[PD40] 大学生における授業への取り組みとラーニングアウトカムとの関連(1)
キーワード:大学教育, ラーニングアウトカム, 授業観
問題と目的
大学教育の質保証や大学教育の成果が注目されるようになって久しく,学習成果や社会人基礎力等,様々なアウトカムを規定する要因が検討されている。葛城(2008)は,学習経験の量をアウトカムと捉え,大学難易度や専門分野による違いを検討し,特に難易度の低い大学では,学生へのフィードバックやカリキュラムの体系性があることが学習経験の量につながることを報告している。また両角(2009)は,大学教育や学習行動の違いが,学生が獲得する力に及ぼす差異について検討し,専門の理論的理解には学生配慮型の授業がプラスの影響を与えること,わかりやすく話す力については,双方向型授業がプラスの影響を与えることを示している。しかし,学生の授業や学習に対する考え方によって,学習行動が促進されるような授業経験には差異があるものと推測され,それが適合した際に,最も高いラーニングアウトカムが獲得されると考えられる。そこで本研究では,大学における授業をどのように捉えているかという授業観に着目し,授業観によって授業への取り組みとラーニングアウトカムとの関連がどのように異なるのかを検討することを目的とした。本発表ではまず,授業観にどのようなパターンが見られるかを検討し,その特徴とラーニングアウトカムの違いを検討する。
方 法
調査対象者:近畿圏内の大学生237名(1年生71名,2年生89名,3年生55名,4年生20名,不明2名)。
調査内容:1)大学生活における重視活動:ベネッセ教育総合研究所(2012)を元に12項目を設定(5件法)。2)大学授業観:尾崎・松島(2009)による大学授業観尺度(39項目)より,各因子に高い負荷量を示した項目を5項目ずつ抽出し,計20項目を使用(5件法)。3)授業への取り組み:ベネッセ教育総合研究所(2012)による「大学での授業への取り組み」に関する26項目を使用(4件法)。4)ラーニングアウトカム:森・山田(2010)による大学生の汎用的技能に関する尺度35項目より,各因子に高い負荷量を示した項目を抽出し,計28項目を使用(4件法)。
結果と考察
1.授業観によるクラスタ分析 授業観尺度の4因子(知的好奇心,義務・退屈感,将来へのつながり,出会い・交流)について,標準化得点を用いてクラスタ分析(Ward法)を行った結果,3クラスタが最も妥当であると判断した。クラスタ間で授業観得点の比較を行った結果,クラスタ1は,義務・退屈感のみが高得点であったことから「義務退屈型」,クラスタ2は,知的好奇心のみが高得点であったことから「知的好奇心型」,クラスタ3は,義務・退屈感以外のすべてにおいて高得点であったことから「授業積極型」と命名した。クラスタ間で大学生活における重視活動の比較を行った結果,義務退屈型はすべての活動において得点が低く,知的好奇心型は学業のみの得点が高かった。授業積極型は,学業,部活・学内イベント,趣味・アルバイト等,幅広い活動において高得点であった。
2.授業観による授業への取り組み・ラーニングアウトカムの比較 授業への取り組みに関する26項目を因子分析した結果,4因子(ディスカッション,授業での誠実な取り組み,授業外学習,発展的学習)が抽出された。ラーニングアウトカムに関する28項目を因子分析した結果,8因子(Table1)が抽出された。これらの下位尺度得点について,クラスタ間で比較をするため,一元配置分散分析を行った結果,授業への取り組みに関しては,全下位尺度に有意差が見られ,知好奇心型と授業積極型が義務退屈型に比べて得点が高かった。ラーニングアウトカムについては,外国語運用力以外で有意差が見られ,授業への取り組みと同様,義務退屈型が他の2群に比べて得点が低かった(Table1)。これらの結果から,知的好奇心を満たすものとして授業を捉えている群や授業に様々な意味を見出している群は,授業を義務・退屈なものとして捉えている群と比べて,授業の中で多様な力を身に着けていることが示された。
大学教育の質保証や大学教育の成果が注目されるようになって久しく,学習成果や社会人基礎力等,様々なアウトカムを規定する要因が検討されている。葛城(2008)は,学習経験の量をアウトカムと捉え,大学難易度や専門分野による違いを検討し,特に難易度の低い大学では,学生へのフィードバックやカリキュラムの体系性があることが学習経験の量につながることを報告している。また両角(2009)は,大学教育や学習行動の違いが,学生が獲得する力に及ぼす差異について検討し,専門の理論的理解には学生配慮型の授業がプラスの影響を与えること,わかりやすく話す力については,双方向型授業がプラスの影響を与えることを示している。しかし,学生の授業や学習に対する考え方によって,学習行動が促進されるような授業経験には差異があるものと推測され,それが適合した際に,最も高いラーニングアウトカムが獲得されると考えられる。そこで本研究では,大学における授業をどのように捉えているかという授業観に着目し,授業観によって授業への取り組みとラーニングアウトカムとの関連がどのように異なるのかを検討することを目的とした。本発表ではまず,授業観にどのようなパターンが見られるかを検討し,その特徴とラーニングアウトカムの違いを検討する。
方 法
調査対象者:近畿圏内の大学生237名(1年生71名,2年生89名,3年生55名,4年生20名,不明2名)。
調査内容:1)大学生活における重視活動:ベネッセ教育総合研究所(2012)を元に12項目を設定(5件法)。2)大学授業観:尾崎・松島(2009)による大学授業観尺度(39項目)より,各因子に高い負荷量を示した項目を5項目ずつ抽出し,計20項目を使用(5件法)。3)授業への取り組み:ベネッセ教育総合研究所(2012)による「大学での授業への取り組み」に関する26項目を使用(4件法)。4)ラーニングアウトカム:森・山田(2010)による大学生の汎用的技能に関する尺度35項目より,各因子に高い負荷量を示した項目を抽出し,計28項目を使用(4件法)。
結果と考察
1.授業観によるクラスタ分析 授業観尺度の4因子(知的好奇心,義務・退屈感,将来へのつながり,出会い・交流)について,標準化得点を用いてクラスタ分析(Ward法)を行った結果,3クラスタが最も妥当であると判断した。クラスタ間で授業観得点の比較を行った結果,クラスタ1は,義務・退屈感のみが高得点であったことから「義務退屈型」,クラスタ2は,知的好奇心のみが高得点であったことから「知的好奇心型」,クラスタ3は,義務・退屈感以外のすべてにおいて高得点であったことから「授業積極型」と命名した。クラスタ間で大学生活における重視活動の比較を行った結果,義務退屈型はすべての活動において得点が低く,知的好奇心型は学業のみの得点が高かった。授業積極型は,学業,部活・学内イベント,趣味・アルバイト等,幅広い活動において高得点であった。
2.授業観による授業への取り組み・ラーニングアウトカムの比較 授業への取り組みに関する26項目を因子分析した結果,4因子(ディスカッション,授業での誠実な取り組み,授業外学習,発展的学習)が抽出された。ラーニングアウトカムに関する28項目を因子分析した結果,8因子(Table1)が抽出された。これらの下位尺度得点について,クラスタ間で比較をするため,一元配置分散分析を行った結果,授業への取り組みに関しては,全下位尺度に有意差が見られ,知好奇心型と授業積極型が義務退屈型に比べて得点が高かった。ラーニングアウトカムについては,外国語運用力以外で有意差が見られ,授業への取り組みと同様,義務退屈型が他の2群に比べて得点が低かった(Table1)。これらの結果から,知的好奇心を満たすものとして授業を捉えている群や授業に様々な意味を見出している群は,授業を義務・退屈なものとして捉えている群と比べて,授業の中で多様な力を身に着けていることが示された。