日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

2018年9月16日(日) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD69] 公立小学校におけるリタラシー指導

音韻認識能力の発達との関連から

アレン玉井光江 (青山学院大学)

キーワード:音韻認識能力, フォニックス, 小学校英語

公立小学校における外国語科導入に関する現状
 新学習指導要領のもと2020年度より公立小学校での外国語教育が改善そして充実されるが,その方向性は次のように示されている。
① 現在高学年に実施されている「聞く」「話す」を中心にした「外国語活動」を,中学年から導入し,年間35単位時間程度の時数を実施する。高学年の教科型の学習に連携していくことが重要。
② 発達段階に応じて高学年からは「読むこと」「書くこと」を導入し,全ての領域をバランスよく育む教科型の外国語教育を実施する。年間70単位時間程度の時数を実施。
 さらに文部科学省は中学年での外国語活動の導入や高学年での教科化に対応した新教材を開発し,今年度が始まる前にそれに伴う映像教材も含め全国の小学校に配布した。高学年の指導にあたっては新たに加えられたリタラシー関連の領域の指導が大きな課題となっている。『外国語活動・外国語研修ガイドブック』によると「外国語活動とは異なり,外国語科では“文字が持っている音”まで加えて指導する」となっており,今後は公立小学校でもフォニックスを通して文字と音との関連を意識的に教えていくことになる。

研究目的と方法
 小学生を対象とした効果的なリタラシープログラムの開発が喫緊の課題であるが,本研究においては発表者が過去12年にわたり開発してきた公立小学校でのリタラシープログラム,中でも音韻認識能力とアルファベット知識を高める活動の有効性について報告する。
研究参加者 東京都内の公立小学校に通う5年生の児童235名。彼らは週1回,2年間特別なリタラシー指導を受けた。といっても年30回程度の回数,さらに1回の授業ではリタラシー指導は10分程度である。したがって2年間でも10時間程度の授業時間にしかならない。参加者の音韻認識能力は5年生の最初と6年生の最初,そしてフォニックスに関する知識は6年生の後半に測定された。当該プログラムの特徴は以下の5つである。
1.学級担任と専科教員とのCo-Teaching
2.フレームワークとルーティン活動
3.高学年生には徹底したリタラシー指導
4.意味のある文脈はストーリーから
5.英語で学校生活のことまたは他教科関連の事柄を学ぶ

結果と考察
授業ではアルファベットの文字と音との関連(alphabetical principle)を獲得できるように指導したが,測定結果をステップワイズ法の回帰分析を使用して検証した。
 分析の結果,内部音節構造をbody/coda単位(頭子音と母音を分けない)ではなく,onset/rime単位(頭子音と母音を分ける)で英単語を分節する力がフォニックスの力を予測していた。英語圏の研究においても,ライム認識能力とリーディング能力の発達に関連性があることを指摘する研究が多い(Bryantの一連の研究)。同じ現象が日本人の学習者にも見られたのは興味深い。

引用文献
Bradley, L., & Bryant, P. E. (1983). Categorising sounds and learning to read - A causal connection. Nature, 301, 419-521