日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

2018年9月16日(日) 16:00 〜 18:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF07] 幼稚園児の小学校への期待に関連する要因

大島みずき (群馬大学)

キーワード:期待, 保幼小連携, 幼児

目  的
 小1プロブレムが深刻と言われる中で,その解決策として保幼小連携の必要性が強く意識されている。菊地(2005)が示すように幼児は「小学生のお兄さんお姉さん」に憧れを抱いていることが多い。また大島(2016)は,ほとんどの年長幼児が小学校進学を「楽しみだ」と感じていることを示している。では,この幼児の小学校への期待は何に支えられているものなのだろうか。この期待の理由を保幼・小で共有することは,幼児の小学校への滑らかな移行を支えるために重要だろう。
 本調査は年長幼児の小学校への期待に,何が影響しているのかを検討することを目的とする。本調査では小学校の情報を得られる存在としての小学生の兄弟の有無,今の自分への肯定感の高さ,さらに周りから受け入れられている程度としての友だちからの肯定的指名の多さについて小学校への期待との関連を検討した。

方  法
調査協力児:A幼稚園の年長児56名(男児26名,女児30名)。対象となる全ての幼児は新学期から同一小学校に進学を予定していた。
調査期間:2018年2月中旬
手順:約10分間の個別面接調査を行なった。ラポール形成後,小学生の兄弟の有無,肯定的指名(一緒に遊びたい友だち最大3名),自己の肯定感(とても嫌い(1)-とても好き(4)),小学校への期待(とても楽しみではない(1)−とても楽しみ(4)点)についてそれぞれ尋ねた。

結果と考察
自己の肯定感 自己の肯定感得点は高く(M=3.46点SD=.81),多くの幼児が自分自身を非常に肯定的に捉えていた。
小学校への期待 小学校への期待得点は高く(M=3.73点,SD=.70),ほとんどの幼児が小学校への進学をとても楽しみにしていることが示された。
小学校への期待に関連する要因
兄弟の有無 小学校への期待に小学生の兄妹の有無で差があるかについて検討したところ,兄弟のいない幼児が兄弟のいる幼児に比べ小学校への期待が有意に高いことが示された(t(34.00)=2.98, p<.01, Figure 1)。小学生の兄弟がいない幼児が全員,小学校への進学が「とても楽しみ」であると回答している一方で,小学生の兄弟がいる兄弟にのみ「少し楽しみ」や「楽しみではない」と回答する幼児が見られた。兄弟がいる幼児は兄弟から小学校について情報を得る中で「小学校は楽しみだけど,楽しいだけでなない」と感じている可能性が示唆された。
肯定的指名 友だちからの遊びたい相手としての被選択数と小学校への期待の間に,有意な相関は見られなかった(r=-.19, n.s. Figure2)。
自己の肯定感 自己の肯定感得点と小学校への期待の間に有意な中程度の相関が見られ(r=.48, p<.01, Figure 2),自己の肯定感が高いほど小学校を楽しみに捉えていることが示された。他者からの肯定的指名では関連が見られなかったことからも,小学校への期待には,他者からの評価よりも今の自分自身を肯定的に捉えていることの方が重要であることがうかがえた。