日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

2018年9月16日(日) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD66] 学校全体で取り組むPPR(Positive Peer Reporting)の効果

松山康成1, 沖原総太2 (1.寝屋川市立啓明小学校, 2.寝屋川市立啓明小学校)

キーワード:PBIS, 特別活動, PPR

問題と目的
 最近,学校における環境へのアプローチとしてPBIS(Positive Behavioral Interventions and Supports)が学校現場で取り組まれつつある。PBISは,個人のQOLを高め問題行動を最小限にすることを目的として,ポジティブな行動の支援を通して行動のレパートリーを増やし,応用行動分析学における行動の機能変容のフレームを用いて,個人の生活環境を再構築しようとする応用科学である。PBISの具体的な方法として,行動的な目標における価値の設定と共有,目標とする行動の明文化及び積極的な教示,子どもの向社会的行動の維持・増加のためのポジティブなフィードバックが示されている(Horner, Sugai, & Anderson, 2010)。そのポジティブなフィードバックを子ども同士の社会的な相互作用を生かして行う支援方法として,PPR(Positive Peer Reporting)が実施されている(例えば,Ervin, Miller, & Friman, 1996)。PPRとは,子ども同士相互に向社会的な行動を学校における日常生活の場面で観察し合い,それに対してポジティブなフィードバックを行うというものである。PPRは日本においても学級レベルでは実践されており,抑うつ症状の改善や(竹島,2016),感謝感情の向上や学級における非侵害感の向上が実証されている(松山・枝廣・池島, 2016)。
 そこで本研究は,PBISが導入されている小学校において,学校全体で子ども同士がお互いにポジティブなフィードバックを行うPPR(以下,SW-PPRと記す)により,子ども相互でポジティブなフィードバックが増えたかどうかを検討する。

方  法
1.対象者:関西の都市部近郊の公立小学校(児童数406名)を対象として実施した。
2.実施期間: X年11月からX+1年2月にかけて実施した。
3.質問紙: 子ども同士がお互いにポジティブなフィードバックを行う指標を,1週間ごとのカードの投函枚数とした。また対象校の3年生から6年生に対して学校環境適応感尺度(山田・米沢, 2011)の質問紙への回答を求めた。

結  果
 投函されたカード1週間ごとに集計し分析を行った結果をFigure1に示す。また,学校環境適応感尺度の結果をTable1に示す。

考  察
 結果より,ペア学年交流の取り組みの実施とカードの掲示によってカードの投函数は増加した。ペア学年交流の取り組み期間中には他学年・他学級の友人へのカードの投函が増加した。加えて,カードを投函した児童(実施群)は他の児童(対照群)と比較して生活満足感と教師サポート,友人サポート,向社会的スキルが高いことが示された。このような開発的な取り組みを継続的に行うことは,学校教育において重要であると指摘できる。Murphyら(2014)はPPRによって問題行動の低減と向社会的行動の増加という効果が考えられると指摘することから,問題行動や向社会的行動の実際を具体的に検討することも今後必要であろう。