になる」児童においては〈言葉による表現〉の得点よりも〈表情による表現〉の得点のほうが有意に高かったのに対して,典型発達児においては表現方法による差はみられなかった。
3. 悲しみの表現:〈表情による表現〉の悲しみの項目と〈言葉による表現〉の悲しみの項目の得点について,表現方法(2)×子どものタイプ(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,表現方法の主効果(F(1,2140)=354.03,p<.001)および表現方法と子どものタイプの交互作用(F(1,2140)=45.75,p<.001)がそれぞれ有意だった。単純主効果検定の結果,〈表情による表現〉の得点においては,典型発達児よりも「気になる」児童のほうが有意に高かったのに対して,〈言葉による表現〉の得点においては「気になる」児童よりも典型発達児のほうが有意に高かった。
これらのことから,「気になる」児童は喜びと悲しみの情動については言葉で表現することが少なく,一方,怒りの情動については表情や言葉で表現し過ぎてしまうという難しさを抱えていることが示された。したがって,「気になる」児童の情動面の発達支援においては,自分の情動を抑制することだけでなく,自分の情動を言葉で表現することを促していくことが重要であると考えられる。
付 記
なお,本研究は科学研究費補助金(基盤研究B)「幼児期・児童期の情動発達アセスメント・スケールの開発と保育・教育への応用」(研究代表:本郷一夫)の助成を受けて行われた。