[PD27] 異学年集団における教師の自律性支援の変化
キーワード:自律性支援, 動機づけ, 異学年集団
問題と目的
近年,縦割り学級や複式学級など,異学年間での交流を伴う学習活動が増えてきている。発達段階が異なる児童が協働的に活動することは,児童にとって様々な成果が期待される。その一方で,児童が効果的に相互作用を行うためには,教師の支援のあり方が重要となる。
岡田(2018)は,縦割り学級での話し合い場面における教師の支援について,自律性支援(autonomy support: Deci & Ryan, 1987)の枠組みを用いて検討した。その結果,複数の教師が共通して,児童の興味を喚起し,児童の視点を代弁するということを多く行っていたが,同時に個々の教師に固有の支援スタイルもあることが示された。ただし,このような支援のスタイルが,教師のなかで固定化されたものなのか,実践のなかで変化していくものなのかは明らかにされていない。
本研究では,異学年集団における支援について,1人の教師の年度内の複数の授業での比較を行う。そのことによって,自律性支援のスタイルの変化を検討する。
方 法
対象学級と手続き
国立大学法人A大学の教育学部附属小学校の縦割り学級1学級で授業観察を行った。対象学級には,1~6年生が各5,6名ずつ在籍していた。協力校に特有の「創造活動」の話し合いがメインになる日を選定して2017年6月に2回,11月に1回の計3回行った。教室後方にビデオカメラを設置し,その映像と音声記録から教師と児童の発話プロトコルを作成した。
発話のコーディング
教師の発話について,1つの文章を基本単位としてコーディングした。全発話を(1)発話内容(質問,指示・指名,言い換え,復唱,説明・提案,その他),(2)自律性支援(児童の視点の代弁,興味の喚起,がんばりの受容,聞き合いの促し,理由説明の促し,その他),の2つの点から分類した。
結 果
カテゴリ分析
日ごとの教師と児童の発話数を調べたところ,偏りが有意であり(χ2(2)=53.56, p<.001),教師の発話は1日目と2日目には多かったが,3日目には少なくなっていた。発話内容について日との偏りが有意であった(χ2(10)=27.56, p<.01)。1日目には,【言い換え】と【その他】が多く,【質問】が少なかった。2日目には,【質問】が多く,【指示・指名】と【その他】が少なかった。3日目には,【指示・指名】が多かった。自律性支援にも日との偏りが有意であった(χ2(10)=55.34, p<.001)。1日目には,【興味の喚起】,【がんばりの受容】,【理由説明の促し】が多く,【聞き合いの促し】が少なかった。2日目には,【その他】が多く,【理由説明の促し】が少なかった。3日目には,【聞き合いの促し】が多く,【興味の喚起】が少なかった。
発話事例
1日目には,岡田(2018)と同じく,【興味の喚起】が多かった。発話例としては,「1つはまず自分たちがしっかり1年間楽しんで満足できることやね」のように,楽しさや満足感を重視するように伝える発話や,「このプロジェクトで,どんな人と出会って,どんな人を楽しませるか」のように,プロジェクトを通した人間関係の広がりに言及する発話がみられた。また,【がんばりの受容】として,「今,すごくいろいろな意見が出てきて,みんなの想像力ってすごいなって思っています」のように,児童の話し合いのよいところを認める発話があった。3日間の変化で特徴的であったのは,【聞き合いの促し】の変化であった。3日目に,ある児童の発言が流されてしまいそうになった場面で,「今せっかくね,意見をちゃんと言おうとしたんだから,聞く前にだめとかいうんじゃなくて,1人ひとりの意見をまず大事にしないとね」のように,司会の進行を止め,一人ひとりの児童の発言が大事であることを伝える発話がみられた。
考 察
本研究では,異学年集団における教師の自律性支援について,その変化を検討した。変化の特徴として,年度前半から後半にかけて発話量自体が減少していた。また,興味を喚起しようとする積極的な発話から,児童にお互いの意見に耳を傾けさせるような発話が中心になっていった。異学年集団において,教師は児童の積極的な活動を促すべく多様な支援を行い,同時に自身の支援のあり方も変化させていることが示唆された。
近年,縦割り学級や複式学級など,異学年間での交流を伴う学習活動が増えてきている。発達段階が異なる児童が協働的に活動することは,児童にとって様々な成果が期待される。その一方で,児童が効果的に相互作用を行うためには,教師の支援のあり方が重要となる。
岡田(2018)は,縦割り学級での話し合い場面における教師の支援について,自律性支援(autonomy support: Deci & Ryan, 1987)の枠組みを用いて検討した。その結果,複数の教師が共通して,児童の興味を喚起し,児童の視点を代弁するということを多く行っていたが,同時に個々の教師に固有の支援スタイルもあることが示された。ただし,このような支援のスタイルが,教師のなかで固定化されたものなのか,実践のなかで変化していくものなのかは明らかにされていない。
本研究では,異学年集団における支援について,1人の教師の年度内の複数の授業での比較を行う。そのことによって,自律性支援のスタイルの変化を検討する。
方 法
対象学級と手続き
国立大学法人A大学の教育学部附属小学校の縦割り学級1学級で授業観察を行った。対象学級には,1~6年生が各5,6名ずつ在籍していた。協力校に特有の「創造活動」の話し合いがメインになる日を選定して2017年6月に2回,11月に1回の計3回行った。教室後方にビデオカメラを設置し,その映像と音声記録から教師と児童の発話プロトコルを作成した。
発話のコーディング
教師の発話について,1つの文章を基本単位としてコーディングした。全発話を(1)発話内容(質問,指示・指名,言い換え,復唱,説明・提案,その他),(2)自律性支援(児童の視点の代弁,興味の喚起,がんばりの受容,聞き合いの促し,理由説明の促し,その他),の2つの点から分類した。
結 果
カテゴリ分析
日ごとの教師と児童の発話数を調べたところ,偏りが有意であり(χ2(2)=53.56, p<.001),教師の発話は1日目と2日目には多かったが,3日目には少なくなっていた。発話内容について日との偏りが有意であった(χ2(10)=27.56, p<.01)。1日目には,【言い換え】と【その他】が多く,【質問】が少なかった。2日目には,【質問】が多く,【指示・指名】と【その他】が少なかった。3日目には,【指示・指名】が多かった。自律性支援にも日との偏りが有意であった(χ2(10)=55.34, p<.001)。1日目には,【興味の喚起】,【がんばりの受容】,【理由説明の促し】が多く,【聞き合いの促し】が少なかった。2日目には,【その他】が多く,【理由説明の促し】が少なかった。3日目には,【聞き合いの促し】が多く,【興味の喚起】が少なかった。
発話事例
1日目には,岡田(2018)と同じく,【興味の喚起】が多かった。発話例としては,「1つはまず自分たちがしっかり1年間楽しんで満足できることやね」のように,楽しさや満足感を重視するように伝える発話や,「このプロジェクトで,どんな人と出会って,どんな人を楽しませるか」のように,プロジェクトを通した人間関係の広がりに言及する発話がみられた。また,【がんばりの受容】として,「今,すごくいろいろな意見が出てきて,みんなの想像力ってすごいなって思っています」のように,児童の話し合いのよいところを認める発話があった。3日間の変化で特徴的であったのは,【聞き合いの促し】の変化であった。3日目に,ある児童の発言が流されてしまいそうになった場面で,「今せっかくね,意見をちゃんと言おうとしたんだから,聞く前にだめとかいうんじゃなくて,1人ひとりの意見をまず大事にしないとね」のように,司会の進行を止め,一人ひとりの児童の発言が大事であることを伝える発話がみられた。
考 察
本研究では,異学年集団における教師の自律性支援について,その変化を検討した。変化の特徴として,年度前半から後半にかけて発話量自体が減少していた。また,興味を喚起しようとする積極的な発話から,児童にお互いの意見に耳を傾けさせるような発話が中心になっていった。異学年集団において,教師は児童の積極的な活動を促すべく多様な支援を行い,同時に自身の支援のあり方も変化させていることが示唆された。