日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

2018年9月16日(日) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD54] 小学校5年生を対象とした知的障害理解学習の検討

細谷一博 (北海道教育大学)

キーワード:小学校, 知的障害, 障害理解学習

目  的
 障害理解学習の充実は,交流及び共同学習が発展する中で派生した課題であり,交流及び共同学習の推進には重要な教育活動である。田名部・細谷(2017)は,みえにくい障害である知的障害や発達障害に関する障害理解学習の内容を提案する必要性を指摘していることからも,更なる実践から得られる知見の蓄積が必要である。
 そこで,本研究では小学校5年生を対象に実施した知的障害に関する障害理解学習を整理し,その在り方について検討することを目的とする。

方  法
対 象 小学校5年生の児童65名(A組33名:男児15名,女児18名,B組32名:男児15名,女児17名)を対象とした。
手続き 本研究では,授業の効果を把握するために授業の前後で「障害理解アンケート」を実施した。アンケートは小林ら(2016)を参考に作成し,最終的には5項目を設定した。また,障害理解授業は各組を別々に実施し,4回目の交流以外はそれぞれの教室で行った。授業は講義と演習で実施し,各回でワークシートを配布し,授業で大切な部分を記入できるようにした。具体的には第1回目「障がいって何だろう」,第2回目「友だちの理解」,第3回目「一緒に遊ぶ友だちの理解」,第4回目「一緒に活動」,第5回目「一緒に活動した友だちはどんな人」の全5回である。具体的な授業内容を以下に示す。なお,本実践は対象校に授業概要を説明し,担任の承諾を得た上で実施した。
第1回目:「障がいって何だろう」
 本研究で対象とした5年生は,これまでに障害理解授業を受けておらず,さらに小学校には特別支援学級が設置されていないことから,「障がい」について初めて学習する児童である。そこで,障がいとは何かを考える授業から始めることとした。
 第2回目:「友だちの理解」
 2回目の授業では,障害を理解するときに出来ない部分に注目するのではなく,できる部分に注目する必要があることを理解するために,友達を理解するときに必要な視点について学習した。
 第3回目:「一緒に遊ぶ友だちの理解」
 第3回目の授業では,実際に一緒に活動する特別支援学校の友達について,情報交流シート(細谷・白府,2013)から疑問に思ったことを特別支援学校の先生にFaceTimeを通して直接質問する活動を行った。
第4回目:「一緒に活動」
 4回目の学習では,一緒に活動をする交流学習
を実施した。具体的には,小学生3名~4名に対して特別支援学校児童を2名とし,体育館でグループに分かれて実施した。
第5回目:「一緒に活動した友だちはどんな人」
 4回目の交流活動を終えて,障害のある友だちに対する受け止め方や一緒に活動をする時に工夫した点等,振り返る学習を実施した。

結  果
 1回目の学習時に「障がい」で最初に思いつく内容を記入してもらった結果を表1に示す。その結果,最も多かったのは「視覚障害(43.8%)」あり,次に「聴覚障害(23.4%)」「身体障害(20.3%)」であった。このことから,本研究で対象とした児童にとって,「障がい」は見える障害をイメージしやすく,交流対象の知的障害はイメージしにくい事が考えられた。また,5回目の学習時の感想では,「思っていたよりも一緒に遊ぶことができた」「想像していたよりも言葉が伝わった」などの感想が得られた。しかしながら,表2より「気づきの段階」「情緒的理解の段階」「態度形成の段階」では,平均が増加したが,「知識化の段階」「受容的行動の段階」では減少した。

考  察
 本研究では,障害を理解するための学習と一緒に活動する交流活動の2つの学習活動を通して,知的障害理解の学習について実践を試みた。本結果を踏まえて,小学生を対象とした知的障害を理解するための障害理解授業の在り方について,今後も更なる検討が必要である。